日本奥地紀行』(にほんおくちきこう、英語Unbeaten Tracks in Japan)は、イザベラ・バード日本旅行記である。通訳伊藤鶴吉が務めた[1]

『日本奥地紀行』
(にほんおくちきこう)
Unbeaten Tracks in Japan
著者 イザベラ・バード
訳者 高梨健吉楠家重敏橋本かほる宮崎路子高畑美代子時岡敬子金坂清則
発行日 イギリスの旗1880年1885年
発行元 日本の旗1973年2000年2002年2008年2012年
ジャンル 旅行記
イギリスの旗 イギリス
言語 英語
コード ISBN 4-582-80240-0
ISBN 4-582-76329-4
ISBN 4-8419-0295-3
ISBN 978-4-89514-296-0
ISBN 978-4-06-159871-3
ISBN 978-4-06-159872-0
ISBN 978-4-582-80819-3
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1878年明治11年)6月から9月にかけて東京から北海道蝦夷地)までの旅行の記録で、明治維新当時の日本の地方の住居、服装、風俗、自然を細かく書き留めてあり、近代以前の日本の情勢を知ることのできる資料である。またアイヌに関する記述も豊富にある。

初版は1880年に2巻本として出版されたが、その後版を重ね、関西旅行の記述その他を省略した1885年版が出版された。


概要編集

日本人の印象編集

私が日本人と話をかわしたり、いろいろ多くのものを見た結果として、彼らの基本道徳の水準は非常に低いものであり、生活は誠実でもなければ清純でもない、と判断せざるをえないと記している[2]。 また日本人は子どもに対して全く強い愛情をもっているが、ヨーロッパの子どもが彼らとあまり一緒にいることは良くないことであるとし、彼らは風儀を乱し、嘘をつくことを教えるからだとも記している[3]

日本人の外見について編集

日本人を小柄で、醜くしなびて、がにまたで、猫背で、胸は凹み、貧相だが優しそうな顔をした連中と形容し[4]、 西洋の服装をすると、とても小さく見える。どの服も合わない。日本人のみじめな体格、凹んだ胸部、がにまた足という国民的欠陥をいっそうひどくさせ[5]、日本人の黄色い皮膚、馬のような固い髪、弱弱しい瞼、細長い眼、尻下がりの眉毛、平べったい鼻、凹んだ胸、蒙古系の頬が出た顔形、ちっぽけな体格、男たちのよろよろした歩きつき、女たちのよちよちした歩きぶりなど、一般に日本人の姿を見て感じるのは堕落しているという印象を受けている[6]

日本人の服装について編集

農家にて、堆肥の山を崩して、それを裸足で踏みながらどろどろにする作業に従事していた女たちが、仕事中はみな胴着とズボンをつけているが、家にいるときは短い下スカートをつけているだけであり、何人かりっぱな家のお母さん方が、この服装だけで少しも恥ずかしいとも思わずに、道路を横ぎり他の家を訪問している姿を私は見たと記している[7]

日本人の行儀作法編集

おいしい御馳走であることを示すため、音を立てて飲んだり、ごくごくと喉を鳴らしたり、息を吸いこんだりすることは、正しいやり方となっており、また作法でもそのようにときびしく規定しており、これはヨーロッパ人にとって、まことに気の滅入ることであり、もう少しで笑い出すところであったとしている[8]

日本語訳書編集

  • 『日本奥地紀行』高梨健吉訳、平凡社東洋文庫 240〉、1973年1月。ISBN 4-582-80240-0 ワイド版2006年11月 - 1885年版の翻訳。
  • 『バード日本紀行』楠家重敏橋本かほる宮崎路子訳、雄松堂出版新異国叢書 第3輯 3〉、2002年8月。ISBN 4-8419-0295-3  - 1885年版で削除された主要部分の翻訳。
  • 『イザベラ・バード「日本の未踏路」完全補遺』高畑美代子訳注、中央公論事業出版、2008年1月。ISBN 978-4-89514-296-0  - 1885年版で削除された主要部分の翻訳。
  • 『イザベラ・バードの日本紀行 上』時岡敬子訳、講談社講談社学術文庫〉、2008年4月。ISBN 978-4-06-159871-3http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1598716  - 1880年版からの全訳。
  • 『イザベラ・バードの日本紀行 下』時岡敬子訳、講談社〈講談社学術文庫〉、2008年6月。ISBN 978-4-06-159872-0http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1598724 
  • 『完訳 日本奥地紀行1 横浜―日光―会津―越後』金坂清則訳注、平凡社〈東洋文庫 819〉、2012年3月。ISBN 978-4-582-80819-3http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/browse.cgi?code=80_819  - 全4巻、1880年版完訳、綿密な注を施した版。
  • 『完訳 日本奥地紀行 2 新潟―山形―秋田―青森』金坂清則訳注、平凡社〈東洋文庫 823〉、2012年7月。
  • 『完訳 日本奥地紀行 3 北海道・アイヌの世界』金坂清則訳注、平凡社〈東洋文庫 828〉、2012年11月。
  • 『完訳 日本奥地紀行 4 東京―関西―伊勢 日本の国政』 金坂清則訳注、平凡社〈東洋文庫 833〉、2013年3月。
  • 『新訳 日本奥地紀行』金坂清則訳注、平凡社〈東洋文庫 840〉、2013年10月。- 1885年版の新訳。
  • 『日本奥地紀行 縮約版 対訳ニッポン双書』 英文リライト・ニーナ・ウェグナー/牛原眞弓訳、IBCパブリッシング、2017年4月

漫画版編集

原著編集

  • Isabella Lucy Bird (April 30, 2006). Unbeaten Tracks in Japan: The Firsthand Experiences of a British Woman in Outback Japan in 1878 (1885年版 ed.). Japan & Stuff Press. ISBN 4-9902848-0-1 
  • Isabella Lucy Bird (September 27, 2005). Unbeaten Tracks in Japan: An Account of Travels in the Interior Including Visits to the Aborigines of Yezo and the Shrines of Nikko (ハードカバー ed.). Kegan Paul. ISBN 0-7103-0884-1 
  • Isabella Lucy Bird (May 31, 2007). Unbeaten Tracks in Japan: An Account of Travels in the Interior Including Visits to the Aborigines of Yezo and the Shrines of Nikko (ペーパーバック ed.). Stone Bridge Press. ISBN 978-1-933330-19-8 
  • Isabella Bird (October 1, 2006). Unbeaten Tracks in Japan (ペーパーバック(拡大版) ed.). ReadHowYouWant.com. ISBN 1-425033-87-3 

脚注編集

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  1. ^ 鶴吉をモデルにした小説に中島京子 (作家)の『イトウの恋』がある。
  2. ^ イザベラ・バード(高梨健吉訳)『日本奥地紀行』平凡社東洋文庫,1973. [初出=1880年] 124頁。
  3. ^ イザベラ・バード(高梨健吉訳)『日本奥地紀行』平凡社東洋文庫,1973. [初出=1880年] 136頁。
  4. ^ イザベラ・バード(高梨健吉訳)『日本奥地紀行』平凡社東洋文庫,1973. [初出=1880年] 6-7頁。
  5. ^ イザベラ・バード(高梨健吉訳)『日本奥地紀行』平凡社東洋文庫,1973. [初出=1880年] 14頁。
  6. ^ イザベラ・バード(高梨健吉訳)『日本奥地紀行』平凡社東洋文庫,1973. [初出=1880年] 292頁。
  7. ^ イザベラ・バード(高梨健吉訳)『日本奥地紀行』平凡社東洋文庫,1973. [初出=1880年] 98頁。
  8. ^ イザベラ・バード(高梨健吉訳)『日本奥地紀行』平凡社東洋文庫,1973. [初出=1880年] 164頁。
  9. ^ マンガのくに】美しい時代(3)「美しい国」と「滅びゆく国」『読売新聞』朝刊2019年11月26日(文化面)

外部リンク編集