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東北新幹線脱線事故

2022年福島県沖地震による新幹線の脱線事故

東北新幹線脱線事故（とうほくしんかんせんだっせんじこ）は、2022年（令和4年）3月16日に発生した福島県沖地震により起きた、東北新幹線の列車脱線事故である。営業中の新幹線が脱線事故を起こしたのは上越新幹線脱線事故以来2例目である[2]。この項目では新幹線脱線事故とその後の復旧について述べる。

東北新幹線脱線事故
2022年3月16日の福島県沖地震により区間運休となった東北新幹線(2022年3月17日)
2022年3月16日の福島県沖地震により区間運休となった東北新幹線(2022年3月17日)
発生日 2022年（令和4年）3月16日
発生時刻 23時36分頃（JST）
国 日本の旗 日本
場所 福島駅 - 白石蔵王駅間
路線 東北新幹線
運行者 東日本旅客鉄道
事故種類 列車脱線事故
原因 地震（調査中[1]）
統計
列車数 東京発仙台行「やまびこ223号」（17両編成のうち13両目を除く16両が脱線）
乗客数 78人（乗員を含む）
死者 0人
負傷者 5人
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概要

 
当事故で脱線したH5系H2編成（2015年撮影）

2022年（令和4年）3月16日23時36分頃[3]、福島県沖を震源とする、マグニチュード7.4（最大震度6強）の大地震（福島県沖地震）が発生。これにより、東北新幹線「やまびこ223号」（H5系＋E6系連結の17両編成）が福島駅 - 白石蔵王駅間の宮城県白石市内で営業運転中に脱線する事故が発生した。17両編成のうち13号車以外の16両が脱線し、合わせて68の車軸のうち60基がレールから外れていた。また、一部の車両がレールから大幅にずれて傾くなどの被害が確認されたほか[4]、高架橋の損傷や電化柱の傾斜などの被害も発生した。高架橋や駅ホームの土台などの土木構造物は20カ所が損傷した[5][6]。

この事故での負傷者は、当初なしと報告されていたが、後日の申告を合わせて計5人となった[7][8][9]。乗客は地震発生から約4時間後に列車を降りて線路沿いを歩き、現場から1キロほど離れたところにある非常口を通って高架を降り、待機していたバスで移動した[10]。

この事故の影響で、翌3月17日からは那須塩原 - 盛岡間が終日運転を見合わせたほか、山形新幹線の東京 - 新庄間、秋田新幹線の東京 - 盛岡間も運転を見合わせた[11]。

運転営業中の新幹線が地震により脱線事故を起こしたのは、2004年（平成16年）10月23日に発生した新潟県中越地震による上越新幹線「とき325号」の脱線事故以来2例目である[2]。

調査

国の運輸安全委員会はこの事故の調査を行った[12]。やまびこ223号が脱線した福島駅 - 白石蔵王駅間は最高速度が時速320キロとなっていたが、地震が起きた際に列車は白石蔵王駅での停車に向け減速しており、地震を検知して非常ブレーキがかかる過程、または停車後に脱線したと考えられる。脱線した列車には「レール転倒防止装置」や「逸脱防止ガイド」が設置されていた。初期微動（P波）を検知して自動でブレーキを掛けさせる装置は正常に作動していたという[4]。ただし先頭車両は「逸脱防止ガイド」を超えて逸脱したことが分かった[13]。

復旧

 
臨時ダイヤで運行時の宇都宮駅発車標(2022年3月24日撮影)

3月17日、東日本旅客鉄道（JR東日本）の市川東太郎副社長は「3月中の全線運転再開は厳しい（4月以降の見込み[14]）」と発表した[4]

4月5日、東日本旅客鉄道（JR東日本）は4月14日に全線運転再開すると発表した[15][16]。当初は4月20日頃の全線再開を見込んでいたが、復旧作業は順調に進んだという[16][17]。一部区間で徐行運転が必要なため、当面は8 - 9割ほどの本数の臨時ダイヤ運行。通常ダイヤに戻るのは5月の大型連休明け以降の見通しと発表した[18]。その後、5月13日から通常ダイヤでの運転に戻った[19]。

復旧状況
東北新幹線

北海道新幹線

東京

那須塩原間[注釈 1]

 那須塩原

郡山間

郡山

福島間

福島

仙台間

仙台

一ノ関間

一ノ関

盛岡間

盛岡

新青森間

新青森

新函館北斗間

= = =
秋田新幹線 = = 盛岡

秋田間

= =
山形新幹線 = = = = = = 福島

山形間

山形

新庄間

3月16日

以前[注釈 2]

 通常運転 通常運転 通常運転
3月17日 本数減少 運転見合わせ[20] 本数減少 本数減少 臨時ダイヤ

折り返し

(直通中止)[21]

 運転見合わせ

[20][22][注釈 3]

3月18日から

3月22日

臨時ダイヤ[23] 臨時ダイヤ

折り返し[24]

（東北・北海道直通中止）[25][26]

 臨時ダイヤ

折り返し[24]

（東北・北海道直通中止）[25][26]

 臨時ダイヤ

折り返し

(直通中止)[20]

3月22日から

4月1日

臨時ダイヤ[27] 運転見合わせ 臨時ダイヤ

折り返し[24]

4月2日から

4月3日

臨時ダイヤ[28][29][30] 運転見合わせ 臨時ダイヤ[28]
4月4日から

4月12日

運転見合わせ 臨時ダイヤ[28][29][30] 臨時ダイヤ[29][30] 臨時ダイヤ[29][30]
4月14日から

5月12日

臨時ダイヤ[31][32] 臨時ダイヤ[31][32] 臨時ダイヤ[31][32]
5月13日以降 通常運転 通常運転 通常運転

廃車

  • 2022年6月発表 - 17両編成のうちH5系車両10両を所有するJR北海道は廃車する方針を明らかにした[33][34]。
  • 2022年10月発表 - 17両編成のうちE6系車両7両を所有するJR東日本は事故に伴う車体内部への影響を確認できない点があるとして廃車手続きを進めると発表した[33][34]。
  • 2022年12月判明 - H5系H2編成は2022年9月16日付で廃車となった[35]。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 上越新幹線・北陸新幹線の東京 - 大宮間は通常運転
  2. ^ すべての日付は午前6時を基準
  3. ^ 午後3時過ぎに運転再開

出典

  1. ^ “調査中の案件”. 運輸安全委員会. 2023年2月1日閲覧。
  2. ^ a b 「東北新幹線、16両が脱線 営業中は上越以来2例目」『共同通信』、2022年3月17日。2022年3月20日閲覧。
  3. ^ “震度データベース検索”. www.data.jma.go.jp. 2022年5月7日閲覧。
  4. ^ a b c 「地震 東北新幹線脱線 3月中の運転再開厳しい見通し【詳しく】」『NHKニュース』NHK、2022年3月17日。2022年3月17日閲覧。
  5. ^ 「新幹線、構造物20カ所が損傷 高架橋など、運休長期化」『共同通信』、2022年3月18日。2022年3月20日閲覧。
  6. ^ 「東北新幹線で被害拡大 高架橋の柱など20カ所」『FNNプライムオンライン』フジニュースネットワーク、2022年3月18日。2022年3月19日閲覧。
  7. ^ 「東北新幹線、全線再開は4月20日前後　脱線車両の乗客3人負傷　一部区間は3月22日から運転」『東京新聞』、2022年3月21日。2022年3月23日閲覧。
  8. ^ 「脱線幅は最大約1メートル　東北新幹線、けが4人に」『産経新聞』、2022年3月25日。2022年3月26日閲覧。
  9. ^ 「東北新幹線 復旧進み4月2日以降 段階的に運転再開へ」『NHK NEWS WEB』、2022年3月30日。2022年3月31日閲覧。
  10. ^ 「東北新幹線が脱線、乗客75人が高架歩き地上へ…大学生「揺れで天井にぶつかるかと思った」」『読売新聞』、2022年3月17日。2022年3月17日閲覧。
  11. ^ 「東北・山形・秋田新幹線の一部区間、再開の見込み立たず」『読売新聞』、2022年3月17日。2022年3月17日閲覧。
  12. ^ 「東北新幹線脱線 運輸安全委員会が現地調査を開始 「車両が停止してから、または停止の直前に脱線したか」」『TBSニュース』TBSテレビ、2022年3月18日。2022年3月20日閲覧。
  13. ^ 中村幸司 (2022年4月5日). “東北新幹線 脱線　"深刻な被害"で問われる地震対策”. 解説委員室（時論公論）. 日本放送協会. 2022年4月8日閲覧。
  14. ^ 金森崇之「東北新幹線の全線再開、4月以降の見込み 震度6強で被害大きく」『毎日新聞』、2022年3月17日。2022年3月18日閲覧。
  15. ^ 「東北新幹線 全線運転再開は4月14日に JR東日本発表」『NHKニュース』。2022年4月6日閲覧。
  16. ^ a b “東北新幹線全線再開について” (PDF) (プレスリリース), 東日本旅客鉄道, (2022年4月5日), https://www.jreast.co.jp/press/2022/20220405_ho02.pdf 2022年4月8日閲覧。 
  17. ^ 「東北新幹線が14日から全線で運転再開…通常ダイヤに戻るのはＧＷ明けに」『読売新聞オンライン』、2022年4月5日。2022年4月6日閲覧。
  18. ^ 「東北新幹線が全線で運転を再開 福島沖地震で脱線、1カ月ぶりの復旧」『朝日新聞』、2022年4月14日。2022年4月14日閲覧。
  19. ^ 「東北新幹線、通常ダイヤに　震度６強から５８日ぶり　運行本数や速度元通り」『産経新聞』、2022年5月13日。2022年5月14日閲覧。
  20. ^ a b c “地震による運転状況について” (PDF). 東日本旅客鉄道（JR東日本）仙台支社 (2022年3月17日). 2022年5月15日閲覧。
  21. ^ “岩手県内在来線の運転状況について” (PDF). 東日本旅客鉄道（JR東日本）盛岡支社 (2022年3月17日). 2022年5月15日閲覧。
  22. ^ “山形新幹線、福島―新庄間で運転再開…東京―福島間は再開の見込み立たず”. 読売新聞オンライン (2022年3月17日). 2022年5月18日閲覧。
  23. ^ “東北新幹線時刻表（3/19~）” (PDF). 東日本旅客鉄道（JR東日本） (2022年3月17日). 2022年5月15日閲覧。
  24. ^ a b c “東北・北海道新幹線時刻表（3/22~）” (PDF). 東日本旅客鉄道（JR東日本） (2022年3月20日). 2022年5月15日閲覧。
  25. ^ a b @jrhokkaido_info (2022年3月18日). "JR北海道非常時列車運行情報【公式】2022年3月18日7時07分のツイート" (ツイート). Twitterより2022年9月8日閲覧。
  26. ^ a b @jrhokkaido_info (2022年3月30日). "JR北海道非常時列車運行情報【公式】2022年3月30日14時07分のツイート" (ツイート). Twitterより2022年9月8日閲覧。
  27. ^ “東北新幹線（東京〜郡山間）の時刻表（3/22~当面の間）” (PDF). 東日本旅客鉄道（JR東日本） (2022年3月22日). 2022年5月15日閲覧。
  28. ^ a b c “東北新幹線、２日に郡山―福島再開 仙台―一ノ関は４日”. 河北新報オンラインニュース (2022年3月30日). 2022年5月16日閲覧。
  29. ^ a b c d “東北・山形・秋田・北海道新幹線（東京～福島・新庄間/仙台～秋田・新函館北斗） 時刻表（4/4～）＜下り＞” (PDF). 東日本旅客鉄道（JR東日本） (2022年4月1日). 2022年5月15日閲覧。
  30. ^ a b c d “東北・山形・秋田・北海道新幹線（秋田・新函館北斗～仙台間/新庄・福島～東京間） 時刻表（4/4～）＜上り＞” (PDF). 東日本旅客鉄道（JR東日本） (2022年4月1日). 2022年5月15日閲覧。
  31. ^ a b c “東北・山形・秋田・北海道新幹線時刻表＜下り＞（ 4/14～5/12の時刻）” (PDF). 東日本旅客鉄道（JR東日本） (2022年4月8日). 2022年5月15日閲覧。
  32. ^ a b c “東北・山形・秋田・北海道新幹線時刻表＜上り＞ （ 4/14～5/12の時刻）” (PDF). 東日本旅客鉄道（JR東日本） (2022年4月8日). 2022年5月15日閲覧。
  33. ^ a b “地震で脱線の東北新幹線７両廃車へ　ＪＲ東「内部の影響確認できず」”. 河北新報 ONLINE. 2022年10月21日閲覧。
  34. ^ a b “福島県沖地震で脱線の新幹線廃車へ 関連不明の傷も複数見つかる：朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2022年10月20日). 2022年11月29日閲覧。
  35. ^ 鉄道ファン2023年2月号 通巻 742号 2022年度上半期 JRグループ 車両のデータバンク

関連項目

外部リンク

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