日産・キックス
キックス (XIX、KYXX、KIX、KICKS) は、日産自動車が1995年及び1998年に発表したコンセプトカー、2008年から2012年まで販売していた軽SUV、並びに2016年から生産・販売しているCUVである。
概要編集
1995年に発表されたコンセプトカーは、ノッチバックセダン型ピックアップトラックで、1998年に発表されたものはハッチバック型である。両者とも繋がりはなくアルファベット表記も異なる。
再び「キックス」の名が使われだしたのは約10年後の2008年だった。三菱自動車が生産販売していたパジェロミニのOEMとして復活したのである。これが初代に当たる。しかし2012年、パジェロミニの生産終了をもってキックスの生産・販売も終了した。
2代目は約4年後の2016年に登場。初代とは異なり自社製造でジュークとエクストレイルの中間のコンパクトクロスオーバーSUVとして海外で販売が開始された。特にエクステリアには、近年の日産のデザインアイデンティティである「Vモーション」を核に、V字型グリルやブーメラン型ヘッドライト、フローティングルーフなどを積極的に採り入れることで、力強さとスポーティーさを高次元で両立させている。
コンセプトカー編集
キックス(XIX)(1995年)編集
日産・キックス(1995年のコンセプトカー) | |
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乗車定員 | 5名 |
ボディタイプ | 4ドア マルチパーパスセダン |
エンジン | SR20DE型 1,998cc |
駆動方式 | フルタイム4WD |
最高出力 | 150ps/6,400rpm |
最大トルク | 19.0kgm/4,800rpm |
変速機 | OD付き4速AT |
サスペンション |
前:独立懸架ストラット式 後:独立懸架パラレルリンクストラット式 |
全長 | 4,650mm |
全幅 | 1,695mm |
全高 | 1,500mm |
ホイールベース | 2,580mm |
-自動車のスペック表- |
第31回東京モーターショーに出展されたコンセプトカー。使い慣れた道具のようにガンガン使えるクルマというコンセプト打ち出しており、特徴は、広く使い勝手を重視したビッグトランク。2mくらいの長尺ものも運べるとされている。
キックス(KYXX)(1998年)編集
日産・キックス(1998年のコンセプトカー) | |
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デザイン | Carsten Aengenheyster(日産デザインヨーロッパ ミュンヘンスタジオ、NDE) |
ボディタイプ | 5ドア ハッチバック |
エンジン | 4気筒 コモンレール式直噴ターボディーゼル |
最高出力 | 80HP |
最大トルク | 18mkg |
全長 | 3,650mm |
全幅 | 1,680mm |
全高 | 1,480mm |
ホイールベース | 2,550mm |
-自動車のスペック表- |
パリ国際モーターショーに出展されたコンセプトカー。アルファベット表記は「KYXX」。本モデルは作成に約10ヶ月を要した。このパワーユニットは3.0L/100km(78mpg)の燃費を可能にすることを目的として開発された。また、「Nissan's M-fire Combustion System」と呼ばれるモジュール式燃焼システムを採用している。さらにこのエンジンは2005年に欧州にて導入されるCED4に完全に準拠している。またシャシーはマーチをベースとしており、当時29歳のCarsten Aengenheysterがデザインを担当した。
初代 PA0(H59A)型 (2008年 - 2012年)編集
日産・キックス(初代) PA0(H59A)型 | |
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フロント RX リア RX フロント RS | |
販売期間 | 2008年10月 – 2012年8月 |
デザイン | 加藤顕央(商品企画本部商品企画室セグメントチーフプロダクトスペシャリスト) |
乗車定員 | 4名 |
ボディタイプ | 3ドアSUV |
エンジン | 4A30型 659cc 直4 SOHC16バルブICターボ |
駆動方式 | イージーセレクト4WD |
最高出力 | 64ps/6,000rpm |
最大トルク | 9.0kg・m/4,000rpm |
変速機 | フルレンジ電子制御4速AT / 5速MT |
サスペンション |
前:独立懸架ストラット式 後:5リングコイルスプリング式 |
全長 | 3,395mm |
全幅 | 1,475mm |
全高 | 1,635mm |
ホイールベース | 2,280mm |
車両重量 | 970-980kg |
製造事業者 | 三菱自動車工業 |
姉妹車/OEM |
三菱・パジェロミニ(2代目) ※OEM供給元 |
-自動車のスペック表- |
- 2008年2月27日
日産は同年秋頃に三菱自動車から軽自動車「パジェロミニ」のOEM車両の供給を受けることを発表。
- 2008年9月30日
車名を「キックス (KIX) 」と発表[1]。
- 2008年10月30日
三菱自動車よりH58型パジェロミニ後期型のOEM供給を受けて販売開始。テレビCMは野沢雅子がナレーターを務め、ウクライナのキエフで撮影された。キャッチコピーは「すべての道を走りつくせ! 日産ミニ四駆 KIXデビュー!」。CMオリジナル曲は「NISSAN MINI 4WD」。
日産ではモコ(2002年4月発売)、クリッパーバン/クリッパートラック(2003年10月発売)、オッティ(2005年6月発売)、ピノ(2007年1月発売)、クリッパーリオ(2007年6月発売)に次ぐ、7車種目の軽自動車となり、キックスの発売により、「日産の軽」ラインアップが軽ボンネットバンタイプを除きほぼ一通りそろうことになった。
グレード構成はベーシックな「RS(パジェロミニの「ZR」相当)」と上級グレードの「RX(パジェロミニの「VR」相当)」の2グレードで、いずれも5速MT車と4速AT車がラインアップされている。2代目・前期型エクストレイルを彷彿とさせる専用フロントグリルが与えられている。また、ボディカラーはチタニウムグレーメタリック(キックス専用色、当初はミディアムグレーメタリック)、デニムブルーパール、ラズベリーレッドパール(当初はレッド)、クールシルバーメタリック、ブラックパール、ホワイトパール3コートパール(キックス専用色)の6色展開。
パジェロミニとの違いは、外観ではフロントフェイスやスペアタイヤハーフタイプハードカバー等。メカニズム面ではFR車(「XR」系)や最上級グレード (「EXCEED」)、「VR」にカーナビを標準装備にした「NAVI EDITION VR」相当のラインナップの有無。ボディカラーでは2トーンカラーや3ウェイ2トーンカラーの有無が挙げられる。
位置付けとしては、ムラーノ(2002年11月発売)、デュアリス(2007年3月発売)、エクストレイル(2000年11月発売)などの弟。
- 2010年8月18日
パジェロミニの一部改良を受け、仕様変更。低燃費運転をサポートするECOインジゲーターを新たに追加。また、ボディカラーを見直し、ミディアムグレーメタリックとレッドを廃止し、替わってチタニウムグレーメタリックとラズベリーレッドパール(特別外板色)を追加した[2]。
- 2012年6月
パジェロミニの生産終了に伴い、キックスも在庫のみの販売となった。
- 2012年8月
販売終了。ホームページの掲載も終了した。
2代目 P15型(2016年 - )編集
デザインチームは日本の「日産グローバルデザインセンター(NGDC)」によって立ち上げられ、その後、アメリカの「日産デザインアメリカ(NDA)」とブラジルの「日産デザインアメリカリオ(NDA-R)」が合流し、3部門の共同作業によって進められた。
日産・キックス(2代目) P15型 | |
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フロント(中国仕様) リア(中国仕様) | |
製造国 |
ブラジル メキシコ 中国 マレーシア 台湾 |
販売期間 | 2016年8月 - |
デザイン |
日産グローバルデザインセンター(NGDC) 日産デザインアメリカ(NDA) 日産デザインアメリカリオ(NDA-R) |
ボディタイプ | 5ドアクロスオーバーSUV |
エンジン |
HR16DE型 1,598cc 直4(ブラジル仕様) HR15DE型 1,498cc 直4(中国仕様) |
駆動方式 | FF |
最高出力 |
84 kW (114 hp) / 5,600rpm(ブラジル仕様) 91 kW (124 hp) / 6,300rpm(中国仕様) |
最大トルク |
152 N・m / 4,000rpm(ブラジル仕様) 147 N・m / 4,400rpm(中国仕様) |
変速機 | ジヤトコ製エクストロニックCVT / 5速MT |
全長 | 4,295mm |
全幅 | 1,760mm |
全高 | 1,590mm |
ホイールベース | 2,610mm |
車両重量 |
1,109-1,136kg(ブラジル仕様) 1,122-1,164kg(中国仕様) |
プラットフォーム | Vプラットフォーム |
-自動車のスペック表- |
- 自動車衝突安全テスト
機関 | 国 | 試験年 | 評価 | 備考 |
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Latin NCAP | ウルグアイ | 2017年 |
|
最高評価は★★★★★である。 |
C-NCAP | 中国 | 2017年 | ★★★★★ | 最高評価 |
IIHS | アメリカ | 2018年 |
|
評価は上から「優」「良」「可」「不可」 |
IIHS | アメリカ | 2019年 |
|
評価は上から「優」「良」「可」「不可」 |
- 2012年10月
サンパウロモーターショー2012にて、コンセプトモデル「エクストレム(EXTREM)」を発表。
- 2014年10月28日
サンパウロモーターショー2014にてエクストレムをより市販向けに近づけた「キックス・コンセプト(KICKS CONCEPT)」を発表[3]。
- 2015年2月13日 - 2月18日
ブラジル・リオデジャネイロのサンバ・カーニバルにおいて、コンパクトSUVスタイルの新コンセプトモデル 「キックス・サンバ・コンセプト(Kicks Samba Concept )」を披露[4]。
- 2016年4月14日
エンジン制御用コントロールユニット(ECU)およびラジエーターファンモーターに不具合があるとして三菱自動車は国土交通省にリコール(回収・無償修理)を届け出た。対象となるのは、三菱自動車の3車種と、先代PA0型キックス、クリッパー、クリッパーリオの計6車種で、2002年8月8日から2013年12月27日に製造された12万4419台[5]。
- 2016年5月2日
リオデジャネイロにて市販仕様の「キックス」を発表[6]。
- 2016年5月3日
リオデジャネイロオリンピック/リオデジャネイロパラリンピックの聖火リレーにて初披露されたと同時に、同オリンピックのオフィシャルカーとして採用されることも発表、なお販売予定を2016年8月と発表。
- 2016年8月5月
ブラジルのリオデジャネイロで、コンパクトな新型クロスオーバーの『キックス』を発売(ただしアルファベット表記は「KICKS」)。16年度後半には他の南米諸国でも販売する。将来は世界80か国以上に投入する計画である。なお車格については、ジュークとエクストレイルの中間である。競合車種については国産車だとホンダ・ヴェゼル、スズキ・SX4 S-クロス、欧州車だとダチア・ダスター、プジョー・2008、フィアット・500X、アメリカ車だとジープ・レネゲード、フォード・エコスポーツ、シボレー・トラックス、アジア系だとヒュンダイ・クレタ、キア・ソウルがある。
- 2017年4月19日
上海国際モーターショーにて中国初公開[7]。
- 2017年5月
中国市場での販売を開始(中国名:勁客)。
- 2017年11月29日
ロサンゼルスオートショー2017にて米国市場に導入することを発表。ポジションについてはジュークの後継。2018年モデルのグレード体制は3種類で、「S」、「SV」、「SR」となっている。カラーについては5種類の2トーンを含む7通りを用意[8]。アメリカ国内での発売は2018年春と告知される。
- 2017年12月1日 - 12月10日
ロサンゼルスオートショー2017開催。
- 2018年5月
カナダでの販売開始。
- 2018年6月
アメリカでの販売が開始される。それに伴いジュークは北米市場から完全撤退。価格は廉価モデルの「S」で17,990ドル、最上級モデルの「SR」でも20,290ドル(2018年6月現在)と、アメリカ市場における日産製SUVのエントリーモデルという位置付けを担っている[9]。
- 2018年11月7日
台湾での発売が開始。中国仕様が導入され、価格は725,000台湾ドルから(CM公開は11月6日から)。
- 2019年1月22日
インド仕様が発売される。詳細は下記を参照。
- 2019年2月28日
サーフィンをテーマにしたコンセプトモデル「キックスサーフ・コンセプト」が登場。企画には数々の優勝経験を持つプロサーファー、アレホ・ムニーツとサンチャゴ・ムニーツが参加している。ボディーカラーはラテンアメリカを意識したブルーグリーンとイエローの2トーンで、サイドには波をイメージしたグラフィックがある。このブルーグリーンにはいくつかのトーンが含まれ、これは「表情を変える海」をイメージしたとのこと[10]。
年 | 米国 |
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2017 | 0 |
2018 | 23,312[11] |
インド仕様車 P16型(2019年-)編集
日産・キックス(2代目 インド仕様) P16型 | |
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製造国 | インド |
販売期間 | 2019年1月 - |
ボディタイプ | 5ドアクロスオーバーSUV |
エンジン |
H4K型 1.5L(ガソリン) K9K型 1.5L(ディーゼル) |
最高出力 |
106 ps(ガソリン) 110 ps(ディーゼル) |
最大トルク |
142 N・m(ガソリン) 245 N・m(ディーゼル) |
変速機 | CVT / 6速MT |
全長 | 4,384mm |
全幅 | 1,813mm |
全高 | 1,590mm |
ホイールベース | 2,673mm |
プラットフォーム | B0プラットフォーム |
-自動車のスペック表- |
- 2019年1月22日
日産のインド子会社である日産モーター・インディアがニューデリーで発表・同日発売された。価格は995,000ルピー(約150万円)から。先に販売されたP15型に似たスタイリングだが、P15型よりも大型化されておりプラットフォームも日産のBプラットフォームをベースに開発されたダチアのプラットフォームを使用、これにより製造コストを削減している。
車名の由来編集
1995年のコンセプトカーの「XIX」は、「私、自分」を意味する「I」と「未知数、倍化」を意味する「X」をからめた造語。「乗る人自身の夢や楽しみが無限に広がるクルマ」となるような願いが込められている。またXIXにはローマ数字で「19」という意味もある。
1998年に開催されたパリモーターショーに出展されたコンセプトカーのアルファベット表記はKYXX。
初代の「KIX」とは、興奮や熱中を意味する「KICKS」と未知数を意味する「X」を組み合わせた造語で、乗る人すべてに軽快な走りとともに、刺激的な走りを提供したいという思いが込められている[12]。
2代目の「KICKS」は上記の意味(興奮や熱中)の他に英語圏のスラングで「靴」という意味もある。(地面などを)蹴る(=kick)という意味から派生した言葉で、どちらかというとスニーカーなどのラフな靴を指すことが多い[13]。さらに音楽用語として意味は「主として管楽器の失敗した音という意味があり、具体的にはクラリネットのリードミスで生じるキッという音である[14]。
その他編集
脚注編集
- ^ 日産自動車、新型軽乗用車の名称を「キックス」に決定
- ^ キックス 一部改良、ECOインジケーターを装備 - Response.jp、2010年8月18日
- ^ 【サンパウロモーターショー14】日産、キックス・コンセプト 初公開…小型クロスオーバーResponse.2014年10月29日(2016年5月5日 閲覧)
- ^ 日産、"サンバ"に基づいたカーニバルな「キックス サンバ コンセプト」を披露2015年02月28日
- ^ 【リコール】三菱 パジェロミニ ほか6車種12万台、エンジンECUなどに不具合2016年4月14日
- ^ 日産、ブラジルで8月発売の キックス を初公開 - Response.jp、2016年5月5日
- ^ 日産、中国で「キックス」、「ナバラ」、「Vmotion 2.0」を上海モーターショー2017で公開日産自動車ニュースルーム 2017年4月19日(2017年7月1日 閲覧)
- ^ 日産 キックス 米国導入…グローバル小型クロスオーバー - Response.jp、2017年11月30日
- ^ THE BRAND NEW 2018 NISSAN KICKS™ 2018年6月21日
- ^ いい加減に日本でも発売して!日産が大人気クロスオーバー「キックス」にプロサーファーとコラボした”サーフ・コンセプト”を設定 - Life in the FAST LANE. 2019年4月8日
- ^ https://nissannews.com/en-US/nissan/usa/releases/nissan-group-reports-december-2018-and-2018-calendar-year-u-s-sales
- ^ 日産|会社情報|企業情報ライブラリー|車名の由来 2019年4月8日
- ^ この英語単語「kicks」の使い方ご説明します! | 伝える英語
- ^ 音楽用語辞典
関連項目編集
- 日産自動車
- 日産自動車の車種一覧
- 三菱・パジェロミニ - 初代のOEMベース車。
- 日産・Vプラットフォーム
外部リンク編集
- Webカタログバックナンバー キックス
- NISSAN KICKSブラジル日産 公式サイト
- 日产劲客東風日産 公式サイト
- Discover the 2019 Nissan Kicks | Nissan USA北米日産 公式サイト