機能(きのう、: function)とは、もののはたらきのこと[1]相互に連関し合って全体を構成しているものの各要素や部分が、それぞれ荷っている固有の役割[1]。また、そうした役割を果たすこと[1]。平易な文章ではしばしば大和言葉を用いて「はたらき」と表現・表記されることも多く、漢字表現を使う場合でも「役割」と言って済ませることも多い。「作用」とも。

「心臓の機能」などと使い、まったく同じ意味で平易に言う場合は心臓のはたらき、心臓の役割などと言う。用言的に使う場合は「機能する」とか「腸が機能していない」などと言う。

人体と機能 編集

医学においては人体の多数の臓器群は、その機能に基づいて大別されて、それぞれがひとつのまとまったシステム(系)として理解されており、栄養消化)等々の一連の機能を担うになう消化器系」、循環機能(血液リンパ液などの体液を体内で循環させ、それによって、酸素栄養素白血球などの免疫細胞 等々等々も各臓器に輸送し、不要となった物質を泌尿器系に輸送し、また臓器や組織どうしが一種の要請や命令を伝え合うホルモンや「メッセージ物質」と呼んでもよいさまざまな微量物質のやりとりを可能にすること)を担う「循環器系」、呼吸機能(とりこむべき酸素と廃棄すべき二酸化炭素の交換を行うこと)を担う「呼吸器系」、血液から不要な物質を濾過・選別し尿として体外に排出する機能を担う「泌尿器系」、生殖機能(子孫を残す機能)を担う「生殖器系」、内分泌機能(血流中にホルモンなどの微量物質を放出すること)を担う「内分泌器系」、体内外の環境変化やストレスなどの情報に応じて生体各部を調節する「神経系」、感覚機能(体外/体内の(物理的な)感覚情報を受け取ること)を担う「感覚器系」、身体運動機能(身体を支え、動かすこと)を担う「運動器系」(骨、関節、靭帯、筋肉などを含む)などに分類されている。

なお血液はその機能の重要さから、「血液は臓器のひとつ」とも言われることがあり、(体重60kgの成人でその総量が4.6kgほど[注釈 1]という割合なので)血液を一種の臓器と見なす時は「人体の最大の臓器」とも言われることがあるが、人体でその血液を造る「造血機能」は、胎児の時は卵黄嚢壁の血島肝臓脾臓骨髄など複数が担うが、成人になるとそれが骨髄のうちの赤色骨髄だけになりそこが造血機能を一手に担うので、成人の場合は骨(骨髄)が「造血器官」と呼ばれることもある。

なお、ここ数十年の医学的研究によって、臓器に指令を出しているのは神経系だけではなくて、人体の各臓器ひとつひとつや組織や細胞群がそれぞれ、他の臓器に対して要請や命令として機能する微量物質、いわば「メッセージ物質」と呼べるようなものを放出しており、人体の総体としてはそちらのほうがむしろ中心的、主であることが理解されるようになってきている。例えば脂肪細胞食欲をコントロールするような微量物質を放出している、脂肪細胞のほうが主体となって脳に対して命令を出している、ということが、ここ数十年で理解されるようになってきている。また臓器が臓器に対して直接に(脳を一切 介さず)要請や命令を出すようなやりとりが大量に行われていることも判ってきている[注釈 2]

社会学 編集

社会学において、「機能」はあるシステム目的に対し何らかのかたちで貢献するか否かという視点から捉えたシステム全体または一部の作用をさす[要出典][注釈 3]

システム工学、ソフトウェア工学 編集

機能要件」(: functional requirement)と言うと、ソフトウェアや情報システムの開発時に定義される要件のうち、機能に関するもののこと[3]。たとえば扱えるデータのタイプ、処理の内容、画面表示や帳票出力の形式、等々である。この「機能要件」という分類に対して、「非機能要件」(: non-functional requirement)という分類があり、それは信頼性・セキュリティ・拡張性・運用性などに関する要件のことである[3]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 血液は体重の約1/13といわれており、血液1Lの重さは約1 kg。なので体重60kgの人であれば60÷13≒4.6 kg、となる[2]
  2. ^ 2017年から放送されたNHKの特別番組シリーズ『人体 神秘の巨大ネットワーク』においても、ノーベル賞受賞者の山中伸弥などがこれを解説している。具体的な医学論文、科学論文は医学論文検索データベースなどで検索することができる。ここ20年ほどで、微量な物質を用いて臓器や組織が互い交わすメッセージのやりとりに関する論文は右肩上がりで(ほとんど指数級数のような曲線で)増加してきており、多くの医学研究者の関心を集めている医学的にホットな研究領域である。
  3. ^ なお、機能主義 (社会学)では慣習制度などの個々の文化要素を全体に対する機能の究明によって理解を図るため、非常に重要視され、人間の生存に役立つかどうかにより正機能と逆機能に分類される。

出典 編集

  1. ^ a b c 「機能」『広辞苑』(第六版)岩波書店 「機能」の項目。広辞苑は第何版か示すだけでよい。最近は電子版のほうが普及しているのでページ番号は示さなくてよい。
  2. ^ よくあるご質問 ヒトの循環血液量はどれくらいありますか? | 愛知医科大学病院
  3. ^ a b 機能要件とは|functional requirement : 意味-定義 - IT用語辞典”. 株式会社インセプト (2012年7月14日). 2017年4月17日閲覧。

関連項目 編集