北九州港

日本の福岡県北九州市にある港湾
新門司港から転送)

北九州港(きたきゅうしゅうこう)は、福岡県北九州市にある港湾である。西日本最大規模のフェリーターミナルを擁するなど、神戸港以西における主要な物流拠点として、国際拠点港湾中枢国際港湾に指定されている[1]。また、福岡県によって防災拠点(防災拠点港)に指定されている[2]

北九州港
門司港地区
門司港と関門橋
旧門司税関
大正時代の若松駅と若松港
門司港地区, 門司港と関門橋,
旧門司税関, 大正時代の若松駅と若松港
北九州港の位置(日本内)
北九州港
北九州港の位置(福岡県内)
北九州港
北九州港の位置(アジア内)
北九州港
北九州港の位置(太平洋内)
北九州港
北九州港の位置(福岡県内では新門司港の位置を示す)
所在地
日本の旗 日本
所在地 福岡県北九州市
座標 北緯33度52分50秒 東経130度59分20秒 / 北緯33.88056度 東経130.98889度 / 33.88056; 130.98889 (北九州港)座標: 北緯33度52分50秒 東経130度59分20秒 / 北緯33.88056度 東経130.98889度 / 33.88056; 130.98889 (北九州港)
詳細
管理者 北九州市

港湾別海上出入貨物取扱量は日本国内第5位(2021年速報値)[1]、世界第49位(2020年)[3]。コンテナ取扱貨物量は国内第9位(2021年速報値)[4]

港湾管理者は北九州市港湾空港局である[1]港則法上は対岸の下関港とともに一つの港湾である「関門港」として特定港に指定されている[5]が、管理は一元化されておらず、港湾法上の港湾区域は各港が別個の港湾として扱われている[6]#関門港と北九州港を参照)。

歴史 編集

新門司地区や響灘地区での港湾整備、門司港西海岸の再開発が始まる。

港勢 編集

面積
取扱貨物量
  • 外貨 31,783千トン
    • 輸出 7,329,809トン
    • 輸入 24,453,530トン
  • 内貨 77,940千トン
    • 移出 39,627,732トン
    • 移入 38,312,882トン
  • 合計 109,723千トン(2006年度 国内第4位の取扱貨物量)
コンテナ取り扱い(個数)
  • 外貨 400,413TEU
    • 輸出 212,583TEU
    • 輸入 187,830TEU
  • 内貨 68,537TEU
    • 移出 25,509TEU
    • 移入 43,028TEU
  • 合計 468,950TEU(2006年度)
入港船舶数
  • 内航船68,049隻
  • 外航船5,009隻
  • 合計73,058隻(2006年度)

主な施設 編集

門司港地区 編集

 
関門汽船「ふぇありぃ2号」
 
門司港湾合同庁舎

門司港地区は、明治から戦前にかけ外国貿易の港として発展した地区であることから、港湾関係の主要機関が設置されている。

西海岸 編集

周辺地区は、門司港地区発展の証である歴史的建造物を生かした観光スポット(門司港レトロ)になっている。付近には「門司港湾合同庁舎」(地上10階建)があるほか、北九州市港湾空港局門司庁舎も近接している。

下関(唐戸)港・巌流島(唐戸経由)への航路のほか、遊覧船門司港レトロクルーズが運航されている。

太刀浦コンテナターミナル 編集

 
太刀浦コンテナターミナル
 
太刀浦コンテナターミナルのガントリークレーン

関門海峡出口の企救半島北端に位置する西日本有数のコンテナターミナル。水深 -12 mの第一コンテナターミナルと水深 -10 mの第二コンテナターミナルからなり、両ターミナルあわせて、計7基のガントリークレーンがある。主な外航定期コンテナ船航路は、中国韓国台湾を中心としたアジア航路である。2008年9月の月間便数は、月177便。

人工の埋立地ではあるが、事実上の九州本島最北端の地となっている。但し、船員などを除き、一般人の進入は禁止されている。九州地方全体としては、長崎県対馬市の三ツ島(無人島)が九州最北端の地である。

田野浦埠頭 編集

以前は、田野浦コンテナターミナルであったが、2004年から「田野浦自動車物流センター」に再整備され、主に中古車を輸出する埠頭となっているほか、輸出精密機器を扱うために民間が整備したクリーンルーム付きの専用上屋が立ち並ぶ。このほか、関門九州青果センター(通称「バナナセンター」)がある。

新浜 編集

飼料原料の取扱いを中心とした埠頭。

新門司地区 編集

 
新門司フェリーターミナル(阪九フェリー第1ターミナル)

新門司地区瀬戸内海周防灘)に面する地区である。九州自動車道新門司インターチェンジに近く、九州の陸路と瀬戸内海を結ぶ重要な港湾となっている。また、北東の一角にヨットハーバー新門司マリーナが整備されている。

埠頭周辺には工業団地が造成されており、エステーや古河電工産業電線の工場がある。マリナクロス新門司地区では、国内10検疫場の中で最大規模となる農林水産省動物検疫所門司支所新門司検疫場や、トヨタ輸送新門司自動車物流センターなどの大規模施設がある。

一帯は、沖合にある北九州空港とあわせて陸・海・空の物流拠点となっている。

新門司フェリーターミナル 編集

近畿地方関東地方へのフェリーが乗り入れる。新門司北1丁目に阪九フェリー2棟とオーシャントランスの計3棟のターミナル、約1.5km南西の新門司1丁目に名門大洋フェリーのターミナル1棟、海側の新門司北3丁目(津村島緑地南側)に東京九州フェリーのターミナル1棟が位置する。

  • 旅客定期航路
    • - 泉大津港フェリーターミナル(阪九フェリー 第2ターミナル利用)
      • フェリーの煙突をモチーフとしたターミナルビル。
      • 無料送迎バス:新門司港 - JR門司駅 - 小倉駅 ※下り便到着時は門司駅まで。
      • 西鉄バス北九州(有料) 新地バス停より約1.8km。
    • - 神戸港 六甲アイランドフェリーターミナル(阪九フェリー 第1ターミナル利用)
      • 「東西文化の交通の結節点」をイメージし平城京の大極殿をモチーフとしたターミナルビル[9]
      • 無料送迎バス:新門司港 - JR門司駅 - 小倉駅
      • 西鉄バス北九州(有料) 畑バス停または新地バス停より約2km。
    • - 大阪南港フェリーターミナル(名門大洋フェリー
      • 無料送迎バス:新門司港 - JR門司駅 - 小倉駅
      • 西鉄バス北九州(有料) 二十田バス停より約1.6km。
    • - 徳島港フェリーターミナル - 東京港フェリーターミナル(オーシャン東九フェリー
      • 送迎タクシー(有料):新門司港 - JR門司駅
      • 西鉄バス北九州(有料) 畑バス停または新地バス停より約2.2km。
    • - 横須賀港フェリーターミナル(東京九州フェリー
      • 無料送迎バス:新門司港 - JR門司駅 - 小倉駅

小倉地区 編集

 
小倉地区
 
松山・小倉フェリー「フェリーくるしま」(写真はフェリーさんふらわあ時代のもの)
 
関門海峡フェリー「フェリーふく彦」

日本製鉄八幡製鐵所小倉地区を中心とした工場群、大小の物流施設群と中、近距離の旅客航路があるなどバラエティーに富んだ港である。

砂津埠頭・浅野埠頭 編集

JR小倉駅北口一帯(浅野)周辺。北九州国際会議場西日本総合展示場、国土交通省九州地方整備局関門航路事務所がある。

浅野フェリー埠頭より松山港への航路のほか、響灘の離島である馬島、藍島への渡船が運航されている。

日明埠頭 編集

小倉都心部に比較的近い埠頭。北九州市中央卸売市場のほか、大小の物流施設が立地している。ヤマト運輸小倉西港営業所、福山通運北九州支店、九州西濃運輸北九州支店、久留米運送北九州支店がある。

かつては「小倉コンテナターミナル」があったが、「ひびきコンテナターミナル」開設後に廃止された。

かつては長距離フェリー航路(阪九フェリーオーシャン東九フェリー)のターミナルとして使用されていたが、1995年以降、全ての航路が新門司地区に移転している。他に下関港(彦島荒田港)との間を結ぶ旅客フェリー(関門海峡フェリー)のターミナルでもあったが、これは航路自体が2011年11月30日限りで休止となった。現在は小倉航路の藍島発1便が搭載荷物を下ろすために寄港しているが乗客の乗下船はできない。

高浜埠頭 編集

砂利ばら積みを取り扱う埠頭。

洞海地区 編集

 
洞海湾の下をくぐる若戸トンネル(戸畑側より)

日本初の近代製鉄所である新日本製鐵(現・日本製鉄八幡製鐵所の操業により、工業港として洞海湾一帯に発展した地区である。地区内の多くの埠頭が工業港として使用されている。

また、若松港は筑豊炭田石炭積出港として整備され、1913年(大正2年)には全国の石炭産出量2130万tのうち筑豊炭田は1150万tで、その80%が若松港から積み出されており、日本一の石炭積出港であった。しかし、エネルギー革命により、筑豊炭田の閉山が相次ぎ、1982年(昭和57年)鉄道貨物取扱いは廃止され、貯炭場および若松機関区跡地は「久岐の浜シーサイド」としてマンションが建設された。

なお、同地区に立地する日本製鉄八幡製鐵所日鉄ケミカル&マテリアル九州製造所、三菱ケミカル黒崎事業所等の大規模な工場はそれぞれの敷地内に専用埠頭を備えている。

2012年9月15日、若松区と戸畑区の間に若戸トンネル(車両通行を目的としたものでは九州初の沈埋トンネルによる海底トンネル)が開通した。

2019年に若松埠頭付近の「若松港築港関連施設群」は石炭積出基地としての歴史により、土木学会選奨土木遺産に選ばれる[7]

  • 同地区にある(公共)埠頭
    • 戸畑(川代)埠頭 - 突堤中央部が若戸トンネルの入口になっている。
    • 堺川埠頭
    • 黒崎埠頭
    • 堀川埠頭
    • 北湊埠頭
    • 二島埠頭
    • 若松埠頭 - かつては石炭が扱われていたが、現在は船舶を係留する埠頭になっている。
 
若戸渡船
  • 旅客定期航路
    • 戸畑渡場 - 若松渡場(北九州市営若戸渡船
  • 同地区にある港湾関連の出先機関
    • 門司税関戸畑支署
    • 門司税関若松出張所
    • 若松海上保安部
    • 国土交通省九州運輸局福岡運輸支局若松海事事務所

響灘地区 編集

響灘地区は、北九州港の中では新しく整備されている地区である。近年、製造業、物流業そして環境関連企業などの進出が著しい。

響灘南埠頭・響灘東埠頭 編集

響灘西地区 編集

ひびきコンテナターミナル 編集

日本海側では国内唯一の水深 -15 m岸壁2バース(700m)が整備されている。2005年の開港以降、オーバーパナマックス型ガントリークレーン計3基と、トランスファークレーン計7基が稼働中。

2008年9月の月間航路数は、4航路。また月間便数は、月16便が就航している。

関門港と北九州港 編集

北九州港は港則法上、対岸の下関港とともに一つの港湾である「関門港」として特定港に指定されている[5]一方、港湾管理者はそれぞれ北九州市港湾空港局、下関市港湾局と別々で、港湾法上の港湾区域も各港が別個の国際戦略港湾として扱われている[6]

港湾区域の名称 編集

北九州港を構成する区域には、明治開港以来の横浜・神戸と並ぶ3大国際貿易港である門司港、小倉市の商業集積を背景として内易商港として発展した小倉港、水産基地かつ八幡製鉄所戸畑地区の専用港湾としての役割を有した戸畑港、同じく八幡製鉄所の立地から発展した八幡港筑豊炭田の積み出し港として栄えた若松港の5港が独自に開設され、対岸の下関港と併せて各港の港勢拡大とともに連続した港湾区域を形成していった経緯がある[10]

戦時体制下において1940年(昭和15年)、下関港・門司港・小倉港の3港が統合され「関門港」として重要港湾に指定[10]。さらに戸畑港・八幡港・若松港の洞海湾3港も1942年(昭和17年)に「関門港」へ統合されたが、戦後港湾法の施行により下関港・門司港・小倉港・洞海港の4港体制となった[10]

4港の関係自治体である山口県・福岡県・北九州5市・下関市の2県6市は、再度「関門港」としての一元管理を目指したが実現せず、4港それぞれの管理体制が存続、北九州5市の合併に伴い門司港・小倉港・洞海港の3港のみ「北九州港」として合併し、両岸2港の体制となった[10]

民間海運業界においては下関・門司・小倉の3地区を「関門港」と呼称し洞海港と区分する場合があるほか、国際的な海運業界においては「Port of Moji」「Port of Yawata」と区分され、下関港は門司の一部として「Port of Moji (including Shimonoseki)」と表記されていた[10]ひびきコンテナターミナルの開業後、北九州市港湾空港局は対外的に「Moji Port, Hibiki Port」と併記する呼称を用いており、国際船舶の運航スケジュール等においても「Moji」と「Hibiki」の2港として扱われている[11]

姉妹港・友好港 編集

ロジスティクス・パートナー港 編集

脚注 編集

  1. ^ a b c 北九州港の概要”. 北九州市港湾空港局. 2023年9月16日閲覧。
  2. ^ 南海トラフ地震に対応した四国の広域的な海上輸送の継続計画”. 国土交通省. 2023年11月11日閲覧。
  3. ^ 世界の港湾取扱貨物量ランキング”. 国土交通省. 2023年9月18日閲覧。
  4. ^ 港湾別コンテナ取扱貨物量(TEU)ランキング”. 国土交通省. 2023年9月18日閲覧。
  5. ^ a b 特定港一覧”. 海上保安庁 (2022年3月25日). 2023年9月12日閲覧。
  6. ^ a b 港湾数一覧、国際戦略港湾、国際拠点港湾及び重要港湾位置図”. 国土交通省 (2023年4月1日). 2023年9月12日閲覧。
  7. ^ a b 土木学会 令和元年度選奨土木遺産 若松港築港関連施設群”. www.jsce.or.jp. 2022年6月9日閲覧。
  8. ^ a b 報道発表資料:洋上風力発電の基地となる港湾を初指定 - 国土交通省”. www.mlit.go.jp. 2021年8月7日閲覧。
  9. ^ 長距離フェリー50年の航跡SHKライングループの挑戦(ダイヤモンド社)225頁
  10. ^ a b c d e 畑中汪 (1968-04). “北九州港の管理と広域港湾への構想”. 港湾 (日本港湾協会) 45 (485): 29-32. 
  11. ^ Port of KITAKYUSHU”. 北九州市港湾空港局. 2023年9月12日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集