水難事故
水難事故(すいなんじこ)は、海、河川、湖沼、水泳プールなど水域で起こる事故。


概要
編集類義語に海難事故があるが、この2つの実際の用法は「海上か水上か」とは異なる。
「海難事故」が、海難審判法などでの法律用語としての「海難」に従い、(海上に限らない)船舶の事故を意味することが多いのに対し、「水難事故」は、ウォータースポーツや水辺のレジャーでの事故を含み、それらを特に指して使うことも少なくない。山岳で行われる渓流釣りの場合、山岳事故に含めることもある。
一般に水と触れあう機会が多くなる暖かい時期(特に夏)に増加する傾向がある。
通常、ため池では水難事故防止のため、行政による注意喚起の看板、高いフェンスが設けられていたり、出入り口が施錠されていたりするが、児童生徒が釣り竿片手にフェンスを乗り越えたり、破損していたりする所から侵入し、事故に遭うケースが多数報告されている。
日本で水泳授業が取り入れられるきっかけとして、修学旅行中の子どもたち168名が命を落とした紫雲丸事故が上げられる。事故を契機に、ほぼすべての公共学校のプールでの水泳の授業が拡充された[1]。この活動によって、中学生以下の子供が水難で助かる割合は上昇した[2]。ただ、21世紀初頭から老朽化などにともないプールを廃止する動きがある[3]。
アメリカ合衆国では、水泳は白人のスポーツとされてきた。この背景として、人種差別でプールの入場が制限され、プールや海水浴場で不当に扱われ、親も泳げないため教えられないなどがあった[4][5]。2018年の調査では、世帯収入が5万ドル未満の家庭の子どもの79%は、泳ぐ能力が低いか泳げないとされる。人種的な割合では、黒人64%、ヒスパニック45%、白人40%となっている[6]。そのため、21世紀初頭までに確認できる有色人種の子供が水難事故で溺死する割合は同世代の白人の子供に比べ1.5-3倍という結果となっている[4][7]。
水難事故における救助・捜索
編集日本において、海上での水難事故で負傷者や行方不明者がある場合には、海上保安庁の潜水士、警察や消防などの水難救助隊や航空自衛隊の救難隊、海上自衛隊の救難飛行隊、日本水難救済会や海守に所属するボランティアの人々による水難救助活動や捜索活動が行われる。
水難事故の多い場所
編集- 矢作川水系 - 2018年までの過去10年間で事故24件で死者25人[8]。
- 豊川水系 - 2018年までの過去10年間で事故20件で死者20人[8]。
- 静岡県の伊豆半島の城ヶ崎海岸 - 2013~2022年の10年間で17人の犠牲者[9]。
- 沖縄県恩納村の真栄田岬 - 2013~2022年の10年間で13人の犠牲者[9]。
- 千葉県船橋市の「ふなばし三番瀬海浜公園」周辺 - 2013~2022年の10年間で11人の犠牲者[9]。
- 滋賀県大津市の琵琶湖西岸 - 2013~2022年の10年間で11人の犠牲者[9]。
- 岐阜県美濃市の長良川 - 2013~2022年の10年間で10人の犠牲者[9]。
事故例
編集プールでの事故例は、プール#安全性を参照。
ため池での事故例は、ため池#転落事故を参照。
その他の事故例
編集- 1955年7月28日、三重県津市の中河原海岸で、中学校の水泳訓練中に女子生徒36人死亡。詳細は、橋北中学校水難事件を参照。
- 2017年9月の深夜、沖縄県の伊良部大橋の中央で車から降りてプロポーズしYESという返事をもらった男性が、喜びのあまり欄干に乗り出し橋の縁で滑って海に転落して死亡。女性が車を運転しており、男性は酔っていたという[10]。
対策
編集関連項目
編集脚注
編集- ^ “「学校での水泳の授業は必要なのか」60年前に大量につくられたプールが老朽化で維持できない大問題 競技としての水泳も水の安全教育も中途半端 (4ページ目)”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2023年8月31日). 2025年2月22日閲覧。
- ^ “プールなど学校現場における水難事故の実態(斎藤秀俊) - エキスパート”. Yahoo!ニュース. 2025年2月22日閲覧。
- ^ 玲, 堀川 (2024年7月14日). “広がる水泳授業の外部委託、水難学会の斎藤秀俊理事「校外プールで委託が安全」”. 産経新聞:産経ニュース. 2025年2月22日閲覧。
- ^ a b “黒人はなぜ水泳が苦手なのか”. Newsweek日本版 (2018年8月29日). 2025年2月22日閲覧。
- ^ “ワシントンDC:子供の体育にも広がる米国のスポーツ・デバイド 小林知代”. 週刊エコノミスト Online. 2025年2月22日閲覧。
- ^ Meyersohn, Nathaniel (2023年7月22日). “Public pools are disappearing across America” (英語). CNN. 2025年2月22日閲覧。
- ^ CDC (2024年11月12日). “Health Disparities in Drowning” (英語). Drowning Prevention. 2025年2月22日閲覧。
- ^ a b 豊川・矢作川で重大な水難事故が多発しております
- ^ a b c d e 10年で犠牲者10人以上、水の事故集中エリアが7カ所 1万件分析:朝日新聞デジタル
- ^ “宮古島でプロポーズ成功直後に男性転落死 その涙の真相”. NEWSポストセブン
- ^ インスタ映え「幻の滝」に飛び込み死亡 低い水温原因か [栃木県:朝日新聞デジタル]
- ^ 「遊戯王」作者の高橋和希さん死亡は少女救助中 沖縄で - 日本経済新聞
- ^ 屋外で楽しむ北欧式「サ活」、潜む危険とは 日光の施設で死亡事故 栃木県:朝日新聞デジタル(2023年6月22日) 2024年10月19日閲覧
- ^ 女子児童3人、川でおぼれ死亡 夏休み初日 福岡県の犬鳴川:朝日新聞
- ^ “水泳帽にセンサー、AIで映像解析…プール事故防止に「機械の目」:朝日新聞”. 朝日新聞 (2023年6月17日). 2025年2月22日閲覧。
- ^ “「生死分ける」溺れる前兆をAIで検知 水難救命経験、開発者の挑戦”. 毎日新聞. 2025年2月22日閲覧。
- ^ “【ニュースリリース】溺水をセンサで検知して自動通報 ~電通大がライフセーバーの飯沼誠司氏と実証実験~│電気通信大学”. www.uec.ac.jp. 2025年2月22日閲覧。
外部リンク
編集- 水難事故マップ - 1万件のデータから見えた事故集中エリア - プレミアムA:朝日新聞デジタル - 海や川のレジャー事故発生地点と、朝日新聞が分析して分かった集中エリアを示す全国地図