構造土(こうぞうど)とは、凍結融解作用によって形成される幾何学的な形をした地表面の模様や微地形である[1]周氷河地形の一種である。この地形の化石は古環境を推定する重要な手段である[2]

大雪山のお鉢平周辺の斜面で見られるソリフラクション、向かって右が高位側
北極ツンドラに多く見られるポリゴン地形
スバールバル諸島における円形土
構造土は火星においても観察することができる

概説 編集

極地方オーストラリア内陸、高山などで見られるが、土壌が凍結と融解を繰り返す場所であればどこでも見られ、火星においても観察することができる[3]

構造土の幾何学的な形やパターン模様は、しばしば人工物だと間違えられる。構造土が形成されるメカニズムは科学者達の間でも長い間謎に包まれていたが、この20年のコンピュータによるシミュレーションの導入により、水分を含む土壌が凍結した際の隆起(凍上)との関連性が確認された。形状と周囲温度は密接な関係がある[2]

日本では主に高山で観察でき[4]北海道大雪山の山頂付近の緩斜面で見られるソリフラクションが構造土の一種である[5][6]

種類 編集

構造土には様々な種類が存在する。通常、その土壌の粒の大きさの比率や凍結と融解のサイクル(凍結融解作用)の間隔がそのパターンの形状と関連している[7][8][9][10][11][12]。構成する物質によって下記のような種類に分類される[1]

  • 多角形土(ポリゴン)
  • 円形土
  • 条線土
  • 網状土
  • 階状土

形成 編集

周氷河地域においては、土中水分が凍結と融解を繰り返すことで粗粒な礫が地表に抜けあがり、その下に粒度の細かい堆積物が潜り込むように移動していく。下層のそういった多孔質で粒度の細かい堆積物は、地表付近の砂礫に比べて水分を多く含み、凍結した際により大きく膨張する。そういった体積変化の差が横方向の力を生み、粗粒な礫を塊状や縞状の領域へと押しやる。長い年月をかけて、不揃いな形が少しづつ均されていき、対称性の高い多角形や円形といった模様を形成していく[13]

火星に形成された模様と地球の極地における形状との比較を行うことで、火星環境を推定する研究もおこなわれている[14]

脚注 編集

  1. ^ a b 6.氷河・周氷河作用による地形 |国土地理院”. 国土地理院. 2018年3月29日閲覧。
  2. ^ a b 曽根敏雄, 高橋伸幸北海道大雪山北海平における凍結割れ目多角形土の冬期観測」『地理学評論 Ser. A』第59巻第11号、日本地理学会、1986年、654-663頁、ISSN 00167444NAID 130004973854 
  3. ^ Southern Hemisphere Polygonal Patterned Ground”. Mars Global Surveyor: Mars Orbiter Camera. Malin Space Science Systems. 2013年11月8日閲覧。
  4. ^ 小泉武栄木曽駒ケ岳高山帯の自然景観 : とくに植生と構造土について」『日本生態学会誌』第24巻第2号、日本生態学会、1974年、78-91頁、doi:10.18960/seitai.24.2_78ISSN 0021-5007NAID 110001881498 
  5. ^ 小疇尚大雪火山群の構造土」『地理学評論』第38巻第3号、日本地理学会、1965年、179-199頁、doi:10.4157/grj.38.179ISSN 0016-7444NAID 130003567127 
  6. ^ 福田正己, 井上正則, 武田一夫大雪山北海平における大型構造土の観察(短報)」『低温科学 物理篇』第34号、北海道大学低温科学研究所、1977年、257-260頁、ISSN 04393538NAID 110001706651 
  7. ^ Patterned Ground”. 2016年9月21日閲覧。
  8. ^ Ballantyne, C.K., 1986. "Non-sorted patterned ground on mountains in the Northern Highlands of Scotland". Biuletyn Peryglacjalny, 30: 15?34.
  9. ^ Allaby, Michael (2013). A Dictionary of Geology and Earth Sciences. Oxford University Press. p. 429. ISBN 978-0-19-107895-8. https://books.google.com/books?id=rjVOCgAAQBAJ&pg=PA429 
  10. ^ Olafur, Ingolfsson (2006年). “Glacial Geology Photos”. 2007年3月4日閲覧。
  11. ^ Kessler M.A.; Werner B.T. (January 2003). “Self-organization of sorted patterned ground”. Science 299 (5605): 380?3. doi:10.1126/science.1077309. PMID 12532013. 
  12. ^ Marchant, D.R.; Lewis, A.R.; Phillips, W.M.; Moore, E.J.; Souchez, R.A.; Denton, G.H.; Sugden, D.E.; Potter Jr., N. et al. (2002). “Formation of Patterned Ground and Sublimation Till over Miocene Glacier Ice in Beacon Valley, Southern Victoria Land, Antarctica”. Geological Society of America Bulletin 114 (6): 718?730. doi:10.1130/0016-7606(2002)/114<0718:FOPGAS>/2.0.CO;2. http://gsabulletin.gsapubs.org/content/114/6/718.short. 
  13. ^ Easterbrook, Don J. (1999). Surface processes and landforms (2nd ed.). Prentice Hall. pp. 418?422. ISBN 978-0-13-860958-0. https://books.google.com/books?id=J7oPAQAAIAAJ 
  14. ^ 小山拓志UAV-SfM測量と地中レーダーを活用した東南極内陸部における多角形土の三次元形態の把握:火星地表環境解明への展開」『日本地理学会発表要旨集』2019年度日本地理学会春季学術大会、日本地理学会、2019年、332頁、doi:10.14866/ajg.2019s.0_332NAID 130007628682 

関連項目 編集

外部リンク 編集