技術士国家試験
技術士国家試験(ぎじゅつしこっかしけん)は、技術士または技術士補になるための日本の国家試験である。
技術士国家試験は、技術士法の指定試験機関である日本技術士会が実施している。試験の内容はおおむね毎年同じであるが、大規模な制度変更を行う年度もある。この記事の内容は最新の状態に保たれているとは限らないので、受験を志す者は必ず日本技術士会のウェブサイトで最新の情報を入手すること。
スケジュール 編集
例年、おおむね以下のようなスケジュールで実施されている。[1]。第一次試験の出願から第二次試験の合格まで、最短でも2年近くかかることになる。
第一次試験 | 第二次試験 | 会場 | |
---|---|---|---|
出願 | 6月中旬~下旬 | 4月上旬~中旬 | |
筆記試験 | 11月下旬 | 7月第3週 | 北海道, 宮城県, 東京都, 神奈川県, 新潟県, 石川県,
愛知県, 大阪府, 広島県, 香川県, 福岡県, 沖縄県 |
口頭試験 | 12月上旬~翌年1月中旬 | 東京都 | |
合格発表 | 翌年2月下旬 | 翌年3月上旬 |
第一次試験 編集
第一次試験には受験資格はなく、誰もが受験できる。
第一次試験に合格すると、技術士補登録をする資格が得られる。つまり第一次試験は技術士補試験を兼ねている。日本技術士会では第一次試験合格者を「修習技術者」と呼んでいる。
第一次試験の試験科目は以下の通り。[2]
試験時間 | 配点 | 試験方式 | ||
---|---|---|---|---|
適性科目 | 技術士法第四章の規定の遵守に関する適性 | 1時間 | 15点 | 択一式 |
基礎科目 | 科学技術全般にわたる基礎知識 | 1時間 | 15点 | |
専門科目 | 当該技術部門に係る基礎知識及び専門知識 | 2時間 | 50点 |
第一次試験の合格率は、2021年(令和3年)度の実績で31.3%[3] である。
一次試験 編集
- 基礎科目
- 科学技術全般にわたる基礎知識を問う問題
- 設計・計画に関するもの(設計理論、システム設計等)
- 情報・論理に関するもの(アルゴリズム、情報ネットワーク等)
- 解析に関するもの(力学、電磁気学等)
- 材料・化学・バイオに関するもの(材料特性、バイオテクノロジー等)
- 環境・エネルギー・技術に関するもの(環境、エネルギー、品質管理、技術史等)
- 適性科目
- 技術士法第4章(技術士等の2つの義務と3つの責務)の規定の遵守に関する適性
- 名称を表示する場合、登録をしている部門を名のる義務
- 業務に該当する内容の秘密保持
- 信用失墜行為の禁止
- 公共の安全と環境の保全の責務
- 資質向上の責務
- その他
- 製造物責任法
- 公益通報者保護法
- ISO規格
- 労働基準法、労働組合法、労働関係調整法
- 企業の社会的責任(CSR)
- リスクアセスメント
- 技術者倫理、研究倫理
- バイオ技術を取り扱うガイドライン
- 食の安全
- 知的財産権及び著作権
- 国際情勢での気候変動、カンクン合意、生物多様性
- プロジェクトの進行の注意
- 等が出題される。(平成25年度の問題を参考)
- 専門科目
-
- 総合技術監理部門を除く20技術部門の専門知識を問う科目
- 基礎科目の免除
- 2002年度以前に一次試験の合格を経ずに二次試験に合格した者が、一次試験を受験する場合、基礎科目が免除される。
- 専門科目の免除
- 2019年(平成31年)度より、高度情報処理技術者試験および情報処理安全確保支援士試験の合格者は、第一次試験専門科目(情報工学部門)の受験が免除される[4]。
- 2019年(平成31年)度より、以下のいずれかの条件を満たす者は、第一次試験専門科目(経営工学部門)の受験が免除される。
- 中小企業診断士登録者
- 中小企業診断士の養成課程又は登録養成課程を修了した者。有効期間は当該修了日から3年以内。
- 中小企業診断士試験の第二次試験に合格した者。有効期間は当該合格日から3年以内。
- 2002年度以前に一次試験の合格を経ずに二次試験に合格した者が、合格した二次試験と同一の技術部門で一次試験を受験する場合、当該技術部門の専門科目が免除される。
- 第一次試験全科目の免除
大学や高等専門学校などの教育機関において、日本技術者教育認定機構 (JABEE) が認定した教育課程を修了した者は、第一次試験の合格者と同等(つまり修習技術者)であるとみなされる。
第二次試験 編集
第二次試験に合格すると、技術士登録をする資格が得られる。
第二次試験を受験するには、修習技術者(技術士一次試験合格もしくはJABEE認定課程の修了)であることに加えて、次のいずれかの条件を満たすことが必要である。
- 技術士補として4年間(総合技術監理部門は7年間)以上、技術士を補助する業務に就いた
- 第一次試験に合格してから4年間(総合技術監理部門は7年間)以上、監督者の下で「科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、評価又はこれらに関する指導の業務」に就いた
- 7年間(総合技術監理部門は10年間)以上「科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、評価又はこれらに関する指導の業務」に就いた
理工系の大学院を修了している場合、その期間のうち最大2年を、上記の業務期間から減じられる。つまり理工系の大学院を修了した者が技術士補登録をすれば、最短2年の実務経験で受験が可能になる。
一次試験と二次試験の技術部門は異なっていてもよい。例えば一次試験は電気電子部門で受験して、二次試験は情報工学部門で受験してもかまわない。
総合技術監理部門の選択科目は、他の技術部門の選択科目および必須科目に該当する[5]。すなわち、総合技術監理部門の受験には次の特徴がある。
- 総合技術監理部門で選択科目を受験することは、総合技術監理部門と他の部門を併願受験することにほかならない。ただしこの場合も科目合格はない。すなわち総合技術監理部門と他の部門を両方とも合格するか、両方とも不合格になるかのどちらかである。
- 総合技術監理部門以外の部門の第二次試験に合格している者が、総合技術監理部門を受験する場合は、合格した部門に相当する選択科目が免除される。すなわち必須科目のみ受験すればよい。
筆記試験 編集
受験申込書に記入した「技術部門」「選択科目」「専門とする事項」に従って、以下の設問に[6] 解答する。
- 総合技術監理部門以外の技術部門
科目 | 出題内容 | 試験方法 | 試験時間 | 配点 |
---|---|---|---|---|
選択科目 | 「選択科目」についての
専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの |
記述式(600字詰用紙6枚) | 3時間30分 | 60点 |
必須科目 | 「技術部門」全般にわたる
専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの |
記述式(600字詰用紙3枚) | 2時間 | 40点 |
- 総合技術監理部門
科目 | 出題内容 | 試験方法 | 試験時間 | 配点 |
---|---|---|---|---|
選択科目 | 選択した技術部門に対応する「選択科目」についての
専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの |
記述式(600字詰用紙6枚) | 3時間30分 | 60点 |
選択した「技術部門」全般にわたる
専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの |
記述式(600字詰用紙3枚) | 2時間 | 40点 | |
必須科目 | 「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力 | 択一式(40問全問解答) | 2時間 | 50点 |
記述式(600字詰用紙3枚) | 3時間30分 | 50点 |
口頭試験 編集
筆記試験を合格したものだけが口頭試験を受験できる。
口頭試験は、筆記試験の答案、および受験申込書に添付した実務経歴証明書を使用して実施される。口頭試験の試問事項及び試問時間は次の通りである。
- 総合技術監理部門以外の技術部門
試問事項 | 配点 | 試験時間 |
---|---|---|
技術士としての実務能力 | 60点 | 20分(10分程度延長の場合もあり) |
技術士としての適格性 | 40点 |
- 総合技術監理部門
試問事項 | 配点 | 試験時間 | |
---|---|---|---|
選択科目に対応 | 技術士としての実務能力 | 60点 | 20分(10分程度延長の場合もあり) |
技術士としての適格性 | 40点 | ||
必須科目に対応 | 「総合技術監理部門」の必須科目に関する
技術士として必要な専門知識及び応用能力 |
100点 | 20分(10分程度延長の場合もあり) |
合格率等 編集
以下、2021年(令和3年)度の実績[7] に基づいて記述する。
二次試験の合格率は年度や部門、部門内の選択科目によって異なる。実際に受験した22,903人のうち、2,659人(11.6%)が最終合格している。総合技術監理部門は、他部門で合格した者が受験することが多かったので、かつては他の部門よりも合格率が高かったが、現在では他部門の平均と変わらなくなっている。
なお、技術士第二次試験の合格者の平均年齢は42.5歳であるが、合格率が最も高いのは30代の受験者であるので、30代で合格できる試験にするという制度改革の主旨は達成されたと言える。
試験実施の詳細 編集
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令和元年東日本台風の影響 編集
技術士国家試験第一次試験(10月13日)は、東京および神奈川試験地での実施が中止となり[8]、当該各都県では2020年3月7日に再試験を実施することとなった。また、試験地が宮城県、新潟県であって受験しなかった受験者、試験地が東京都、神奈川県、宮城県、新潟県以外で受験しなかった受験者のうち、台風の影響で試験当日または試験前日に、鉄道・バスなどによる試験地への移動が客観的に不可能であったと日本技術士会が認めた受験者についても、東京都、神奈川県において日本技術士会が指定する試験会場で受験可能となった[9]。
出典 編集
- ^ 日本技術士会 技術士試験センター「技術士制度について」p8,13
- ^ 日本技術士会 技術士試験センター 平成22年度技術士第一次試験実施大綱
- ^ 日本技術士会 技術士試験センター 令和3年度 技術士第一次試験統計
- ^ 平成31年度技術士試験の試験方法の改正についてのQ&A|公益社団法人 日本技術士会
- ^ 日本技術士会「技術士制度について」p12
- ^ 平成22年度技術士第二次試験実施大綱
- ^ 日本技術士会 技術士試験センター 令和3年度技術士第二次試験統計
- ^ “技術士第一次試験を受験される皆様へ(第6報 10月13日 8時40分)”. 日本技術士会. (2019年10月13日) 2019年10月13日閲覧。
- ^ “令和元年度技術士第一次試験の再試験について(第1報)”. 日本技術士会. (2019年11月1日) 2019年11月14日閲覧。