日本漫画家協会賞
日本漫画家協会賞(にほんまんがかきょうかいしょう)は公益社団法人日本漫画家協会が、日本漫画界の向上発展を図る目的のために、1972年に設立した賞である。
概要
編集全くの個人出版、展覧会等まで受賞対象を広く求め、漫画家が選考するため、ユニークな作品が選考されることがある。また、賞金は協会会員の会費より捻出し、業界等からの影響は一切受けない運営となっている。
また賞の枠組みに関して、2001年から大賞が一般的な長編のコミック部門、一コマ漫画などのカートゥーン部門の2枠に、2023年からはこの2つに区分できないジャンルの作品向けに、石ノ森章太郎が提唱した「萬画」を用いた萬画部門[1]を含めて3部門となっている。このほか優秀賞、特別賞、新人賞などがその時の候補によって臨機応変に決められている。
1990年から始まった文部大臣賞(2001年からは文部科学大臣賞)は、当時自民党の代議士で文部大臣であった西岡武夫とのつながりで生まれたもので、国民に広く愛された漫画を生んだ漫画家を対象に選考されている。現在受賞パーティーには文部省から事務方が大臣代理で出席するが、西岡はほぼ毎年招かれて出席している。西岡が参議院議長を務める2011年には参議院議長賞が新設された。2021年からは漫画文化の発展に取り組んでいる鳥取県・高知県に協会から提案したことで新設された両県の県知事賞として「まんが王国とっとり賞」「まんが王国・土佐賞」が贈られるようになっている[2][3]。
選考は漫画家、漫画評論家、漫画関係者(1名)の10 - 12名の選考委員により、その年の出版物・活動に対し受け付けた応募作品、推薦作品を対象におこなわれる。各委員による推薦理由のスピーチや議論と投票を交互に行って候補作をしぼり、2次から3次の投票によって、各賞が決定する。特別賞については、年により、次点の作品、奨励賞の意味合いをもつ作品、その年の漫画界への貢献大だった活動など様々である。
出版社等主催の他の漫画賞の選考対象にならない地味な作品や活動を拾い上げようとする意図と、純粋に作品の質だけを見ようとする意図とが交錯しあうが、多人数による無記名投票なので、特定の団体に利する意図の入り込む余地はない。
歴代受賞者リスト
編集第1回(1972年度)
編集第2回(1973年度)
編集第3回(1974年度)
編集第4回(1975年度)
編集第5回(1976年度)
編集第6回(1977年度)
編集第7回(1978年度)
編集第8回(1979年度)
編集第9回(1980年度)
編集- 大賞
(該当作なし)
第10回(1981年度)
編集- 大賞
(該当作なし)
- 優秀賞
第11回(1982年度)
編集- 大賞
(該当作なし)
- 優秀賞
- 選考委員特別賞
- 「『漫画少年史』の編さん」寺田ヒロオ
第12回(1983年度)
編集第13回(1984年度)
編集第14回(1985年度)
編集第15回(1986年度)
編集第16回(1987年度)
編集第17回(1988年度)
編集- 大賞
- 優秀賞89\
- 選考委員特別賞
- 『福祉マンガ・みんないいひと』秋竜山
第18回(1989年度)
編集- 大賞
(該当作なし)
第19回(1990年度)
編集- 大賞
- 優秀賞
- 文部大臣賞
- 「現在の漫画文化隆盛の礎を築いた全業績」手塚治虫
第20回(1991年度)
編集- 大賞
- 『CARTOON COLLECTION』FECO NIPPON
- 優秀賞
- 選考委員特別賞
- 『歌舞伎・文楽に寄せて』榎その
- 文部大臣賞
第21回(1992年度)
編集第22回(1993年度)
編集第23回(1994年度)
編集第24回(1995年度)
編集第25回(1996年度)
編集- 大賞
(該当作なし)
- 優秀賞
- 選考委員特別賞
- 『箱絵』泉ゆきを
- 文部大臣賞
第26回(1997年度)
編集第27回(1998年度)
編集- 大賞
(該当作なし)
第28回(1999年度)
編集第29回(2000年度)
編集- 大賞
(該当作なし)
- 優秀賞
- 選考委員特別賞
- 文部大臣賞
- 「一連の作品」小島功
第30回(2001年度)
編集第31回(2002年度)
編集第32回(2003年度)
編集第33回(2004年度)
編集第34回(2005年度)
編集- 大賞
- 特別賞
- 文部科学大臣賞
- 「全作品」藤子不二雄Ⓐ
第35回(2006年度)
編集- 大賞
- 特別賞
- 文部科学大臣賞
- 「全作品及び文化活動」里中満智子
第36回(2007年度)
編集- 大賞
- 優秀賞
- 特別賞
- 『2007 mamechan calendar』はまのゆか
- 「一連の活動に対して」さいたま市立漫画会館
- 文部科学大臣賞
- 「全作品」水島新司
第37回(2008年度)
編集- 大賞
- 優秀賞
- 特別賞
- 文部科学大臣賞
- 「全業績に対して」成瀬國晴
第38回(2009年度)
編集第39回(2010年度)
編集第40回(2011年度)
編集第41回(2012年度)
編集- 大賞
- 特別賞
- 「漫画文化への貢献に対して」京都国際マンガミュージアム
- 文部科学大臣賞
- 「全作品と活動に対して」竹宮惠子
第42回(2013年度)
編集第43回(2014年度)
編集- 大賞
- 優秀賞
- 特別賞
- 文部科学大臣賞
- 「展覧会『私の八月十五日』など」森田拳次
第44回(2015年度)
編集第45回(2016年度)
編集第46回(2017年度)
編集- 大賞
- 優秀賞
- 特別賞
- 「『フジ三太郎』ほか全作品」サトウサンペイ
- 文部科学大臣賞
- 該当なし
第47回(2018年度)
編集- 選考委員長:ちばてつや 選考委員:赤松健、原子力、天野誠、ヒサクニヒコ、小河原智子、弘兼憲史、門倉紫麻、山田ゴロ、くさか里樹、ヤマダトモコ、野谷真治、吉本浩二、はざま隆治[5]
- 大賞
- 優秀賞
- 特別賞
- 「日本漫画展」日本漫画の会
- 文部科学大臣賞
- 「全作品」永井豪
第48回(2019年度)
編集- 選考委員長:里中満智子 選考委員:倉田よしみ、タナカミノル、齋藤なずな、牧野圭一、竹宮惠子、安彦良和
- 大賞
- コミック部門:『あれよ星屑』山田参助
- カーツーン部門:『横田吉昭のカートゥーン』(自費出版)横田吉昭
- 優秀賞
- 特別賞
- 文部科学大臣賞
- 「全作品」バロン吉元
第49回(2020年度)
編集第50回(2021年度)
編集- 大賞
- コミック部門:『鬼滅の刃』吾峠呼世晴
- カーツーン部門:『NEW NORMAL!』ジョルジュ・ピロシキ
- まんが王国とっとり賞
- まんが王国土佐賞
- 『EYEMASK』
- 文部科学大臣賞
- 「起き上がりこぼしプロジェクト」
第51回(2022年度)
編集- 大賞
- コミック部門:『ゴールデンカムイ』(野田サトル)
- カーツーン部門:『丁寧な暮らしをする餓鬼』(塵芥居士)
- まんが王国とっとり賞
- まんが王国・土佐賞
- 文部科学大臣賞
第52回(2023年度)
編集- 大賞
- コミック部門:『SPY×FAMILY』(遠藤達哉)
- カーツーン部門:『風刺漫画で説く 女を待つバリア』(西田淑子)
- 萬画部門:『マガジンロンド』(マツオヒロミ)
- まんが王国とっとり賞
- まんが王国・土佐賞
- 文部科学大臣賞
第53回(2024年度)
編集- 大賞
- コミック部門:『かろりのつやごと』(小田ゆうあ)
- カーツーン部門:『TAKUPEDIA』(古川タク)
- 萬画部門:『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』(ナガノ)
- まんが王国とっとり賞
- 『龍とカメレオン』(石山諒)
- まんが王国・土佐賞
- 『去年の雪』(村岡栄一)
- 文部科学大臣賞
第54回(2025年度)
編集脚注
編集- ^ 日本漫画家協会賞大賞「萬画部門」新設のお知らせ,漫画家協会WEB,2023年4月10日
- ^ 日本漫画家協会賞に「まんが王国とっとり賞」新設,鳥取県公式ホームページ,2021年7月26日
- ^ 日本漫画家協会賞に「まんが王国・土佐賞」新設,高知県庁ホームページ,2021年7月26日
- ^ 日本漫画家協会 - 2017年度 第46回日本漫画家協会賞 発表 2017年05月09日
- ^ “「諸星大二郎劇場」「HITOKOMART」が第47回日本漫画家協会賞の大賞に”. コミック ナタリー (2018年5月7日). 2018年7月2日閲覧。
- ^ “「ゴールデンカムイ」「丁寧な暮らしをする餓鬼」が日本漫画家協会賞の大賞に”. コミックナタリー. ナターシャ (2022年5月20日). 2022年5月20日閲覧。
- ^ “日本漫画家協会賞、コミック部門大賞は「SPY×FAMILY」!今回から萬画部門を新設”. コミックナタリー. ナターシャ (2023年4月10日). 2023年4月11日閲覧。
- ^ “「かろりのつやごと」が日本漫画家協会賞のコミック部門大賞に、「ちいかわ」も受賞”. コミックナタリー. ナターシャ (2024年4月12日). 2024年4月12日閲覧。
参考資料
編集- 『100年後に残したい!マンガ名作』(日本漫画家協会監修、玄光社、2017年12月発行)
- 第1回(1972年度)から第46回(2017年度)までの「歴代受賞者ならびに受賞作品リスト」が掲載されている。