民事介入暴力

民事介入暴力(みんじかいにゅうぼうりょく)とは、暴力団が当事者として(またはその代理人として)民事紛争に介入し、暴力や集団の威力を背景に不当に金品を得ようとする行為一般を指す。通称ミンボーとよばれることが多い。1979年(昭和54年)12月、警察庁が「民事介入暴力対策センター」を設置した際につくられた造語である。昭和54年当時の警察庁による民事介入暴力の定義は「暴力団又はその周辺にある者が、暴力団の威嚇力を背景にこれを利用し、一般市民の日常生活又は経済取引について司法的救済が十分に機能していない面に付け込み、民事上の権利者や一方の当事者・関係者の形を取って介入・関与するもの」である。

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概要編集

その実態は威力業務妨害恐喝であるが刑事事件としての成立要件を満たさない場合、当然の結果として犯罪もない。対策としては法律の専門家及び警察と連絡した暴力団追放センターに連絡する事が重要とされる。「民暴」(みんぼう)と略すこともある。また、特に一般市民を対象として、「企業の倒産整理、交通事故の示談、債権取立て、地上げ等民事取引を仮装しつつ、一般市民の日常生活や経済取引に介入し、暴力団の威力を利用して不当な利益を得る」[1]ような民事介入暴力を指して、「市民対象暴力」(しみんたいしょうぼうりょく)[2]、さらに、企業を対象として「株主権の行使に名を借りたり、社会運動や政治活動を仮装、標ぼうするなどして合法的な行為を装いつつ、企業活動に介入し、暴力団の威力を利用して不当な利益を得る」[1]ような民事介入暴力を指して、「企業対象暴力」(きぎょうたいしょうぼうりょく)ともいう。

手口編集

  • 手口1:
食堂スナックなどの飲食店に対し、自身が経営に関与する関連会社(企業舎弟)とおしぼりや花・植木等のリース契約、あるいは小物アクセサリーやお守り等の販売契約を要求する。拒否した場合は、入り口付近で大声を出し威圧したり、店舗の中に客として入りこみ他の客が来にくくするなどのいやがらせ行為をすることを暗に示唆する。暴力団対策法の施行前はみかじめ料(用心棒代)と称し直接金品を要求していたが、現在では正当な商取引契約の形をとるため、契約の事実だけでは刑事的処罰の対象にはなりにくい。
  • 手口2:
暴力団関係者が経営している風俗関連の飲食店(いわゆるピンサロなど)で高額な料金を要求する(いわゆる「ボッタクリ」)。店頭での料金表は暗く見にくくしてあり、精算時に法外な料金を請求する。金が無いなどと支払いを渋ると、クレジットカードでの支払いを要求したり、知り合いに電話をかけさせ現金を持参させたり、あるいは自宅まで付け馬(集金のために同行)するなどと脅される。高額であっても料金の請求自体は直ちに刑事的処罰の対象には見えないため、警察官が介入をためらう。
  • 手口3:
総会屋。大手民間企業の株を少額で購入し株主総会に出席する。総会で経営者に因縁を付け厳しく罵倒するなどして収拾をつかなくし、総会への参加を辞退する代償に、他の名目で毎年金を暗に要求する。これを「野党総会屋」という。これに対し、議長団の発議に「異議なし!」「賛成!」を連呼するなどして力ずくで“円滑な”運営を進めることで対価を得る総会屋を「与党総会屋」という。総会屋になること、総会屋に利益提供することの両方とも露呈すれば商法で処罰の対象となる。現在では総会屋行為の取締りが厳しいため、企業研究会への協賛金や無内容の機関紙機関誌定期購読費などの形をとることが多くなっている。
  • 手口4:
整理屋。企業が倒産した際に債権者あるいは債務者の「有志代表」と称して債権者や債務者の取りまとめを半ば強引に行う。暴力団対策法により表向きは倒産処理に暴力団が介入してくることは少なくなった。
  • 手口5:
社会運動標榜ゴロえせ同和行為えせ右翼が代表例。その他、人権団体や民族団体、平和団体等を称することもある。
何らかの落ち度につけこんだり、示威行動や威嚇により不安を煽り教育や啓発を行うと称して機関紙を購読させたり、強引に関連会社との取引を契約させる。慰謝料や解決金名目で金銭を要求することもある。
表面上は民事での揉め事を装い警察の関与を避けているが、実際には極端な嫌がらせや暴力の行使を示唆して対価を得る行為であることには変わりなく、広義の恐喝行為であることに変わりはない。
  • 手口6:
スカウト売春斡旋が代表例。
近年では、地域の条例等の関係より、見られる場合とない場合があり、喫茶店やラブホテルに若い女性や少女を連れ込んだり、路上でたむろしている家出少女を連れ去るケースが後を絶たない。違法風俗店が実際に摘発された際、18歳未満の少女が警察に保護されたケースがある。1995年に発生した阪神・淡路大震災の数カ月後に6の事案が発生した。

題材となった作品編集

  • ミンボーの女…「民暴」をテーマにし、暴力団に対し徹底的に抗戦する映画。この映画の監督である伊丹十三は、この映画発表後に暴力団関係者と見られる男に刃物で斬られたことがある。更に、上映館も暴力団員にスクリーンを切られる事件が起きている。被害を受けた映画館は穏便に済まそうと考えていたようであるが、“暴力に屈するな”という世論の後押しを受けて、器物損壊事件としては異例の告訴を行なった。
  • 民暴の帝王
  • 「民暴の鷹」…民事介入する暴力団と対決する青年弁護士の活動を描いた劇画。日本弁護士連合会作・第1作は岩村俊哉、第2作は熊倉いさお画。

脚注編集

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  1. ^ a b 平成5年警察白書第1章 警察庁
  2. ^ 語としては『民事介入暴力対策マニュアル新版』東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会著において確認できる。

関連項目編集