東京現像所
株式会社東京現像所(とうきょうげんぞうしょ、英: TOKYO LABORATORY LTD.)は、主に映画・テレビ番組の仕上げを行う映像ポストプロダクション。東宝の連結子会社で、阪急阪神東宝グループに属している。
種類 | 株式会社 |
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略称 | togen、東現 |
本社所在地 |
![]() 〒182-8555 東京都調布市富士見町2丁目13番地 北緯35度39分30.7秒 東経139度32分33.0秒 / 北緯35.658528度 東経139.542500度座標: 北緯35度39分30.7秒 東経139度32分33.0秒 / 北緯35.658528度 東経139.542500度 |
設立 | 1955年4月22日 |
業種 | 情報・通信業 |
法人番号 | 5012401008269 |
事業内容 | デジタルインターミディエイト・VFX・デジタルシネマ・放送番組編集・フィルム現像・フィルムスキャン・映像修復・非劇場型映画の配給・移動上映 |
代表者 | 代表取締役社長 矢部 勝 |
資本金 | 1000万円(2023年2月28日現在)[1] |
純利益 |
▲10億3932万8000円 (2023年2月28日時点)[1] |
総資産 |
18億9356万4000円 (2023年2月28日時点)[1] |
従業員数 | 105人 |
決算期 | 2月末日 |
主要株主 |
東宝 75.0% 三井住友海上火災保険 三井住友信託銀行 など (2015年5月8日現在) |
外部リンク | http://www.tokyolab.co.jp/ |
概要 編集
1955年、当時の日本でも高まりつつあったカラー映画の需要に応えるべく、東宝・大映・大沢商会・東和商事などの映画関係各社および藤山愛一郎らの出資により、映画用フィルムの現像所として設立された[2]。
当初より色彩技術の開発に重点がおかれ、その成果は1960年の大映『おとうと』(監督:市川崑、撮影:宮川一夫)において採用された銀残しと呼ばれる現像手法にも結実した(『おとうと』は1961年のカンヌ国際映画祭フランス映画高等技術委員会賞を受賞)。その他にも小津安二郎のカラー作品やオプチカル合成を駆使した東宝の特撮作品、松竹『男はつらいよ』、精緻な色調が日本国外では“キタノ・ブルー”とも呼ばれた北野武監督作などを手がけてきたことで知られる。
現在ではデジタルインターミディエイト、VFX、デジタルシネマなどの分野で日本国内外の映像作品に携わっている。また、テレビ普及期よりアニメーション番組との係わりが深く、今なお多くのアニメ番組クレジットタイトルでその社名を見ることができる。2016年からは、VFXセクションが「Digital Clover」(デジタルクローバー)と名乗って活動している。
外国映画の日本語字幕の制作も担当しているほか、コマーシャル撮影や映画撮影での需要が未だにあることからフイルム事業も継続しており、日本国内で8mmフィルム・16mmフィルム・35mmフィルムの映画フィルム現像が行える数少ない拠点のひとつである[2]。現像には、深大寺の湧き水を施設内のプールに溜めて使っている[2]。また、専用のスキャナーを使用したフィルムからのスキャニング技術が発達した近年では、黒澤明作品など旧作のデジタルリマスター作業も担当している[2]。
事業終了 編集
デジタルシネマが普及したことでDCP(デジタルシネマパッケージ)サービスの効率化を図るべく、2022年9月30日、IMAGICAエンタテインメントメディアサービスと東宝が2023年4月に両社合弁の新会社を設立し、IMAGICAおよび東京現像所の個別で行ってきたDCPサービスを当該会社で行うことを発表した[3]。これに伴い、IMAGICAおよび東京現像所のDCPサービスは両社とも2023年3月31日に終了した[4]。
2022年11月22日、東宝の取締役会において東京現像所の事業終了を決議し、「DCP事業終了後の今後の方向性を検討したが、残存事業のみで同社が経営を維持することは困難」と判断し、「2023年11月30日(予定)で全事業を終了する」という旨を発表[5]。同月25日に東京現像所も全事業終了を正式に発表した。なお、DI事業、映像編集事業はTOHOスタジオに、アーカイブ事業は東宝がスタジオ内で設立予定のアーカイブ新会社に引き継がれる予定としている[6]。
制作に関与した主な作品 編集
映画 編集
- 1956年 午後8時13分・七つの誓い
- 1957年 柳生武芸帳・夜の蝶・女体は哀しく
- 1958年 彼岸花・無法松の一生・裸の大将・巨人と玩具
- 1959年 鍵・グラマ島の誘惑・日本誕生
- 1960年 おとうと・秋日和
- 1961年 小早川家の秋・妻として女として・ガス人間第一号
- 1962年 秋刀魚の味・妖星ゴラス・ニッポン無責任時代・キングコング対ゴジラ
- 1963年 犯罪作戦 No.1・太平洋の翼・クレージー作戦 先手必勝・マタンゴ・海底軍艦
- 1964年 モスラ対ゴジラ・日本一のホラ吹き男・宇宙大怪獣 ドゴラ
- 1965年 日本一のゴマすり男・フランケンシュタイン対地底怪獣・怪獣大戦争
- 1966年 クレージーだよ奇想天外・フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ・クレージー大作戦・ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘
- 1967年 大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス・クレージー黄金作戦・キングコングの逆襲
- 1968年 ガメラ対宇宙怪獣バイラス・怪獣総進撃・連合艦隊司令長官 山本五十六
- 1969年 男はつらいよ・日本一の断絶男・ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃
- 1970年 男はつらいよ 望郷篇・ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦! 南海の大怪獣・どですかでん
- 1971年 男はつらいよ 寅次郎恋歌・激動の昭和史 沖縄決戦・ゴジラ対ヘドラ
- 1972年 男はつらいよ 柴又慕情・地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン・パンダコパンダ
- 1973年 男はつらいよ 寅次郎忘れな草・海軍特別年少兵
- 1974年 青春の蹉跌・竜馬暗殺・わが道
- 1975年 金環蝕・男はつらいよ 寅次郎相合い傘
- 1976年 青春の殺人者・男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け・あにいもうと
- 1977年 竹山ひとり旅・姿三四郎
- 1978年 博多っ子純情・ルパン三世 ルパンVS複製人間
- 1979年 あゝ野麦峠
- 1980年 太陽の子 てだのふあ・男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花
- 1981年 泥の河・ユニコ・北斎漫画・近頃なぜかチャールストン
- 1982年 怪異談 生きてゐる小平次
- 1983年 戦場のメリークリスマス・ユニコ 魔法の島へ・クラッシャージョウ
- 1984年 伽耶子のために・うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー・風の谷のナウシカ・ゴジラ
- 1985年 ドレミファ娘の血は騒ぐ
- 1986年 人間の約束・恋する女たち・天空の城ラピュタ・ジャズ大名
- 1987年 永遠の1/2・男はつらいよ 知床慕情・BU・SU・光る女
- 1988年 となりのトトロ・TOMORROW 明日・郷愁・火垂るの墓・木村家の人びと・快盗ルビイ
- 1989年 その男、凶暴につき・ゴジラvsビオランテ・魔女の宅急便・NEMO/ニモ
- 1990年 櫻の園・3-4X10月・浪人街・つぐみ
- 1991年 息子・大誘拐 RAINBOW KIDS・無能の人・あの夏、いちばん静かな海。・12人の優しい日本人・おもひでぽろぽろ・四万十川
- 1992年 いつかギラギラする日・寝盗られ宗介・ゴジラvsモスラ
- 1993年 学校・ゴジラvsメカゴジラ
- 1994年 棒の哀しみ・ゴジラvsスペースゴジラ
- 1995年 東京兄妹・幻の光・KAMIKAZE TAXI・みんな〜やってるか!
- 1996年 キッズ・リターン・学校II・シャブ極道
- 1997年 東京夜曲・誘拐・復讐 THE REVENGE 運命の訪問者・CURE
- 1998年 HANA-BI・愛を乞うひと・学校III
- 1999年 菊次郎の夏・ナージャの村・ゴジラ2000 ミレニアム
- 2000年 ドラえもん のび太の太陽王伝説・The AURORA 海のオーロラ
- 2001年 青の瞬間・チャイニーズ・ディナー・ドラえもん のび太と翼の勇者たち
- 2002年 たそがれ清兵衛・OUT・トリック劇場版・模倣犯・Dolls
- 2003年 阿修羅のごとく・鏡の女たち・座頭市・呪怨・ロボコン
- 2004年 父と暮せば・隠し剣 鬼の爪・赤い月・娘道成寺 蛇炎の恋・雨鱒の川
- 2005年 パッチギ!・ローレライ・蟬しぐれ・タッチ・埋もれ木
- 2006年 県庁の星・着信アリ・輪廻・佐賀のがばいばあちゃん・水霊 ミズチ
- 2007年 愛の流刑地・秘密結社鷹の爪 THE MOVIE 〜総統は二度死ぬ〜・シナモン the movie・ねずみ物語 〜ジョージとジェラルドの冒険〜
- 2008年 ホームレス中学生・アキレスと亀・デトロイト・メタル・シティ
- 2009年 20世紀少年〈第2章〉最後の希望・劒岳 点の記・南極料理人・沈まぬ太陽
- 2010年 悪人・アウトレイジ・桜田門外ノ変・ゴールデンスランバー・食堂かたつむり
- 2011年 DOG×POLICE 純白の絆・天国からのエール・神様のカルテ・ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜
- 2012年 アウトレイジ ビヨンド・るろうに剣心・桐島、部活やめるってよ・わが母の記・宇宙兄弟
- 2013年 R100・少年H・旅立ちの島唄〜十五の春〜・脳男・県庁おもてなし課・クロユリ団地・陽だまりの彼女
- 2014年 神様のカルテ2・WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜・蜩ノ記・トリック劇場版 ラストステージ・小さいおうち
- 2015年 龍三と七人の子分たち・ストロボ・エッジ・母と暮らせば・天才バカヴォン〜蘇るフランダースの犬〜・orange -オレンジ-
- 2016年 家族はつらいよ・星ガ丘ワンダーランド・世界から猫が消えたなら・植物図鑑・青空エール・怒り・ボクの妻と結婚してください。・ぼくは明日、昨日のきみとデートする
- 2017年 恋妻家宮本・チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜・ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険・亜人・アウトレイジ 最終章・先生!、、、好きになってもいいですか?
- 2018年 ドラえもん のび太の宝島・クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ〜拉麺大乱〜・名探偵コナン ゼロの執行人・友罪・羊と鋼の森
- 2019年 フォルトゥナの瞳・君は月夜に光り輝く
- 2020年 ドラえもん のび太の新恐竜
- 2021年 名探偵コナン 緋色の弾丸
フィルムからのデジタルリマスター 編集
- 世紀のご成婚 (4K)
- ゴジラ
- キングコング対ゴジラ (4K)
- 七人の侍 (4K)
- 生きる (4K)
- 用心棒 (4K)
- 椿三十郎 (4K)
- 天国と地獄 (4K)
- 野良犬 (4K)
- 影武者 (4K)
- 浮雲 (4K)
- 赤ひげ
- ニッポン無責任時代
- 細雪
- 駅 STATION
- ドラえもん のび太の日本誕生 (4K)
- モスラ (4K)
特撮 編集
- マグマ大使
- ウルトラシリーズ(『ウルトラマン』から『ウルトラマン80』まで)
- コメットさん(大場久美子版)
- シルバー仮面
- ミラーマン
- 愛の戦士レインボーマン
- アイアンキング
- ファイヤーマン
- ジャンボーグA(ノンクレジット)
- 流星人間ゾーン
- スーパーロボット レッドバロン
- ダイヤモンド・アイ
- 電人ザボーガー
- スーパーロボット マッハバロン
- 円盤戦争バンキッド
- バトルホーク
- 小さなスーパーマン ガンバロン
- 恐竜戦隊コセイドン
- メガロマン
- 超星神 シリーズ
- 魔弾戦記リュウケンドー
- ガールズ×戦士シリーズ シリーズ
- リズスタ -Top of Artists!-
日本語字幕 編集
テレビアニメ 編集
1960年代 - 1970年代 編集
1980年代 編集
1990年代 編集
OVA 編集
2000年代以降では、主にサンライズ・スタジオコメット・J.C.STAFF・スタジオジュニオ・日本アニメーション・シンエイ動画などが制作するアニメ作品に於いて、「ビデオ編集」「オンライン編集」といった形で関わっている。
備考 編集
脚注 編集
- ^ a b c 株式会社東京現像所 第72期決算公告
- ^ a b c d “「モスラ」が4Kで復活、「都市伝説」も解明 調布の東京現像所が修復”. 調布経済新聞 (花形商品研究所). (2021年12月10日) 2021年12月11日閲覧。
- ^ 『デジタルシネマ配給・配信事業における合弁会社設立について東宝株式会社と合意』(プレスリリース)IMAGICAエンタテインメントメディアサービス、2022年9月30日 。
- ^ 『【弊社DCP関連事業 サービス終了のお知らせ】』(プレスリリース)東京現像所、2022年10月11日 。
- ^ 「東京現像所が’23年全事業終了。サービスは他社が引き継ぎ」『AV Watch』、2022年11月22日。
- ^ 『【東京現像所 全事業終了のお知らせ】』(プレスリリース)東京現像所、2023年11月25日 。
参考文献 編集
- 『調布・映画小史』(著:市川久夫/刊:調布史談会/1990年)