検察首脳会議(けんさつしゅのうかいぎ)とは、社会的に関心の高い事件等の重要案件について、検事総長を初めとして法務省検察庁の幹部たちが一堂に会して最終的な捜査方針を決定する会議の俗称のことである。戦前に重要な政策を決めた会議に倣って部内では「御前会議」とも呼ばれている[1]

概要 編集

会議の構成員は、検事総長、次長検事最高検察庁の刑事部長あるいは公安部長、最高検察庁の担当検事、事件を管轄する高等検察庁検事長、同高等検察庁次長検事、地方検察庁検事正、同地方検察庁次席検事、事件担当の主任検事らが出席する[2]。事件によっては地方検察庁から特別捜査部部長や特別捜査部副部長、法務省から法務省大臣官房長や法務省刑事課長等が出席することもある[2][3]

通常、会議では捜査を担当する地検側が犯罪容疑を説明し、これに対して他の構成員が事実関係の証明や適用法律の解釈などの疑問点を指摘したうえで、捜査を開始するべきか否か、起訴するべきか否か、日程をどう調整するか、等を議論して意思統一を図る。議論がしやすいように下級の者から発言させる慣習がある[2]。結論は検察官同一体の原則により、必ず構成員全員による全会一致でなければ結論とならない[2]。結論の後、個別事件について検事総長に指揮権を持つ法務大臣に報告して許可を求めることになる。

ただし、重要案件といえども必ずしも会議が開かれるとは限らず、地検側が高検や最高検の幹部だけに報告して了承を得るなど、検察の意思統一の仕方が簡略化しているとする情報[4]も存在する。

事例 編集

検察首脳会議は田中角栄元首相が逮捕されたロッキード事件のように政界案件で注目されることが多いが、政界案件以外でも開かれることがある。

政界案件以外で検察首脳会議が開かれた例として、以下がある。

脚注 編集

  1. ^ 野村二郎 1988, p. 88.
  2. ^ a b c d 野村二郎 1991, p. 8.
  3. ^ “[ミニ辞典] 検察首脳会議”. 読売新聞. (1992年9月29日) 
  4. ^ “社説:前部長ら逮捕 「特捜」の解体的見直しを”. 毎日新聞. (2010年10月2日). http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20101002k0000m070125000c.html 
  5. ^ “検事公訴はしない ジラード裁判 検察首脳会議で決る”. 朝日新聞. (1957年12月3日) 
  6. ^ “最高裁へ跳躍上告 東京地裁きょう手続き 砂川判決”. 読売新聞. (1959年4月3日) 
  7. ^ “国史会事件に「破防法」適用 きょう14人の大半起訴 同法の39条と40条で”. 読売新聞. (1959年4月3日) 
  8. ^ “三池鉱の炭じん爆発 一応の結論 検察首脳会議”. 朝日新聞. (1966年7月26日) 
  9. ^ “最高検 不起訴承認 心臓移植で最終会議”. 読売新聞. (1970年8月31日) 
  10. ^ 野村二郎 1984, p. 144.
  11. ^ “ロス疑惑 三浦とXを「殺人」で起訴へ/検察首脳会議”. 読売新聞. (1988年11月9日) 
  12. ^ “日航機墜落 全員不起訴を正式決定「修理ミス発見困難」と検察首脳会議”. 読売新聞. (1989年11月17日) 
  13. ^ “絶対価値不在の社会 幻想を与えたオウム/識者座談会”. 読売新聞. (1995年6月7日) 
  14. ^ “[誤算の法廷]2.27教祖判決(中)で死の量刑、揺れた検察(連載)”. 読売新聞. (2004年2月24日) 
  15. ^ “松村・元厚生省生物製剤課長の基礎を検察首脳会議で了承 エイズ薬害”. 朝日新聞. (1996年10月25日) 
  16. ^ “検証「大蔵・日銀接待汚職」 業・官、浮体の連鎖 金融、なお深い闇=見開き”. 読売新聞. (1998年4月1日) 
  17. ^ “和歌山の「毒物カレー事件」で検察首脳会議”. 読売新聞. (1998年12月2日) 
  18. ^ “和歌山毒物カレー・保険金詐欺事件 林被告夫婦の公判 検事3人の専従体制”. 読売新聞. (1998年12月26日) 
  19. ^ “神奈川県警覚せい剤隠ぺい事件 元本部長ら午後起訴 検察首脳会議も了承”. 読売新聞. (1999年12月10日) 
  20. ^ 参議院外交防衛委員会2010年9月28日法務副大臣答弁。

参考文献 編集

  • 野村二郎『検事総長の戦後史』ビジネス社、1984年。ISBN 9784828402116 
  • 野村二郎『日本の検察―最強の権力の内側』講談社(講談社現代新書)、1988年。ISBN 9784061488854 
  • 野村二郎『新版 日本の検察』日本評論社、1991年。ISBN 9784535579354 

関連項目 編集