情報科 (陸上自衛隊)

陸上自衛隊の職種

情報科(じょうほうか、: Intelligence)は、陸上自衛隊職種の一つ。各種情報の収集および処理を専門的に行い、適切な情報の配布・配信を行う。職種標識の色は水色

概要 編集

 
陸上自衛隊情報科職種徽章

従来の情報職域は諸職種の隊員によって編成されていた混成部隊であったが、中期防衛力整備計画 (2005)に基づき2010年3月26日、職種化された。陸上自衛隊創設以降、職種の新設はこれが初めてである[1]。教育機関は静岡県駿東郡陸上自衛隊情報学校(旧陸上自衛隊小平学校情報教育部)、教育部隊は情報教導隊が担当する。

職種徽章は左右対称であり、日本神話に登場する金烏(きんう)と望遠鏡日本刀を組み合わせた物。隊旗及び部隊章の職種色は水色(アクアブルー)である。それぞれ、金烏は緊要な時期に天皇を先導した天の使い(情報の速達性)、望遠鏡は僅かな情報も見逃さない(収集の努力)、鍵は情報の分析及び保全の確行を、日本刀は戦闘力としての情報を象徴している[1][2]。なお、CIAをはじめとして、情報部隊・機関のシンボルマークには鳥が多用されるが、これはエジプト神話に登場する天空と太陽を司る神であるホルス・タカの目)に由来している(情報本部は雉子(きぎす)、陸自中央情報隊及びかつて存在した陸幕調査部調査2課調査別室(情報本部の前身)は八咫烏をシンボルマークのモチーフに使用)。

情報科に関連する特技 編集

情報科部隊 編集

情報科職種の対象となっている主な部隊・機関等は以下のとおり。「情報」と訳される語は「Information」、「Intelligence」等複数あるが、陸上自衛隊で情報科職種の対象となっているのは後者である(通信科職種も観点によっては情報職域の一つとしてとらえることもできるが、情報科職種の範疇には含まれていない。諸外国でも軍事情報科と信号科は別の兵科である)

部隊一覧 編集

陸上総隊直轄部隊
方面情報隊
方面情報処理隊
沿岸監視隊
方面移動監視隊
方面無人偵察機隊
  • 北部方面無人偵察機隊(静内駐屯地)北部方面情報隊
  • 中部方面無人偵察機隊(今津駐屯地)中部方面情報隊
  • 西部方面無人偵察機隊(飯塚駐屯地)西部方面情報隊
師団情報隊・旅団情報隊
防衛大臣直轄機関・部隊

そのほかの主な配属先 編集

沿革 編集

沿岸監視隊の設置 編集

  • 1955年(昭和30年)12月1日:第301沿岸監視隊が北部方面隊直轄部隊として札幌駐屯地で編成完結。
  • 1956年(昭和31年)
    • 7月10日:第302沿岸監視隊が北部方面隊直轄部隊として標津分屯地で編成完結。
    • 10月15日:第301沿岸監視隊が稚内分屯地に移駐[3]
  • 1968年(昭和43年)3月1日:第301沿岸監視隊派遣隊が礼文分屯地で編成完結。
  • 1972年(昭和47年):第302沿岸監視隊羅臼分室を設置。
  • 2005年(平成17年)3月28日:西部方面情報処理隊及び西部方面通信情報隊を健軍駐屯地で新編。
  • 2006年(平成18年)3月27日:北部方面情報処理隊札幌駐屯地で新編。
  • 2007年(平成19年)3月28日:
  1. 中央情報隊防衛省市ヶ谷地区において防衛大臣直轄部隊として編成完結。情報処理隊及び現地情報隊を市ヶ谷駐屯地で新編。
  2. 中部方面情報処理隊伊丹駐屯地で新編。
  • 2008年(平成20年)3月26日:
  1. 東部方面情報処理隊朝霞駐屯地で新編。
  2. 中部方面移動監視隊を今津駐屯地で新編。

情報科の職種化 編集

  • 2010年(平成22年)3月26日:情報科の職種化。
  1. 中部方面情報隊が中部方面情報処理隊を母体に伊丹駐屯地で新編[4]
  2. 中部方面移動監視隊(今津駐屯地)が中部方面情報隊に隷属。
  3. 中部方面無人偵察機隊を今津駐屯地で新編し、中部方面情報隊に隷属。
  4. 西部方面情報隊が西部方面情報処理隊を母体に健軍駐屯地で新編。
  5. 西部方面通信情報隊(健軍駐屯地)が西部方面情報隊に隷属。
  6. 西部方面無人偵察機隊飯塚駐屯地で新編し、西部方面情報隊に隷属。
  • 2013年(平成25年)3月26日:北部方面情報隊が北部方面情報処理隊を母体に札幌駐屯地で新編[5]
  1. 第301沿岸監視隊(稚内分屯地)が北部方面情報隊に隷属。
  2. 第302沿岸監視隊(標津分屯地)が北部方面情報隊に隷属。
  3. 北部方面無人偵察機隊を静内駐屯地で新編し、北部方面情報隊に隷属。

師団情報隊の新編 編集

  • 2019年(平成31年)3月26日:
  1. 第8情報隊が北熊本駐屯地で新編。
  2. 情報教導隊が教育支援部隊として富士駐屯地で新編。
  • 2020年(令和2年)3月26日:
  1. 第6情報隊が神町駐屯地で新編[6]
  2. 第15情報隊が那覇駐屯地で新編[7]
  • 2022年(令和4年)3月17日:
  1. 第2情報隊が旭川駐屯地で新編[8][9]
  2. 第14情報隊を善通寺駐屯地で新編[10]
  • 2023年(令和5年)3月16日:
  1. 第5情報隊が帯広駐屯地で新編。
  2. 第11情報隊が真駒内駐屯地で新編[11]
  3. 西部方面移動監視隊を北熊本駐屯地で新編。西部方面情報隊に隷属。

部隊の詳細 編集

方面情報隊 編集

詳細は「北部方面情報隊」、「中部方面情報隊 」、「 西部方面情報隊」を参照。

方面情報処理隊 編集

方面情報処理隊の一覧

  • 東北方面情報処理隊(仙台駐屯地)東北方面隊直轄
  • 東部方面情報処理隊(朝霞駐屯地)東部方面隊直轄

方面情報処理隊の詳細

東北方面情報処理隊(とうほくほうめんじょうほうしょりたい)は、仙台駐屯地に駐屯する東北方面隊隷下の情報科部隊。

東部方面情報処理隊(とうぶほうめんじょうほうしょりたい)は、朝霞駐屯地に駐屯する東部方面方面隊隷下の情報科部隊。

方面無人偵察機隊 編集

方面無人偵察機隊の一覧

  • 北部方面無人偵察機隊(静内駐屯地)北部方面情報隊
  • 中部方面無人偵察機隊(今津駐屯地)中部方面情報隊
  • 西部方面無人偵察機隊(飯塚駐屯地)西部方面情報隊

方面無人偵察機隊の詳細

北部方面無人偵察機隊(ほくぶほうめんむじんていさつきたい)は、静内駐屯地に駐屯する北部方面情報隊隷下の情報科部隊。

中部方面無人偵察機隊(ちゅうぶほうめんむじんていさつきたい)は、今津駐屯地に駐屯する中部方面情報隊隷下の情報科部隊。

西部方面無人偵察機隊(せいぶほうめんむじんていさつきたい)は、飯塚駐屯地に駐屯する西部方面情報隊隷下の情報科部隊。

沿岸監視隊 編集

沿岸監視隊(えんがんかんしたい)は、日本沿岸の航行艦船の監視を主任務としている情報科部隊である。北部方面隊に2個沿岸監視隊、西部方面隊に1個沿岸監視隊があり、北部方面隊、中部方面隊および西部方面隊に移動監視隊が編成されている。

師団情報隊・旅団情報隊 編集

作戦基本部隊である師団・旅団のためのUAVによる監視及び偵察、並びに師団・旅団司令部の情報業務の支援を任務とし、装備された中域用UAVをもって、師団・旅団長の迅速な状況判断、遠距離・早期からの火力発揮に資するため、洋上から作戦地域全般にわたり 監視・偵察を実施する。また、司令部第2部の情報業務を支援するため、情報処理班による収集・処理を実施し、多様な情報ニーズを迅速・確実に処理して、師団・旅団長の状況判断に資する情報資料を提供する。

情報隊長は2等陸佐で、中域用UAVの無人偵察機(UAV)スキャンイーグル2」を運用する無人偵察機班と情報処理班から成り、約50人で編成される。

2019年(平成31年)3月に第8情報隊が編成されたのを皮切りに、北部方面隊に3個隊、東北方面隊に1個隊、中部方面隊に1個隊、西部方面隊に2個隊の計7個隊が編成されている。

第2情報隊 編集

第2情報隊(だいにじょうほうたい)は、旭川駐屯地に駐屯する第2師団の隷下の情報科部隊である。作戦基本部隊である師団の作戦地域全般にわたり、装備された無人偵察機(UAV)「スキャンイーグル」により、監視・偵察活動を行う部隊であり、師団司令部の情報業務の支援を任務とする。

第5情報隊 編集

第5情報隊(だいごじょうほうたい)は、帯広駐屯地に駐屯する第5旅団の隷下の情報科部隊である。作戦基本部隊である旅団の作戦地域全般にわたり、装備された無人偵察機(UAV)「スキャンイーグル」により、監視・偵察活動を行う部隊であり、師団司令部の情報業務の支援を任務とする

第6情報隊 編集

第6情報隊(だいろくじょうほうたい)は、神町駐屯地に駐屯する第6師団の隷下の情報科部隊である。作戦基本部隊である師団の作戦地域全般にわたり、装備された無人偵察機(UAV)により、監視・偵察活動を行う部隊であり、師団司令部の情報業務の支援を任務とする。

第8情報隊 編集

第8情報隊(だいはちじょうほうたい)は、北熊本駐屯地に駐屯する第8師団隷下の情報科部隊である。作戦基本部隊である師団の作戦地域全般にわたり、装備された無人偵察機(UAV)により、監視・偵察活動を行う部隊であり、師団司令部の情報業務の支援を任務とする。部隊のシンボルは、熊本市の鳥「四十雀」で、鳴き声を組合せて仲間に伝える能力(情報処理)、飛翔(UAV)、金色の姿は、情報全般の象徴(金烏=きんう)をイメージしている。

第11情報隊 編集

第11情報隊(だいじゅういちじょうほうたい)は、真駒内駐屯地に駐屯する第11旅団隷下の情報科部隊である。約50人で編成。旅団司令部が作戦を展開する際の情報業務を支援するほか、ドローンを含む無人偵察機による情報収集と分析などを行う。北部方面隊では第2情報隊に次いで2番目、国内では6番目の部隊となる。

第14情報隊 編集

第14情報隊(だいじゅうよんじょうほうたい)は、善通寺駐屯地に駐屯する第14旅団の隷下の情報科部隊である。作戦基本部隊である旅団の作戦地域全般にわたり、装備された無人偵察機(UAV)「スキャンイーグル」により、監視・偵察活動を行う部隊であり、旅団司令部の情報業務の支援を任務とする。部隊は「無人偵察機班」と「情報処理班」から成り、50人で編成され、無人偵察機が配備されるのは全国で4か所目となる[10][12]

第15情報隊 編集

第15情報隊(だいじゅうごじょうほうたい)は、那覇駐屯地に駐屯する第15旅団隷下の情報科部隊である。無人偵察機(UAV)スキャンイーグル」を運用し、沖縄県の離島への不審船接近などを監視・偵察活動を行い、南西防衛の第一線部隊である旅団の任務達成に必要な情報収集と関係部隊に対し迅速な情報提供を任務とする[7][13]

教育支援部隊 編集

情報学校隷下に情報教導隊が編成されている。

脚注 編集

  1. ^ a b 陸上自衛隊「情報科職種」の創設
  2. ^ 朝雲新聞、2010年4月1日号。
  3. ^ 稚内市百年史編さん委員会 編『稚内百年史』1978年10月30日、453頁。 
  4. ^ MAMOR2010年9月号の記事より
  5. ^ 防衛省人事発令(1佐職:2013/3/26付、2013/3/25閲覧)
  6. ^ 第6師団改編行事その2~第6情報隊新編~”. 陸上自衛隊第6師団. 2020年3月26日閲覧。
  7. ^ a b 第15情報隊長の紹介”. 陸上自衛隊第15旅団. 2020年4月11日閲覧。
  8. ^ 陸上自衛隊 第2師団 [@JGSDF_NA_2D] (2022年3月24日). "令和4年3月17日(木)、第3普通科連隊 が「第3即応機動連隊」へ改編されるとともに、「第2情報隊」が新編されました。". X(旧Twitter)より2022年3月27日閲覧
  9. ^ “第2師団が機動師団に改編 国内各地へ即応展開も”. 朝日新聞. (2022年3月27日). https://digital.asahi.com/articles/ASQ3V6SR0Q3VIIPE00P.html 2022年4月29日閲覧。 
  10. ^ a b 『陸自第14旅団が情報隊を新設、全国で4か所目となる無人偵察機を配備』”. すずくるのお国の守り. 2022年3月27日閲覧。
  11. ^ “陸上自衛隊第11旅団 「第11情報隊」を新設”. 産経新聞. (2023年3月16日). https://www.sankei.com/article/20230316-PF2WIGNLXFJE7BBH3S36ODXHYQ/ 2023年3月16日閲覧。 
  12. ^ ニュース詳細│朝雲新聞社”. www.asagumo-news.com. 2022年5月20日閲覧。
  13. ^ 「沖縄にUAV部隊新編」朝雲新聞(2020年4月23日付)

関連項目 編集

外部リンク 編集