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汎節足動物(はんせっそくどうぶつ、Panarthropoda)とは、脱皮動物のうち現存する有爪動物緩歩動物節足動物の3動物門から構成される分類群である。またこれらの最後の共通祖先から派生したとされる絶滅分類群、いわゆる葉足動物をも含む。この分類群の単系統性は神経解剖学[1]分子遺伝学[2][3]古生物学[4]の知見から支持される[5]

汎節足動物
生息年代: カンブリア紀現世
Velvet worm (2002).jpg
分類
: 動物界 Animalia
亜界 : 真正後生動物亜界 Eumetazoa
階級なし : 前口動物 Protostomia
上門 : 脱皮動物上門 Ecdysozoa
階級なし : 汎節足動物 Panarthropoda
下位分類群

概要編集

現生脱皮動物のうち、有爪動物緩歩動物節足動物の3群は単系統群になると考えられており、これを汎節足動物と呼ぶ。これらの最後の共通祖先、およびそれぞれのステムグループ(初期脇道系統)に属すると思われる古生物群、いわゆる葉足動物もこの群に含まれる。これらの動物は、原則として脱皮を行い、体節制はしご形神経系を持ち、先端に爪のある付属肢は1体節に左右1対ずつある。

汎節足動物のなかでは、緩歩動物節足動物にもっとも近いとする説[3]Tactopodaを構成する)は有力であるが、有爪動物が節足動物に近いとする説(Antennopodaを構成する)、もしくは緩歩動物有爪動物単系統群となり、節足動物はその姉妹群になるとする説をそれぞれ支持する意見もある[6][7]

汎節足動物

有爪動物門


Tactopoda

緩歩動物門



節足動物門




変動の経緯編集

古典的な動物学では、環形動物節足動物はともに体節付属肢を持つことから、体節動物Articulata)と呼ばれる1つの系統群を成すと考えられていた。この考えにおいて、節足動物と環形動物の両者と共通する特徴を持つとされ、この2つの中間に位置づけられていた舌形動物有爪動物緩歩動物側節足動物(Pararthropoda)である[8][9]。しかし、主に分子系統学の知見から、環形動物は節足動物よりも軟体動物などに近縁で、冠輪動物と呼ばれる系統群に含まれると考えられるようになった。同様に節足動物は線形動物などとともに脱皮動物の系統に含まれるとする説が有力になった[10]

側節足動物とされた動物群の位置付けも変化した。舌形動物精子の構造と分子系統学の両面から、系統的に節足動物に含まれ、とりわけ甲殻類鰓尾類に近縁であると考えられている[9][10]。一方で、有爪動物緩歩動物はそれぞれ、節足動物に近縁な独立の動物門とされている[9]。その結果、側節足動物多系統となり、便宜的に用いられるだけになっている[8]

参考文献編集

  1. ^ Persson, Dennis K.; Halberg, Kenneth A.; Jørgensen, Aslak; Møbjerg, Nadja; Kristensen, Reinhardt M. (2012-11-01). “Neuroanatomy of Halobiotus crispae (Eutardigrada: Hypsibiidae): Tardigrade brain structure supports the clade panarthropoda” (英語). Journal of Morphology 273 (11). doi:10.1002/jmor.20054/abstract. ISSN 1097-4687. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmor.20054/abstract. 
  2. ^ Rota-Stabelli, Omar; Kayal, Ehsan; Gleeson, Dianne; Daub, Jennifer; Boore, Jeffrey L.; Telford, Maximilian J.; Pisani, Davide; Blaxter, Mark et al. (2010-01-01). “Ecdysozoan Mitogenomics: Evidence for a Common Origin of the Legged Invertebrates, the Panarthropoda” (英語). Genome Biology and Evolution 2: 425–440. doi:10.1093/gbe/evq030. https://academic.oup.com/gbe/article/doi/10.1093/gbe/evq030/573488. 
  3. ^ a b Hyun Ryu, Shi; Lee, Jimin; Jang, Kuem-Hee; Hwa Choi, Eun; Ju Park, Shin; Chang, Cheon; Kim, Won; Hwang, Ui Wook (2008-01-01). “Partial mitochondrial gene arrangements support a close relationship between Tardigrada and Arthropoda”. Molecules and cells 24: 351–7. https://www.researchgate.net/publication/5667274_Partial_mitochondrial_gene_arrangements_support_a_close_relationship_between_Tardigrada_and_Arthropoda. 
  4. ^ Smith, Martin R.; Ortega-Hernández, Javier (2014-08-17). “Hallucigenia’s onychophoran-like claws and the case for Tactopoda” (英語). Nature 514 (7522): 363–366. doi:10.1038/nature13576. ISSN 0028-0836. https://www.nature.com/articles/nature13576. 
  5. ^ “Origin and evolution of the panarthropod head – A palaeobiological and developmental perspective” (英語). Arthropod Structure & Development 46 (3): 354–379. (2017-05-01). doi:10.1016/j.asd.2016.10.011. ISSN 1467-8039. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1467803916301669. 
  6. ^ “Segmentation in Tardigrada and diversification of segmental patterns in Panarthropoda” (英語). Arthropod Structure & Development 46 (3): 328–340. (2017-05-01). doi:10.1016/j.asd.2016.10.005. ISSN 1467-8039. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1467803916301487. 
  7. ^ 宮崎勝己「節足動物全体の分類体系・系統の現状」『節足動物の多様性と系統』、14-15頁。
  8. ^ a b 武田正倫「側節足動物たちと節足動物との系統関係」『無脊椎動物の多様性と系統(節足動物を除く)』、165-166頁。
  9. ^ a b c 白山義久「総合的観点からみた無脊椎動物の多様性と系統」『無脊椎動物の多様性と系統(節足動物を除く)』白山義久(編集)、岩槻邦男・馬渡峻輔(監修)、裳華房、2000年、p.24。ISBN 4785358289
  10. ^ a b 上島励「節足動物の分子系統学、最近の展開」『節足動物の多様性と系統』石川良輔(編集)、岩槻邦男・馬渡峻輔(監修)、裳華房、2008年、31-37頁。ISBN 9784785358297