メインメニューを開く

新疆ウイグル再教育キャンプ

新疆ウイグル再教育キャンプ(新疆维吾尔再教育营)は、中華人民共和国新疆ウイグル自治区収容所である。

概要編集

ウイグル人ムスリムなど、中国国内外の数百万人の人間が収容されているとされる[1][2]。当初中国政府はキャンプの存在を否定していたが、2017年からジャーナリスト学者などが衛星写真、目撃証言をもとにフェンス監視塔に囲まれた秘密施設を指摘し、翌2018年10月に新疆ウイグル自治区主席のショホラト・ザキル英語版は「職業訓練学校」として存在を認め、1990年代から2016年まで度々起きてきたテロ事件の撲滅と根絶に成功したとアピールした[3]。また、ウイグル人を裁判なしに収監したキューバグアンタナモ湾収容キャンプと同様のテロとの戦いに必要な措置であるとも主張した[4]

キャンプは、2014年ウルムチ駅爆発事件後に「対テロ人民戦争」「厳打暴恐活動専項行動英語版[5][6][7]を掲げた習近平総書記国家主席が同年5月の新疆工作座談会での秘密演説で「人民民主独裁の武器を躊躇なく行使せよ、情け容赦は無用だ」と指示したことを受けて設置されたとニューヨーク・タイムズリークをもとに報じており[8][9]、特に2016年陳全国中国語版が新疆ウイグル自治区の党委書記、朱海侖中国語版が党委副書記兼政法委員会書記にそれぞれ就任して翌2017年2月に武装警察公安部民兵を集めた決起大会で朱海侖が「人民民主独裁の強力な拳で、全ての分離主義者とテロリストは粉砕する」と演説して以降に大規模な拘留が始まり[10]国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した中国政府の内部文書によれば監視カメラスマートフォンなどから個人情報を収集してアルゴリズム解析する「一体化統合作戦プラットフォーム」によるAI機械学習を利用したプレディクティブ・ポリシング英語版で選別されたウイグル人が法的手続きを経ずに予防拘禁されるようになって2017年6月時点で約1万5千人がこのシステムで収容所に投獄されたとされ[3][11]ノッティンガム大学の新疆研究者であるリアン・トゥムは「コンピュータが人間を強制収容所に送る例は他にない」と評している[12]

中国語名の「再教育营」はベトナム共産党政府が行なっていた再教育キャンプでも使われている。

国際社会の反応編集

 
2019年7月時点の国際社会の反応
  中国の新疆政策を非難した国
  中国の新疆政策を支持した国
  中国

2019年7月10日、国際連合人権理事会日本イギリスフランスドイツオーストリアベルギーカナダデンマークエストニアフィンランドアイスランドアイルランドラトヴィアリトアニアルクセンブルクオランダニュージーランドノルウェースペインスウェーデンスイスの22カ国が共同書簡を公開してこの政策を非難し[13]、12日にはイタリアも批判に加わって23カ国となった[14]

これに対して14日に中国の新疆政策を支持する共同書簡をサウジアラビアエジプトパキスタンカタールアラブ首長国連邦バーレーンクウェートオマーントルクメニスタン南スーダンスーダンアルジェリアナイジェリアアンゴラトーゴブルキナファソブルンジコモロコンゴ共和国コンゴ民主共和国エリトリアガボンラオスソマリアカメルーンボリビアタジキスタンフィリピンカンボジアベラルーシベネズエラジンバブエミャンマーキューバ北朝鮮シリアロシアの37カ国は公開し[15][16][17][18][19]、26日にイランイラクジブチスリランカパレスチナなどの13カ国も署名に参加して50カ国となった[20][21]トルコは「100万人を超えるウイグル族が収容所で拷問洗脳を受けている」としてキャンプを同年2月の国連人権理事会で批判した唯一のイスラム教国だったが[22]イスラーム諸国が集まるイスラム協力機構(OIC)は同年3月にムスリムに対する中国の措置への「称賛」を決議しており[4][23]、7月に中国を非難した共同書簡に名を連ねず、同時期に訪中したトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領も一転して批判しなかった[24][25][26]。しかし、翌8月20日にトルコと親密なカタールは中国を支持する共同書簡への署名を撤回した[14]

2019年11月29日国際連合総会の第3委員会では、国連人権理事会を脱退していたアメリカ合衆国を含む日米欧などの23カ国が共同声明でキャンプなど新疆政策の撤回を求めるもこれに対抗してベラルーシとロシアやエジプトなどの54カ国は共同声明で中国の措置を支持した[27]

施設編集

2018年、11月と12月にBitter Winter誌は、グルジャ地区にある2か所の強制収容所で撮影されたされる3本の動画を公開した。動画に移る施設は軍事刑務所のような特徴がみられ、同誌はこの施設を中国政府が主張するような「学校」「職業訓練施設」ではなく、「強制収容所」であると記している[28][29][30]Business Insiderによると、2本目の「Bitter Winterの動画は、新疆で以前拘留されていた者や目撃者の証言と合致する」という[31]

脚注編集

  1. ^ Pentagon cites China’s ‘tremendous progress’ in building missiles as it details Chinese military in report”. ワシントン・ポスト (2019年5月3日). 2019年7月14日閲覧。
  2. ^ China Uighurs: One million held in political camps, UN told”. BBC. 2019年7月14日閲覧。
  3. ^ a b “Exposed: China’s Operating Manuals For Mass Internment And Arrest By Algorithm”. 国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ). (2019年11月24日). https://www.icij.org/investigations/china-cables/exposed-chinas-operating-manuals-for-mass-internment-and-arrest-by-algorithm/ 2019年11月25日閲覧。 
  4. ^ a b With Pressure and Persuasion, China Deflects Criticism of Its Camps for Muslims”. ニューヨーク・タイムズ (2019年4月8日). 2019年11月25日閲覧。
  5. ^ “习近平:打好反恐人民战争”. 人民網. (2014年12月31日). http://politics.people.com.cn/n/2014/1231/c1001-26309191.html 2019年11月25日閲覧。 
  6. ^ “习近平:打好反恐人民战争”. 網易財経. (2014年5月4日). http://money.163.com/14/0504/08/9RD094QG00253B0H.html 2019年11月25日閲覧。 
  7. ^ “Fear and oppression in Xinjiang: China’s war on Uighur culture”. ファイナンシャル・タイムズ. (2019年9月12日). https://www.ft.com/content/48508182-d426-11e9-8367-807ebd53ab77 2019年11月25日閲覧。 
  8. ^ “ウイグル人に「情け容赦は無用」、中国政府の内部リークで新事実明らかに 米報道”. AFPBB. (2019年11月17日). https://www.afpbb.com/articles/-/3255199 2019年11月25日閲覧。 
  9. ^ “‘Absolutely No Mercy’: Leaked Files Expose How China Organized Mass Detentions of Muslims”. ニューヨーク・タイムズ. (2019年11月16日). https://www.nytimes.com/interactive/2019/11/16/world/asia/china-xinjiang-documents.html 2019年11月18日閲覧。 
  10. ^ Zenz, Adrian. “Brainwashing, Police Guards and Coercive Internment: Evidence from Chinese Government Documents about the Nature and Extent of Xinjiang’s "Vocational Training Internment Camps"”. Journal of Political Risk 7 (7). http://www.jpolrisk.com/brainwashing-police-guards-and-coercive-internment-evidence-from-chinese-government-documents-about-the-nature-and-extent-of-xinjiangs-vocational-training-internment-camps/#_ftn65 2019年7月14日閲覧。. 
  11. ^ “大規模システムでウイグル族を監視 中国当局の内部文書判明”. 東京新聞. (2019年11月25日). https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201911/CK2019112502000118.html 2019年11月25日閲覧。 
  12. ^ “Secret documents: China detention camps to 'prevent escapes'”. 毎日新聞. (2019年11月25日). https://mainichi.jp/english/articles/20191125/p2g/00m/0in/039000c 2019年11月25日閲覧。 
  13. ^ 中国は「ウイグル族の拘束やめよ」  22カ国が共同書簡で非難”. BBC (2019年7月11日). 2019年7月14日閲覧。
  14. ^ a b マッシモ・イントロヴィーニャ (2019年8月24日). “カタールが新疆に関して中国を支持する「恥ずべき枢軸」を脱退 - ニュース” (日本語). Bitter Winter (日本語). 2019年9月15日閲覧。
  15. ^ マッシモ・イントロヴィーニャ (2019年7月15日). “ウイグル族向けの新疆の収容施設に関して国連で37ヵ国が支持を表明 - ニュース” (日本語). Bitter Winter (日本語). 2019年9月15日閲覧。
  16. ^ ウイグル問題で中国擁護、ロシアなど37か国が国連に書簡”. AFPBB (2019年7月13日). 2019年7月14日閲覧。
  17. ^ 37国联合支持中国新疆治理 有不少还是伊斯兰国家”. 新浪 (2019年7月14日). 2019年7月14日閲覧。
  18. ^ China’s Retort Over Its Mass Detentions: Praise From Russia and Saudi Arabia”. ニューヨーク・タイムズ (2019年7月12日). 2019年7月14日閲覧。
  19. ^ Saudi Arabia and Russia among 37 states backing China's Xinjiang policy”. ロイター (2019年7月13日). 2019年7月14日閲覧。
  20. ^ マッシモ・イントロヴィーニャ (2019年8月2日). “新たに13の国々が新疆に関して中国を支持し、「恥ずべき枢軸」に加わった - ニュース” (日本語). Bitter Winter (日本語). 2019年9月15日閲覧。
  21. ^ Fifty ambassadors throw weight behind China on Xinjiang”. Global Times (2019年7月27日). 2019年7月28日閲覧。
  22. ^ 中国のウイグル人同化政策は「人類にとって大きな恥」、トルコが非難 民謡歌手が獄中死” (2019年2月10日). 2019年7月14日閲覧。
  23. ^ Organisation of Islamic Cooperation ‘commends’ China for its treatment of Muslims”. Hong Kong Free Press (2019年3月14日). 2019年9月8日閲覧。
  24. ^ トルコ大統領、中国非難から一転「ウイグルの人々は幸せに暮らしている」” (2019年7月3日). 2019年7月13日閲覧。
  25. ^ China says Turkey president offered support over restive Xinjiang” (2019年7月2日). 2019年7月14日閲覧。
  26. ^ Erdogan says Xinjiang camps shouldn't spoil Turkey-China relationship”. CNN (2019年7月5日). 2019年7月14日閲覧。
  27. ^ 国連、ウイグル問題で攻防 欧米日本など23カ国「拘束停止を」 中国支持派は54カ国 ”. 産経ニュース (2019年10月30日). 2019年11月1日閲覧。
  28. ^ ウイグル族を対象とする強制収容所は「学校」なのか、刑務所なのか?写真や映像を含むBitter Winter独占リポート - ニュース” (日本語). Bitter Winter (日本語) (2018年11月15日). 2018年12月25日閲覧。
  29. ^ マッシモ・イントロヴィーニャ (2018年11月26日). “最新の独占映像:新疆のウイグル族を対象にしたもう一つの「教育による改心」のための強制収容所の実態 - ニュース” (日本語). Bitter Winter (日本語). 2018年12月25日閲覧。
  30. ^ マッシモ・イントロヴィーニャ (2018年12月12日). “イェンギイェルの「教育による改心」のための強制収容所はまるで刑務所だ - ニュース” (日本語). Bitter Winter (日本語). 2018年12月25日閲覧。
  31. ^ Ma, Alexandra. “Shocking footage purportedly shows cells inside prison camp where China oppresses Muslim minority”. Business Insider. 2018年12月25日閲覧。

関連項目編集