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故郷」(こきょう、原題故鄕)は、魯迅の代表作ともいえる短編小説のひとつ。1921年5月『新青年』に発表され、のちに魯迅の最初の作品集である『吶喊』(1923年)に収録された。作品に描かれた主人公の生家の没落、故郷からの退去は、魯迅本人の経験がもととなっている。当時の社会に残存する封建的な身分慣習に対する悲痛な慨嘆が込められている作品である。

目次

あらすじ編集

主人公の「私」は20年ぶりに故郷に帰ってくる。かつて地主であったが、今は没落してしまった生家の家財を引き払うためであった。主人公の想い出の中で美しかった故郷はすっかり色あせ、土地だけでなく住む人の心さえも貧しく荒み果てていた。 主人公は、少年時代に仲良く遊んでいた小作人の息子・閏土(ルントウ)との再会を楽しみにしていたが、再会した閏土との口から出た言葉は、地主階級と小作人という悲しい身分の壁を否応無く突きつけるものであった。しかし、その後主人公の甥の宏児(ホンル)が閏土の五男の水生(シュイション)との再会を約束したことを知り、明るい未来の存在を願う。

日本での受容編集

日本では、中学3年用国語教科書5社すべてに採用されており、親しまれている。

日本では以下のような訳者によって翻訳が手がけられている。

  • 井上紅梅 - 『魯迅全集』(改造社、1932年)
  • 竹内好 - 『阿Q正伝・狂人日記―他十二篇 吶喊』(岩波文庫、1955年)→『魯迅選集』(岩波書店、1956年)
  • 高橋和巳 - 『世界の文学47 魯迅』(中央公論社、1967年)→『吶喊』(中公文庫、1973年)
  • 増田渉 - 『魯迅作品集 鋳剣』(ゆまにて書房、1975年)
  • 竹内好 - 『魯迅文集』(筑摩書房、1976年)→『魯迅文集1』(ちくま文庫、1991年)
  • 駒田信二 -『魯迅作品集』(講談社文庫、1979年)→『阿Q正伝・藤野先生』(講談社文芸文庫、1998年)
  • 藤井省三-『故郷/阿Q正伝』(光文社古典新訳文庫、2009年)

国語教科書では竹内好『魯迅文集』(筑摩書房)収録の訳文が底本として用いられている。

備考編集

  • 本作中に登場する動物「」(チャー)は、地元の人々の発音をもとに魯迅が漢字を造ったものである。井上紅梅は「土竜」と訳しているが、果実を好むなど「土竜」とは言いがたい記述がある。現代の一般的な解説書では、魯迅が友人に宛てた手紙をもとに「アナグマのような動物」(ハクビシン?)と解釈されている。
  • 本作中に登場する私=迅ちゃん(シュンちゃん)は魯迅ではないかといわれている。
  • 魯迅は1920年1 - 2月に故郷の紹興に帰省している(そのときの出来事がこの小説のモデルという説もある[1])。

脚注・出典編集

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  1. ^ よくわかる国語の学習3(明治図書) pg.74より

外部リンク編集