東郷重興

日本の銀行家、実業家

東郷 重興(とうごう しげおき、1943年9月2日 - )は、日本の銀行家実業家学校法人東日本学園理事長。日本ラッド株式会社顧問。

とうごう しげおき

東郷 重興
生誕 日本の旗 東京都
出身校 東京大学法学部卒業
職業 日本ラッド管理本部本部長
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日本銀行国際局局長、株式会社日本債券信用銀行頭取、株式会社大阪造船所代表取締役社長(第5代)、株式会社ダイゾー代表取締役社長(初代)、日本ラッド株式会社取締役社長などを歴任した。

来歴 編集

生い立ち 編集

東京都中野区出身[1]。父は北海道拓殖銀行の行員であり、小学生の頃は北海道函館市八雲町に暮らしたこともある。東京大学に進学し、法学部にて法学を学び、1966年に卒業した[1]

日本銀行 編集

1966年、日本銀行に入行した[1]。日本銀行では主として国際畑などを歩み、高松支店の支店長、政策委員会室の室長などを経て、国際局の局長を務めた[2][3][4]

日本債券信用銀行 編集

 
東郷が頭取を務めた日本債券信用銀行

1996年、請われて日本債券信用銀行に転じ、顧問に就任した[1]。それから1年ほどの間に、日本債券信用銀行の常務、副頭取などの要職を歴任した。1997年、日本債券信用銀行の頭取に就任した。1998年12月、日本債券信用銀行は経営破綻と認定されたため、金融再生法により特別公的管理下に置かれた[5]

日債銀事件 編集

その後、1998年3月期決算時の有価証券報告書不良債権約1600億円を記載していなかったことが発覚し、粉飾決算との疑いが指摘された。当時の頭取だった東郷は、東京地方検察庁特別捜査部により証券取引法違反容疑逮捕された。東郷は無罪を主張したが、2004年5月、東京地方裁判所は、東郷に対し懲役1年(執行猶予3年)の有罪判決を下した[6]。東郷は控訴したが、2007年3月、東京高等裁判所は、東郷に対し懲役1年(執行猶予3年)の有罪判決を下した[7]

しかし、これらの有罪判決に対しては、当時の不良債権処理の実態を反映していないとの批判も根強い[8]。さらに、日債銀事件と同様に不良債権未記載が問題視された長銀事件では、最高裁判所が当時の日本長期信用銀行経営陣に対し無罪判決を下している[9]。そのため、日債銀粉飾決算事件についての最高裁判所の判断が注視された。2009年12月7日、最高裁判所は東京高等裁判所の有罪判決を破棄したうえで、日債銀粉飾決算事件の審理の差し戻しを命じた[10][11][12][13][14][15][16][17][18][19]

2011年8月30日、東京高等裁判所は、東郷に対し無罪判決を下した[20][21][22]。この判決を受け、東京高等検察庁は上告を断念したため、東郷ら3名全員の無罪が確定した[23][24][25]。同年9月13日、東京高等検察庁次席検事伊丹俊彦は「明確な上告理由が見いだせず、上告はしないこととなった」[23]とのコメントを発表し、東郷は「当時の我々の行動、日債銀の皆さんの努力が正しく評価されることを期待したい」[25]とのコメントを発表した。また、東郷らの弁護団は「破綻の責任を経営者個人の責任にすり替えた事件。立件に正義はなかった」[23]としたうえで、「検察庁裁判所は3人の人生の晩節を奪った責任を自覚し、反省を求めたい」[24]とのコメントを発表した。

シアター・テレビジョンでは、「13年もの裁判期間を経て、2011年8月30日逆転無罪判決を獲得! 記念して無料開放を実施いたします」[26][27]とのコメントを発表し、過去に東郷が出演した番組を無料で動画配信する措置をとった。また、東郷が経営陣の一員として名を連ねる日本ラッドでは、会長の大塚隆一が「日本ラッド経営陣一同は当社経営幹部である東郷の無罪判決獲得をうけ、社業の発展を通じて、より一層、社会に貢献してきたい」[28]とのコメントを発表した。

大阪造船所 編集

日本債券信用銀行の頭取を退任したのち、東郷はエアロゾルの製造販売を手がける大阪造船所に移った。代表取締役に就任し、2000年より社長を務めた[1]。大阪造船所がダイゾーに移行したのちも、引き続き代表取締役および社長に留任した。オムロン株式会社や学校法人産業能率大学から株式会社インテリジェントスクエアを買収すると、自社の情報システム事業部を分社化してこれと統合させ、新たに株式会社ディアイスクエアを設立した。また、株式会社スカイピアを吸収合併して新事業に進出するなど、ダイゾーグループのリストラクチャリングM&Aを積極的に推し進めた。また、中部大学大学院工学研究科教授の武田邦彦が司会を務める対談番組などにも出演している。2009年、ダイゾーの社長を退き、顧問に就任した[1]

日本ラッド 編集

2010年、日本ラッドに移り、執行役員として副社長に就任した[1]。日本ラッドでは、取締役社長を務めていた長岡均が同年4月12日に取締役副社長に退いており[1]、それ以降は社長が空席という異例の事態となっていた。その間、日本ラッドの代表権を持つ大塚隆一が、会長として経営を指揮した。同年6月25日、東郷が副社長から社長に昇格した[1]。これによって、日本ラッドには2が月ぶりに社長が誕生することになった。社長退任後は総括執行役員として、同社の管理本部にて本部長を務めた。

学校法人東日本学園 編集

2012年より北海道医療大学を経営する学校法人東日本学園理事長に就任し、現職。

略歴 編集

  • 1966年 - 東京大学法学部卒業。
  • 1966年 - 日本銀行入行。
  • 1996年 - 日本債券信用銀行顧問。
  • 1997年 - 日本債券信用銀行頭取。
  • 2000年 - 大阪造船所社長。
  • 2000年 - ダイゾー社長。
  • 2009年 - ダイゾー顧問。
  • 2010年 - 日本ラッド副社長。
  • 2010年 - 日本ラッド社長。
  • 2012年 - 学校法人東日本学園理事長。

著作 編集

共著 編集

  • 東郷重興・川原義仁共編『図説日本銀行』財経詳報社、1988年。ISBN 4-88-177338-0
  • 藤井卓也・川原義仁・東郷重興共編『図説日本銀行』財経詳報社、1990年。ISBN 4-88-177345-3

脚注 編集

  1. ^ a b c d e f g h i 「新社長」『日本経済新聞』44689号、12版、日本経済新聞社2010年6月26日、13頁。
  2. ^ 「歴代支店長一覧」『日本銀行高松支店 歴代支店長一覧日本銀行高松支店
  3. ^ 財政金融研究所の活動状況(平成6年11月 - 平成7年1月)』1、5頁。
  4. ^ 財政金融研究所の活動状況(平成7年9月 - 平成7年12月)』1頁。
  5. ^ 田村俊一「日債銀、国有化後もドロ沼状態必至?――膨大な政治絡みの問題債権、抜本処理は期待薄」『日債銀、国有化後もドロ沼状態必至?---膨大な政治絡みの問題債権、抜本処理は期待薄 - ニュース - nikkei BPnet日経BP、1998年12月22日。
  6. ^ 共同通信社「日債銀元会長らに有罪判決――粉飾決算で東京地裁」『日債銀元会長らに有罪判決 粉飾決算で東京地裁全国新聞ネット、2004年5月28日。
  7. ^ 共同通信社「2審も元会長ら有罪――旧日債銀の粉飾決算」『2審も元会長ら有罪 旧日債銀の粉飾決算全国新聞ネット、2007年3月14日。
  8. ^ 額賀信「日債銀判決を批判する――無視された不良資産処理の金融実務」『CRI ちばぎん総合研究所 - 社長ヌカちゃんの部屋 [論文] 無視された不良資産処理の金融実務ちばぎん総合研究所、2004年8月1日。
  9. ^ 「旧長銀元頭取ら最高裁で異例の逆転無罪」『旧長銀元頭取ら最高裁で異例の逆転無罪 (1/2ページ) - MSN産経ニュース産経デジタル、2008年7月18日。
  10. ^ 共同通信「日債銀粉飾、審理やり直しへ――3人有罪の二審破棄、最高裁」『日債銀粉飾、審理やり直しへ3人有罪の二審破棄、最高裁 - 47NEWS(よんななニュース)全国新聞ネット、2009年12月7日。
  11. ^ 「旧日債銀粉飾、高裁へ差し戻し=有罪維持の可能性も――元会長らの審理継続・最高裁」『時事ドットコム:旧日債銀粉飾、高裁へ差し戻し=有罪維持の可能性も-元会長らの審理継続・最高裁時事通信社、2009年12月7日。
  12. ^ 「日債銀事件、二審の有罪判決を破棄・差し戻し――最高裁」『asahi.com(朝日新聞社):日債銀事件、二審の有罪判決を破棄・差し戻し 最高裁 - 社会朝日新聞社、2009年12月7日。
  13. ^ 「旧日債銀の粉飾事件――最高裁が差し戻し」『NIKKEI NET(日経ネット):社会ニュース-内外の事件・事故や社会問題から話題のニュースまで日本経済新聞社、2009年12月7日。
  14. ^ 銭場裕司「旧日債銀粉飾決算:2審の有罪判決を破棄、差し戻し…最高裁」『日債銀粉飾決算:2審の有罪判決を破棄、差し戻し…最高裁 - 毎日jp(毎日新聞)毎日新聞社、2009年12月7日。
  15. ^ 共同「日債銀粉飾、審理やり直し――3人有罪の二審破棄、最高裁」『東京新聞:日債銀粉飾、審理やり直し 3人有罪の二審破棄、最高裁:社会(TOKYO Web)中日新聞社、2009年12月7日。
  16. ^ 「日債銀粉飾、審理やり直し――3人有罪の二審破棄」『日債銀粉飾、審理やり直し 3人有罪の二審破棄 - 中国新聞中国新聞社、2009年12月7日。
  17. ^ 「日債銀粉飾決算事件、2審の有罪判決を破棄、東京高裁に差し戻し」『[財経新聞] 日債銀粉飾決算事件、2審の有罪判決を破棄、東京高裁に差し戻し財経新聞社、2009年12月7日。
  18. ^ 「旧日債銀粉飾――3被告の有罪破棄、差し戻し」『旧日債銀粉飾 3被告の有罪破棄、差し戻し | 日テレNEWS24日本テレビ放送網、2009年12月7日。
  19. ^ 「旧日債銀事件、高裁に審理差し戻し」『「旧日債銀事件、高裁に審理差し戻し」 News i - TBSの動画ニュースサイトTBSテレビ、2009年12月7日。
  20. ^ 「旧日債銀の粉飾決算事件で3被告に無罪判決――差し戻し控訴審」『旧日債銀の粉飾決算事件で3被告に無罪判決 差し戻し控訴審 - MSN産経ニュース産経デジタル、2011年8月30日。
  21. ^ 「貸出先の性格に違いも長銀事件と同じ結論――旧日債銀差し戻し控訴審判決」『貸出先の性格に違いも長銀事件と同じ結論 旧日債銀差し戻し控訴審判決 - MSN産経ニュース産経デジタル、2011年8月30日。
  22. ^ 「『一点の曇りもない判決』――旧日債銀元頭取らが笑顔で会見」『「一点の曇りもない判決」 旧日債銀元頭取らが笑顔で会見 - MSN産経ニュース産経デジタル、2011年8月30日。
  23. ^ a b c 「日債銀事件――東京高検が上告断念――旧経営陣無罪確定へ」『日債銀事件 東京高検が上告断念 旧経営陣無罪確定へ - MSN産経ニュース Archived 2011年9月13日, at the Wayback Machine.』産経デジタル、2011年9月13日。
  24. ^ a b 共同通信「日債銀事件で元会長ら無罪確定――東京高検が上告せず」『日債銀事件で元会長ら無罪確定 東京高検が上告せず - 47NEWS(よんななニュース)全国新聞ネット、2011年9月13日。
  25. ^ a b 鈴木一生・山田奈緒「旧日債銀・粉飾決算:差し戻し控訴審無罪――経営陣3人無罪確定――東京高検が上告断念」『旧日債銀・粉飾決算:差し戻し控訴審無罪 経営陣3人無罪確定 東京高検が上告断念 - 毎日jp(毎日新聞)毎日新聞社、2011年9月14日。
  26. ^ 「【祝! 逆転無罪!】武田邦彦『現代のコペルニクス』#3 前半 ゲスト:東郷重興」『【祝!逆転無罪!】 武田邦彦『現代のコペルニクス』#3 前半 ゲスト:東郷重興 ‐ ニコニコ動画(原宿)ニワンゴ
  27. ^ 「【祝! 無罪!】武田邦彦『現代のコペルニクス』#3 後半 ゲスト:東郷重興」『【祝!無罪!】武田邦彦 『現代のコペルニクス』 #3 後半 ゲスト:東郷重興 ‐ ニコニコ動画(原宿)ニワンゴ
  28. ^ 大塚隆一「元取締役社長・東郷重興の日債銀粉飾決算事件無罪獲得について」『20110901 東郷役員に関するお知らせ - 日本ラッド』日本ラッド、2011年9月1日。

関連項目 編集

ビジネス
先代
長岡均
日本ラッド社長
2010年
次代
須澤通雅
先代
(新設)
ダイゾー社長
初代 : 2000年 - 2009年
次代
南宣之
先代
南宣之
大阪造船所社長
第5代 : 2000年 - 2000年
次代
(廃止)