必殺仕事人V・旋風編

必殺シリーズの第27作、必殺仕事人シリーズの第7作、中村主水シリーズの第13作

必殺仕事人V・旋風編』(ひっさつしごとにん ファイブ せんぷうへん)は1986年11月7日から1987年3月6日まで、テレビ朝日系で毎週金曜日22:00 - 22:54に全14話が放送されたテレビ時代劇である。朝日放送松竹(京都映画撮影所、現・松竹撮影所)の共同製作。主演は藤田まこと

必殺仕事人V・旋風編
ジャンル 時代劇
脚本 田上雄
中原朗
安倍徹郎
吉田剛
監督 工藤栄一
田中徳三
石原興
松野宏軌
出演者 藤田まこと
村上弘明
出門英
かとうかずこ
ひかる一平
山内としお
西田健
白木万理
菅井きん
ナレーター 中村梅之助
オープニング 作曲:平尾昌晃「我巷にて仕置せん」
エンディング 川中美幸「愛は別離」
時代設定 江戸時代・文政年間[1][2]
製作
製作総指揮 山内久司(朝日放送)
プロデューサー 奥田哲雄(朝日放送)
辰野悦央(朝日放送)
櫻井洋三(松竹
制作 朝日放送
放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間1986年11月7日 - 1987年3月6日
放送時間金曜22:00 - 22:54
放送分54分
回数14
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必殺シリーズの第27作、必殺仕事人シリーズの第7作、中村主水シリーズの13作目である。

概要 編集

前作『必殺仕事人V・激闘編』は初期必殺シリーズを彷彿とさせるハードボイルドな作風への原点回帰作であったが、第二次仕事人ブームを支持した層からの支持は得られず、視聴率は低迷する。本作は路線を再度変更して、後期必殺シリーズらしいコメディ要素とコミカルなシーン、放映当時の世相のパロディを多く盛り込んだ、娯楽色の強い作品となった。

主水は左遷された上に従来の上司筆頭同心田中に加え、更なる上役の与力鬼塚が登場し、奉行所でのいびられ方がよりユーモラスとなる。西順之助が再登場し、彼に付きまとうおりんと千代松[3]が新しく登場した。

当初、全26話を予定していたが、出門英がスケジュールの都合で降板しなければならなくなったことに加え、視聴率が低迷し、中村主水シリーズとしては異例の全14話で打ち切りとなった。本作最終話の1年後の世界を描いた続編『必殺仕事人V・風雲竜虎編』が翌週より開始し、主題歌等は本作から変更されなかった。

本作では新たに用意されたBGMは収録方法が『必殺仕事人IV』以来のモノラルとなった。

あらすじ(第1話) 編集

真砂屋一味との死闘(映画『必殺! III 裏か表か』)の後、主水は裏稼業とは距離を置き、南町奉行所に務めていた。しかし、新たに着任した与力の鬼塚より、新造された「石川島百軒長屋」の番所への異動を命じられる。百軒長屋は幕府肝いりの政策ということだが、それは事実上の左遷であった。憂鬱な主水だったが、そこで、かつての仲間の西順之助と出会う。順之助は留学先の長崎から舞い戻り、幕府の福祉政策の一環として、百軒長屋で歯医者を開業していた。

その夜、主水はある悪人の死体を発見し、彼を殺したのが百軒長屋で便利屋を営む、お玉と船宿「磯春」の船頭兼板前の銀平と知る。お玉は元から主水が仕事人であることを知っており、殺しを問い詰める主水に自分は「仕事人の元締上方の虎の娘」だと明かす。そして裏稼業に誘うが、主水はこれを断る。

その頃、百軒長屋の住人を対象に仕事の斡旋を行う上総屋が現れる。上総屋の狙いは仕事が終わった後に酒と博打で借金を作らせて金を巻き上げることだった。上総屋の餌食になった佐助が奉行所へ訴え出るが鬼塚に取り合ってもらえず、その帰り道に上総屋の配下に口封じのために殺害されてしまう。

佐助や長屋の住人たちの晴らせぬ恨みを見た主水は裏稼業に復帰することを決意し、順之助とともにお玉の下に赴く。そして、主水、順之助、銀平、お玉の4人で、上総屋一味を始末する。

しかし、主水は追手に狙われてしまう。追跡中に飛び込んだのは偶然にも、江戸に戻っていた鍛冶屋の政の家だった。主水と政は追手を殺し、主水は「借りを作るのは嫌だ」と言って、政に金を渡す。

ここに、新たな仕事人グループが結成された。

登場人物 編集

仕事人 編集

中村主水
演 - 藤田まこと
南町奉行所の定廻り同心。第1話で、石川島百軒長屋の番所への異動を命じられる[4]
再会した順之助に対しては表では「先生」と呼んでおり、裏の仕事も信頼を置くようになった。
鍛冶屋の政
演 - 村上弘明
江戸に舞い戻り、鍛冶屋を開いていたところに裏稼業で敵に追われている主水が偶然飛び込んで来て、悪人を始末したことで仕事人に復帰した。
最終回で、親しくなった女中の滝山や順之助、銀平を助けることができず、悲痛を受ける。
夜鶴の銀平
演 - 出門英
表稼業は船宿「磯春」の板前で、船頭も兼ねている。主水によれば、かつては仕事人の元締上方の虎の配下だったという。
落ち着いた性格で、日常では他のメンバーと絡むことは少ない。
最終回で火薬の爆発に巻き込まれ、政の助けをあえて拒否し、夜の川の闇に消える[5]
便利屋お玉
演 - かとうかずこ(現・かとうかず子)
仕事人の密偵。表稼業は百軒長屋で、便利屋[6]を営む。仕事の話や金の受け渡しもお玉の家で行う場合が多く、他には川の傍の小屋でも行う。
主水と出会う前は銀平と組み、裏の仕事を請け負っていた。仕事人の元締上方の虎の娘だという[7]
姉御肌の女性で、長屋の住人たちと仲がいい。主水の裏の顔を知っているため、御法度である長屋内での商売を黙認させようと直談判を行った。
主に情報収集と仕事の依頼を受ける役目で、順之助の殺しのサポートも行う。見かけによらず、人並み外れた跳躍力がある。
演じたかとうは初期の次回予告を担当。
西順之助
演 - ひかる一平
かつて主水と組んでいた仕事人で、西洋医学所の試験に合格後、長崎の留学を終え、江戸の百軒長屋で歯科医を開業していた。
半人前の若造と見られていた以前とは異なり、表稼業、裏稼業ともに一人前になったと認められており、主水の信頼を得ている。主水に対する呼び方は初登場の『必殺仕事人III』から『必殺仕事人V』まで「おじさん」で通してきたが、本作では「中村さん」に変わっている。
最終回で、自らが携帯していた火薬の引火による爆発に巻き込まれ、行方不明となる[8]

その他 編集

中村せん
演 - 菅井きん
主水の姑。あいわらず、婿養子の主水をいびる。
中村りつ
演 - 白木万理
主水の妻。せんとともに、婿養子の主水をいびる。主水が左遷されたため、肩身の狭い思いをしている。
筆頭同心 田中
演 - 山内としお
南町奉行所の筆頭同心で、主水の上司。上司の鬼塚と一緒にいることが多く、主水を叱ったりする。
与力 鬼塚
演 - 西田健
南町奉行所の与力で、田中の上司。部下の田中と一緒に登場することが多い。短気な性格で、昼行灯の主水を大声で叱る[9]
千代松
演 - 遠藤太津朗
百軒長屋の住人。オカマの中年男性で順之助に惚れており、順之助の同意を得ず、勝手に歯医者の助手[10]となる。
最終回での百軒長屋の焼失以降の動向は描かれていない。
おりん
演 - 桃山みつる
百軒長屋の住人。年下好きな世話好きの女性で順之助を好いており、順之助の同意を得ず、勝手に歯医者の手伝いをする。千代松とは互いに相手を牽制し、順之助を隙あらば狙っている。
第11話で夫がいること、夫の不在中に若い男と浮気している様子が描かれている[11]
最終回で起きた鶴の事件では事の発端となり、百軒長屋の焼失以降の動向は描かれていない。
小者 六平
演 - 妹尾友信
南町奉行所の小者。主水の部下ではないが、百軒長屋の雑務を押し付けられることが多い。
おさき
演 - 菅原昌子
船宿「磯春」の女中。
演じた菅原は中盤以降の次回予告を担当。

ゲスト 編集

第1話 「主水、エスカルゴを食べる」
第2話 「りつ、ハウスマヌカンになる」
第3話 「主水、殺人ツアーに出かける」
第4話 「せん、りつ、カチンカチン体操をする」
第5話 「主水、X'マスプレゼントする」
第6話 「主水 バースになる」
第7話 「主水、せん、りつ、ダブルベッドに寝る」
第8話 「主水、コールガールの仇をうつ」
第9話 「主水、りつ、ラブホテルに行く」
第10話 「主水、ワープロをうつ」
第11話 「主水の隠し子現れる」
第12話 「主水、ネズミ捕りにかかる」
第13話 「主水、化粧をする」
第14話 「主水、大奥の鶴を食べて失業する」

殺し技 編集

中村主水
悪人を油断させながら、一瞬の隙を付いて、脇差を相手の急所に刺す。
鍛冶屋の政
手槍で、悪人の首筋を突き刺す。
仕事時のBGMは第3話の冒頭では「夜霧を裂いて」が使われ、第4話以降は「殺しの旋風」が使われた。
夜鶴の銀平
釣竿に通した糸の先に付けた金属製の折鶴を飛ばし、悪人の首に巻き付け、糸を引っ張り、鶴のクチバシに当たる尖った部分で、相手の喉笛を突き刺す。
西順之助
竹製の大筒の中に火薬を仕込み、導火線を点火させ、悪人に向けて発射、爆死させる[12]。2人同時に仕留めることができる[13]
悪人を貫通した砲弾が背後で爆発し、驚愕の表情を浮かべながら、悪人が絶命する演出がなされた。長崎に留学していた頃に考えていたらしく、主水は第1話でその話を聞いた時「長崎で何を学んだんだか」と苦笑していた。

スタッフ 編集

主題歌・挿入歌 編集

放送日程 編集

  • サブタイトルは画面上では「主水」の後、改行して、次の言葉になるが、便宜上「、」を用いる。
話数 放送日 サブタイトル 脚本 監督
第1話 1986年11月07日 主水、エスカルゴを食べる 田上雄 工藤栄一
第2話 11月14日 りつ、ハウスマヌカンになる 保利吉紀 水川淳三
第3話[15] 12月05日 主水、殺人ツアーに出かける 田中徳三
第4話 12月12日 せん、りつ、カチンカチン体操をする 中原朗 松野宏軌
第5話 12月19日 主水、X'マスプレゼントする 林千代
第6話 1987年1月09日 主水 バースになる[16] 保利吉紀 田中徳三
第7話 1月16日 主水、せん、りつ、ダブルベッドに寝る 篠崎好 水川淳三
第8話 1月23日 主水、コールガールの仇をうつ 安倍徹郎
第9話 1月30日 主水、りつ、ラブホテルに行く 篠崎好 田中徳三
第10話 2月06日 主水、ワープロをうつ 安倍徹郎 石原興
第11話 2月13日 主水の隠し子現れる 篠崎好 原田雄一
第12話 2月20日 主水、ネズミ捕りにかかる 保利吉紀 松野宏軌
第13話 2月27日 主水、化粧をする 吉田剛 原田雄一
第14話 3月06日 主水、大奥の鶴を食べて失業する 松野宏軌

ネット局 編集

※途中で打ち切られた局や、しばらくの間放送する他系列ネットの局がある。

系列は放送当時のもの。
放送対象地域 放送局 系列 備考
近畿広域圏 朝日放送 テレビ朝日系列 制作局
関東広域圏 テレビ朝日
北海道 北海道テレビ
青森県 青森放送 日本テレビ系列
テレビ朝日系列
岩手県 テレビ岩手 日本テレビ系列
宮城県 東日本放送 テレビ朝日系列
秋田県 秋田テレビ フジテレビ系列
テレビ朝日系列
山形県 山形放送 日本テレビ系列
テレビ朝日系列
福島県 福島放送 テレビ朝日系列
新潟県 新潟テレビ21
長野県 テレビ信州 テレビ朝日系列
日本テレビ系列
山梨県 テレビ山梨 TBS系列
富山県 富山テレビ フジテレビ系列
石川県 石川テレビ
福井県 福井テレビ
静岡県 静岡けんみんテレビ テレビ朝日系列 現・静岡朝日テレビ
中京広域圏 名古屋テレビ
鳥取県島根県 山陰放送 TBS系列
広島県 広島ホームテレビ テレビ朝日系列
山口県 山口放送 日本テレビ系列
テレビ朝日系列
徳島県 四国放送 日本テレビ系列
香川県岡山県 瀬戸内海放送 テレビ朝日系列
愛媛県 南海放送 日本テレビ系列
高知県 テレビ高知 TBS系列
福岡県 九州朝日放送 テレビ朝日系列
長崎県 長崎放送 TBS系列
熊本県 テレビ熊本 フジテレビ系列
テレビ朝日系列
大分県 大分放送 TBS系列
宮崎県 宮崎放送
鹿児島県 鹿児島放送 テレビ朝日系列
沖縄県 琉球放送 TBS系列

逸話 編集

  • 本作は当初、撮影日程に余裕が無く、また夜鶴の銀平の殺し技が決まらないことから、撮影スケジュールが逼迫し、第3話で、ABCへの撮影フィルムの納品が間に合わない状況となった。番組製作関係者の責任問題にも発展しかねない事態になるところであったが、放送予定日当日(1986年11月21日)夜の三原山噴火による報道番組の特別編成に伴い本作は放送中止となり、キー局・テレビ朝日の番組編成の都合上、本作の次の放送日が12月5日となったことから撮影フィルム未納の事態は免れた[17]

脚注 編集

  1. ^ 第7話のラストシーンでオランダ商館から主水に授与された表彰状の日付が1819年(文政2年)1月16日となっている。ただし、第6話の劇中で「上様が亡くなられた」と語られるが、文政年間に死去した将軍は(存命中に隠居した者も含めて)実在しない。
  2. ^ 第10話では平賀源内(1728年 - 1780年)の名が主水の口から出ており(存命人物扱い)、時代設定が一定していない。
  3. ^ 必殺仕事人V』でのお新と玉助に相当するキャラクター
  4. ^ 事実上の「左遷」であり、当初はその事を、せんとりつには隠していたが、結局は知られることとなる。
  5. ^ 次作の『風雲竜虎編』第1話の鍛冶屋の政の登場シーンでは主水から「銀平のことは忘れろ」との一言がある。
  6. ^ 今でいうところの古物商
  7. ^ 新・必殺仕置人』の元締・虎であるが、上方の元締と言っていることから『必殺シリーズ10周年記念スペシャル 仕事人大集合』の設定と入り混じっている。
  8. ^ ひかるのコメントによると、旋風編での順之助の最期は「爆死」ではなく「行方不明」である。これは映画『必殺4 恨みはらします』の公開が控えていたことと、いずれ、必殺シリーズに順之助を再登場させるためにと、制作スタッフと約束していたことであるが、再登場の前に必殺シリーズが一旦、終了となった。出典:『時代劇マガジンVol.19』(辰巳出版)内のスペシャル インタビューより。
  9. ^ 第10話で「鬼塚平蔵(へいぞう)」と名乗る(漢字表記は日本語字幕より)。
  10. ^ 第1話で千代松が「若い頃は医学を志していた」「整体の知識がある」と順之助に語っているが、事実なのかは不明。
  11. ^ 第13話も同様。
  12. ^ 今でいうところのグレネードランチャー
  13. ^ 複数の悪人に対しては便利屋お玉が火の付いた提灯を悪人に手渡し、回避を合図に提灯の火を狙撃。弾丸の中にある炸薬に引火させ、空中爆発を引き起こす。
  14. ^ 愛は別離”. @ ELISE(アットエリーゼ). 2016年1月19日閲覧。
  15. ^ 1986年11月21日の放送が予定されていたが「三原山噴火」によるANN報道特別番組のため、休止(スポンサーと提供クレジットは朝日放送が担当)。11月28日は『サントリーミステリー大賞スペシャル』放送のため、本作第3話の放送は12月5日に延期された。
  16. ^ 撮影された時期(1986年11月)に藤田がミュージカル『その男ゾルバ』(梅田コマ劇場)に主演していたため、一部のシーンで髭を生やしたままの状態でいることを形容したもの。
  17. ^ 山田誠二『必殺シリーズ完全百科』p55 - 56より。出典では次作『必殺仕事人V・風雲竜虎編』撮影時での出来事としているが、実際には本作撮影時での出来事である。

前後番組 編集

テレビ朝日系 金曜22時台(当時はABCの制作枠)
前番組 番組名 次番組
必殺まっしぐら!
(1986年8月8日 - 1986年10月31日)
必殺仕事人V・旋風編
(1986年11月7日 - 1987年3月6日)
必殺仕事人V・風雲竜虎編
(1987年3月13日 - 1987年7月31日)