映像の世紀
『映像の世紀』(えいぞうのせいき)は、第二次世界大戦の戦後50周年とNHKの放送開始70周年、そして映像発明100周年記念番組と銘打たれて制作・放送されたドキュメンタリー番組である。NHKとアメリカABCの国際共同取材。
1995年3月から1996年2月にかけて、毎月第3土曜日(第1集を除く)にNHK総合テレビの「NHKスペシャル」にて放映された。全11集。初回放送から20年以上経っても「NHKスペシャル」の中で人気のある作品の一つである。
1999年には、日本の20世紀初頭から平成までの約100年の歩みを47都道府県別に編集した番組『日本 映像の20世紀』(1999年4月10日 - 2000年3月25日)が放送された。
概要編集
世界30か国以上のアーカイブから、収集した貴重な映像と回想録や証言等で20世紀を描いた番組である。山根基世のナレーションによる無駄のない淡々とした進行、メインテーマ「パリは燃えているか」を始めとする加古隆の手がけた音楽も、大きな反響を得た。回想録や証言を朗読する声の出演は青二プロダクションが担当している。
第1集は、19世紀終盤(1895年)に、世界で初めて上映された『工場の出口』の映像から始まるが、オープニングでは題名と伴に、英語で "The 20th Century"(20世紀)と表示され、番組の主題は20世紀に置かれている。NHKオンラインの英語版では、番組名が The 20th Century on Film と表記されており[1]、それとは表記が異なるがサウンドトラックにも同義の英題(後述)が添えられている。
このドキュメンタリーを制作するにあたっては、この1995年がNHK放送70周年・第二次世界大戦後50周年であるのに加え、フランスのリュミエール兄弟らが、現在の映写技術を確立した1895年から数えて100周年になることから、それに間に合わせようと、NHKの番組スタッフとアメリカABCの国際共同取材が、日本国内はもとより、世界各地から、20世紀の記録映像を5年以上にわたって収集、編集を行い、現代(1995年)の視点から、20世紀の記録を克明に映し出し、多くの反響が寄せられ、日本国内の戦後史を取り上げた『戦後50年・その時日本は』と並ぶ、戦後50周年・放送70周年の記念アーカイブ番組として親しまれた[2]。
再放送が1999年、2000年、2003年12月に行われたほか、歴史ドキュメンタリー専門チャンネルのヒストリーチャンネルにおいて2006年1月より毎月末に1シリーズずつ、2010年11月より、チャンネル銀河において毎週放送された。また、2015年10月には戦後70周年とNHK放送開始90周年を記念し、続編となる『新・映像の世紀』をNHKスペシャルの枠で放送することになり、そのプレ企画としてBS1で、20年前に放送した内容を再構成した『デジタルリマスター版映像の世紀』として、同年9月中の毎週土・日曜(9月13日、9月19日を除く)と、9月23日(秋分の日の水曜日)、2016年1月1日 - 1月2日に再放送された[3]。
1996年には日本IBMから放送を再構成したCD-ROM3作品(「新世紀の夜明け」「皇帝の終焉」「ヒトラーの野望」)が発売された(絶版)。映像のほか、写真・図版が収録された。 同年にはNHKソフトウェアからVHSソフト22巻が発売されたが、これは1話における内容自体が多いことを考慮し、本編部分を分割した上で前後編に再編集したためである。BOXには解説書が封入。
DVDは2000年にNHKソフトウェアからDVD-BOX全11集が、2005年にはNHKエンタープライズからシリーズ全11集に特別ディスクを収録した「SPECIAL BOX」として改めて発売され、DVD単巻も発売された(収録映像は、放送とは一部異なる)。2016年には後述のデジタルリマスター版がDVDとBlu-ray(いずれもBOX)で発売された。インターネットのNHKオンデマンドの「特選ライブラリー」で有料配信されていたが、2015年8月末を持って配信終了となり、以降はデジタルリマスター版が「特選ライブラリー」で順次有料配信されている。
全シリーズ編集
集数 | タイトル | 初回放送日 |
---|---|---|
第1集 | 20世紀の幕開け ~カメラは歴史の断片をとらえ始めた~ |
1995年3月25日 |
第2集 | 大量殺戮の完成 ~塹壕の兵士たちは凄まじい兵器の出現を見た~ |
1995年4月15日 |
第3集 | それはマンハッタンから始まった ~噴き出した大衆社会の欲望が時代を動かした~ |
1995年5月20日 |
第4集 | ヒトラーの野望 ~人々は民族の復興を掲げたナチス・ドイツに未来を託した~ |
1995年6月17日 |
第5集 | 世界は地獄を見た ~無差別爆撃、ホロコースト、そして原爆~ |
1995年7月15日 |
第6集 | 独立の旗の下に ~祖国統一に向けて、アジアは苦難の道を歩んだ~ |
1995年9月16日 |
第7集 | 勝者の世界分割 ~東西の冷戦はヤルタ会談から始まった~ |
1995年10月21日 |
第8集 | 恐怖の中の平和 ~東西の首脳は最終兵器・核を背負って対峙した~ |
1995年11月18日 |
第9集 | ベトナムの衝撃 ~アメリカ社会が揺らぎ始めた~ |
1995年12月16日 |
第10集 | 民族の悲劇果てしなく ~絶え間ない戦火、さまよう民の慟哭があった~ |
1996年1月20日 |
第11集 | JAPAN ~世界が見た明治・大正・昭和~ |
1996年2月24日 |
別巻 | - 歴史の舞台を廻る - | (オリジナルビデオ) |
- 第4集、第6集、第9集、第10集のタイトルは、第1集放送時には仮題「国家の狂気」「革命いまだならず」「超大国が揺らぎ始めた」「さまよえる民」として予告された。
デジタルリマスター版編集
映像素材を再収集・構成し、画質および音質のデジタルリマスターだけでなく、一部シーン・ナレーションの見直しや使用BGMの差し替え等が行われている。映像自体は4:3ピラーボックス(映像によりわずかに拡大することがある)だが、字幕テロップは16:9用に新しく入れ直され、フォントや表示位置、内容の一部が変更されている。
テーマ音楽「パリは燃えているか」についても、一部を除いて『新・映像の世紀』と共通の新バージョン(演奏・NHK交響楽団、指揮・下野竜也)に変更されている。
英語版編集
2016年から、NHKワールドTV内で「映像の世紀」と「新・映像の世紀」を再構成したものを、30分枠で英語で放送している。
アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所など、暴力的な映像も放映されるため、番組が始まる前に「18+」というテロップが流れる。
サウンドトラック編集
サウンドトラックは1995年10月21日にエピックソニーから発売された。タイトルは『NHKスペシャル「映像の世紀」』。なお都合上、収録しきれなかった曲は2000年10月12日に発売された『「パリは燃えているか」[注 1] NHKスペシャル「映像の世紀」オリジナル・サウンドトラック完全版』に収録されている。以下が収録作品。
- NHKスペシャル「映像の世紀」
- (英題:NHK Special The 20th Century in Moving Images Original Soundtrack)
- パリは燃えているか -メインテーマ-
- ザ・サードワールド
- 睡蓮のアトリエ
- シネマトグラフ I
- 大いなるもの、東方より
- 機械工場
- トルストイの手紙
- 新大陸に誘われて
- パリは燃えているか -宇宙篇-
- 時の刻印
- シネマトグラフ II
- はるかなる王宮
- パリは燃えているか -追憶篇-
- 「パリは燃えているか」 NHKスペシャル「映像の世紀」オリジナル・サウンドトラック完全版
- (英題:"Is Paris Burning" NHK special The 20th Century in Moving Images Original Soundtrack Complete)
- パリは燃えているか オープニング・テーマ
- 時の刻印 II
- 大いなるもの東方より II
- パリは燃えているか ピアノ・トリオ・ヴァージョン
- 最後の海戦
- 森は失われた
- パリは燃えているか オルガン・ヴァージョン
- ワン・ワールド
- 狂気の影
- パリは燃えているか オーケストラ・ショート・ヴァージョン
- シネマトグラフ III
- 最後の海戦II
- パリは燃えているか ブラス・ヴァージョン
- 未来世紀
- ザ・サード・ワールド II
- パリは燃えているか ジャズ・ヴァージョン
- 時の刻印 III
- 睡蓮のアトリエ II
- パリは燃えているか ピアノ・ソロ・ヴァージョン
このうちメインテーマ「パリは燃えているか」は高い評価を得て、『image』など他のCDにも収められている。また、ブエナビスタから発売されているドキュメンタリー『もののけ姫はこうして生まれた。』のBGMにも、この番組の音楽が多用されている。また、一部の音楽は『新・映像の世紀』においても引き続き使用されている。
スタッフ編集
制作統括編集
構成編集
音楽編集
ナレーション編集
- 山根基世 - NHKアナウンサー(当時)
声の出演(青二プロダクション)編集
脚注編集
注釈編集
出典編集
- ^ “Looking back at the 20th century, anticipating the 21st” (英語). 50 Years of NHK Television. NHK. pp. 31. 2009年9月27日閲覧。
- ^ NHKは何を伝えてきたか NHKスペシャル「映像の世紀」20世紀の本質を映し出す
- ^ 映像の世紀・デジタルリマスター版放送決定のお知らせ
関連項目編集
外部リンク編集
- 番組エピソード NHKスペシャル「映像の世紀」-NHKアーカイブス
- 映像の世紀SPECIAL-BOX全12枚セット - 『NHKエンタープライズ・ファミリー倶楽部』より