連続体力学において、有限変形理論(ゆうげんへんけいりろん;finite strain theory')は、物体(連続体)のひずみや回転が無限小ひずみ理論における前提では通用しないような deformationsである場合を扱う。本理論の対象となるような状態においては、連続体の状態は、変形の前後で大きく異なるので、変形前後を明確に区別する必要がある。対象としては、エラストマー塑性変形材料などの流体生物学で見られるような軟組織ケースである。有限変形理論は、物体の変形の理論の一つで、微小変形理論と並立する[1]。微小変形理論と比較して、現実の現象をより忠実に再現しようとする理論である。この理論を用いて行われるモデル化が大変形解析であり、地盤沈下の解析にこの理論を用いる場合、沈下量が大きくなるほど微小変形理論を用いた場合との差異が大きくなる[2]

変形(Displacement)編集

 
Figure 1. 連続体の運動

物体の変位は、剛体変位と変形の2つの要素から構成される。

  • 剛体変位は、形状や大きさを変えずに、並進(物理)や回転を組み合わせた変位である。
  • 変形は、初期状態(変形していない状態; )から現在の状態(変形した状態;  )へ形状や大きさが変化することを意味する(Figure 1)。

連続体の配置の変化は 変位場 によって記述することができる。変位場とは、物体中のすべての粒子の変位ベクトルを集めたベクトル場であり、変形後の配置と変形前の配置を関連づける。任意の2つの粒子間の距離は、変形が起こった場合にのみ変化する。変形を伴わない変位は剛体変位と呼ばれる。

物質座標 (ラグランジュ表記)編集

変数jでラベルされた粒子の変位は次のように表すことができる; 変形前の配置 と変形後の配置 における粒子の位置を結ぶベクトルをdisplacement vectorと呼ぶことにする。

 の代わりに を、 の代わりに を、いずれも座標系の原点から各点までのベクトルとして用いると、変位ベクトルのラグランジュ記述となる。即ち、

 

ここで、 は、空間座標系(lab-frame)をなす正規直交基底である。

物質座標で表すと(  を、 の関数として表すと)、変位場は次のようになる;

 

ここで、 は剛体の並進を表す変位ベクトルである。

変位ベクトルの物質座標に対する偏微分から物質変形勾配テンソル(material displacement gradient tensor 、以下のように求まる;

 

ここで は変形勾配テンソル(deformation gradient tensor)である。

空間座標(オイラー表記)編集

オイラー表記の連続体力学において、変形前の配置にある粒子 から変形後の配置の位置まで伸びるベクトルを変位ベクトル(displacement vector)と呼ぶ;

 

ここで、 は物質座標系(ボディフレーム)の基底を定める単位ベクトルの組である。

空間座標で表現すると(つまり、  の関数として)変位場は次のようになる;

 

変位ベクトルを空間座標に関して偏微分すると、空間変位勾配テンソル が得られる。

このようにして我々は、以下を得る。

 

物質座標系と空間座標系の関係編集

  は物質座標系の単位ベクトル と 空間座標系の単位ベクトル の間の方向余弦である。即ち、

 

   の関係は以下で与えられる。

 

以下を踏まえると、

 
以下を得る。
 

脚注編集

  1. ^ Insight. “1章 非線形解析における応力と歪”. 2022年9月6日閲覧。
  2. ^ 中川光雄 (2005年9月). “有限差分法コードFLAC 第6回 ~大変形解析(その1)~”. GEOSCIENCE RESEARCH LABORATORY. 2022年9月6日閲覧。