欧州超大型望遠鏡(おうしゅうちょうおおがたぼうえんきょう、European Extremely Large Telescope / E-ELT)は、ヨーロッパ南天天文台 (ESO) がチリに建設中の、口径39mの次世代超大型望遠鏡である。初めて望遠鏡に光を入れる「ファーストライト」は、2025年を予定している[1]

E-ELTの完成予想図
E-ELTの内部構造

技術的な制約により、単一の鏡から構成される望遠鏡では、口径の最大は約8mに限られる[注 1]。この制約を突破してより大口径の望遠鏡とするため、ELTでは1辺1.4mの六角形の鏡を798枚組み合わせ、口径39mを実現する[2]

ELTでは大口径による大集光力・高空間分解能を活かし、ハビタブルゾーンに存在する地球サイズの系外惑星の大気の調査を行う。また、近傍銀河における「星の考古学」によって銀河の歴史を明らかにすることのほか、宇宙で最初の星(ファーストスター)や最初の銀河を観測することにより、宇宙論研究にも貢献する[3]。この計画の費用は、2018年の経済状況に基づけば11.74億ユーロと見込まれている[4]

設置場所 編集

ELTは、チリ共和国北部のセロ・アルマゾネスに建設されている。セロ・アルマゾネスはアタカマ砂漠にある標高3046mの山であり、アントファガスタから約130km南に位置する。同じくヨーロッパ南天天文台が建設した超大型望遠鏡VLTのあるパラナル山から、約20kmの場所にある[5]

沿革と今後の予定 編集

  • 2000年6月:ESOが口径100m光学望遠鏡OWL (Overwhelmingly Large Telescope) を構想[2]
  • 2006年11月:ESOのマルセイユWSでE-ELT計画を発表
  • 2006年12月:ESO CouncilでPhase-B(技術仕様・設置場所)検討開始が承認
  • 2010年3月:ELT建設地選考諮問委員会が、ESOに対してセロ・アルマゾネスが建設適地であることを諮問[5]
  • 2011年10月:ESOとチリ共和国政府が、セロ・アルマゾネス一帯をELTのために保護し長期のアクセスを保証することに合意[6]
  • 2012年6月:ESO評議会がELT計画を承認[2]
  • 2014年3月:セロ・アルマゾネス周辺で、ELTのための土木工事を開始[2]
  • 2016年5月:ELTのドームと望遠鏡構造体の製造契約が成立[2]
  • 2018年12月:ドームなど建屋本体工事がセロ・アルマゾネスにて開始[2]
  • 2021年:副鏡の製造が完了[2]
  • 2023年:第3鏡と望遠鏡本体構造の製造が完了[2]
  • 2024年:ドームの建設が完了[2]
  • 2025年:主鏡セグメントの据え付け開始、ファーストライトの達成[2]

技術仕様 編集

望遠鏡の主要な仕様は、以下の通りである[7]

  • 口径:39.3m/1.4m×798枚(ただし、中央部に11.1mの欠損あり)
  • 副鏡口径:4.2m
  • 第3鏡口径:3.8m非球面鏡
  • 第4鏡口径:2380x2340mm 平面鏡(補償光学機能つき)
  • ナスミス焦点:f/17.48、
  • 視野角:10分角
  • 架台:経緯台式

脚注 編集

注釈 編集

出典 編集

  1. ^ ESO FAQ ELT "What is the date of ELT first light?"”. 2020年1月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j ESO's Extremely Large Telescope”. 2020年1月20日閲覧。
  3. ^ ESO FAQ ELT "What are researchers hoping to find and achieve with the ELT?"”. 2020年1月20日閲覧。
  4. ^ ESO FAQ ELT "What is the cost of the ELT?"”. 2020年1月20日閲覧。
  5. ^ a b ESO ELT Cerro Armazones”. 2020年1月20日閲覧。
  6. ^ ESO and Chile sign agreement on E-ELT”. 2020年1月20日閲覧。
  7. ^ ESO E-ELT OPTICAL DESIGN”. 2020年1月20日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集