河内風穴[5]/河内の風穴[6](かわちのふうけつ[* 2]、かわちふうけつ[8][9][10]、かわちのかざあな[11])は、日本滋賀県犬上郡多賀町河内にある鍾乳洞である。霊仙山麓北西端部付近の地下を中心に広がっており[12]芹川水系に繋がる。

河内風穴
Kawachi-huketu.jpg
第1層の開けた空間「大広間」の高い位置から、大広間(画面全体)と観光洞洞口(外光が差し込む左上)を望む。
所在地

鈴鹿山脈の北西末端部地域内
鈴鹿衝上地塊の域内[1]
滋賀県犬上郡多賀町大字河内宮前 地先[gm 1]

座標: 北緯35度15分5.93秒 東経136度21分6.83秒 / 北緯35.2516472度 東経136.3518972度 / 35.2516472; 136.3518972
全長 約10,020m [2]
標高 約228m [3]
地質 北鈴鹿層群 霊仙山石灰岩層
多賀石灰洞地下水系[4]
一般公開 第1層と一部、第2層の一部
照明 電灯あり
特徴 鍾乳洞風穴
他言語表記 Kawachi Wind Cave [* 1] (英語)

総延長距離は約10,020m[13]で、日本国内第4位の長さを誇る。関西で最も規模の大きい鍾乳洞[6]。数多くの風穴がある鈴鹿山脈北部の霊仙山の中で唯一[6][* 3]、また、県内で唯一[6]、内部が一般公開されている風穴でもある[6]

1950年昭和25年)7月24日、日本初の国定公園として琵琶湖国定公園が指定された際、霊仙山は第2種特別地域になっており、この区域には河内風穴とその周辺地域も含まれている[14][* 4]1959年(昭和34年)2月10日には「河内の風穴」名義(読み:かわちのふうけつ)で滋賀県指定天然記念物となった[6]2001年平成13年)12月には環境省が「河内風穴」名義(読み:かわちのふうけつ)で「日本の重要湿地500」に選定している[2][7][15]

概要編集

河内風穴は、鈴鹿山脈北部にある霊仙山山塊[gm 2]と鍋尻山(なべじりやま)山塊[gm 3]石灰岩地帯に属している[12]。詳しくは、古生層の下部二畳系に属する地層である北鈴鹿層群(北鈴鹿ユニット[16])の[17]、構成層の一つである霊仙山石灰岩層[18](鈴鹿山地の中心部に分布する[19]海山上断片で[2]、主成分は石灰岩塩基性火山岩[20][* 5]に属しており、すなわち、古生代ペルム紀(二畳紀)前期の赤道直下に存在した玄武岩質の鈴鹿海山(伊吹海山列に属する海山の一つ[22][23])の上に形成された[19]珊瑚礁由来の遠洋性堆積物を素に構成されている[19][16][22]。北鈴鹿層群が中生代白亜紀隆起した[24]後、風穴そのものが形成されたのは新生代がかなり深まってから。約55万年[25](新生代第四紀更新世中期イオニアンcf.〉)より以前とされている[要出典]

洞窟として近畿地方随一の規模で、測量されている部分だけでも総延長距離約10,020m、総面積1,544m2[6]とされている(イザナギプロジェクト[26]による調査結果[12])。1980年代までは測量できた総延長距離は約300mに過ぎなかった[25]。観光洞洞口(洞窟の観光可能領域の出入口)は、霊仙山の麓ではなく、権現谷(ごんげんだに)を挟んで南に位置する鍋尻山の北西麓に開いている。開口部の高さはわずか1mほどしかない。洞窟内部は4層に分かれており、第1層は1,190m2、第2層は215m2、第3層は33m2、第4層は116m2である。洞内の気温は一年を通して比較的の低温で安定している(※具体的数値は資料によってブレが大きく、高い方から順に、15~16°C[6]、12~13°C[5]、12°C[27]、11~12°C[2]、11°C程度[* 6]がある)。そのことから、明治時代以前には天然の冷蔵施設として利用され、種蚕種を保存していた[6]。また、90%以上の高い湿度が保たれている[2]

1922年大正11年)に観光用の松明が設置され[5]、観光洞洞口から約200mほどの範囲にある第1層と第2層の一部(主に『大広間』と『屋根裏ホール』)が一般公開されるようになった[5]。その後、電灯や梯子が設置された。それより奥は入り組んでいるため、許可を得た者しか立ち入れない。一般公開されている部分には鍾乳石などの鍾乳洞特有の地形は乏しい[独自研究?]。一方で、深部の立入禁止区域には地底湖や鍾乳石の林立した「青の水路」と呼ばれる箇所があり[2]、洞内を流れる地下河川の水が芹川の支流があるエチガ谷へ向けて湧き出している[2]

その昔、地元の猟師が洞内に4頭を放して洞口を閉ざしたところ、1頭は死に、残りの3頭は鈴鹿山脈の向こう側(東側)の伊勢国員弁郡篠立村(幕藩体制下の勢州桑名藩知行篠立村。1889年〈明治22年〉における三重県員弁郡立田村篠立、現在のいなべ市藤原町篠立)にある篠立の風穴(しのだちのかざあな)に現れたとの言い伝え(口伝)が残っている[独自研究?][28][25]

生物相編集

洞内編集

洞窟空間には、ヨコエビ類・トビムシ類・クモ類・ヤスデ類などといったありふれた好洞穴性洞穴生物のほか[2]ユビナガコウモリ[2]コキクガシラコウモリ[2]テングコウモリモモジロコウモリなどといったコウモリが棲息している。洞内を流れる清水には、コバヤシミジンツボ[* 7]ホラアナゴマオカチグサガイ[* 8]といった、中腹足目(ニナ目)の巻貝が棲息している。コバヤシミジンツボはミジンツボの一種で当地の固有種である[2]。また、カワチメクラチビゴミムシはメクラチビゴミムシの一種で、これも当地の固有種である[2]

なお、環境省は河内風穴を「日本の重要湿地500」の一つに選定した理由として「コバヤシミジンツボのタイプ産地および唯一の生息地」であることを挙げている[15]

周辺編集

芹川および犬上川の上流部に広がる石灰岩地(霊仙山石灰岩層)表層部は、近畿地方でも有数の陸貝カタツムリ)の産地であり[29]、多賀町域では47が確認されているが[29]、なかでも河内風穴の周辺地域には多数の陸貝が棲息している[29]。また、石灰岩性植物であるヒメフウロクモノスシダが棲息している[2]ニホンリスミソサザイなどの動物も見られる[2]

所在地編集

江戸時代における近江国犬上郡河内村、幕藩体制下の江州彦根藩知行河内村に相当する。
  • 洞内第1層「大広間」の所在地は、鍋尻山北西麓の地下。

交通アクセス編集

公共交通機関
近江鉄道多賀線を終点の多賀大社前駅で下り、ここから河内まで約8.8kmの道のり[30]
  • 多賀大社前駅からは近江タクシー(彦根近江タクシー)による予約型乗合タクシー「愛のりタクシーたが」が運行されている[31]。所要時間は約18分[30]
  • 過去には路線バスが河内線を運行し、「河内の風穴(宮前)」バス停留所が設置されていたが、今は運行されていない。
自家用車
名神高速道路彦根ICで下り、国道306号を南東方面へ久徳(きゅうとく)地区[* 9]まで走り、そこから県道17号(多賀醒井線)に入って芹川沿いを上流域へと進み、河内に到る。彦根ICから約12kmの道のり。河内に有料駐車場(普通車40台規模)あり[gm 5]

脚注編集

[ヘルプ]

注釈編集

  1. ^ 他に、Kawachi Fuketsu、Kawachi-no-Fuketsu との表記もあり。
  2. ^ いずれも「の」抜きの読みがあるとされているが、現地では「かわちのふうけつ」以外の読みを聞かない(※典拠は、多賀町、河内風穴観光協会[5]、滋賀県[6]など)。表記は多賀町が「河内風穴/河内の風穴」、多賀観光協会が「河内の風穴」、河内風穴観光協会は「河内風穴」、県指定天然記念物としての名称は「河内の風穴」、環境省の「日本の重要湿地500」選定物件としては「河内風穴」[7]
  3. ^ 風穴は霊仙山だけで大小16か所を数える[6]
  4. ^ そのため、木・竹・苔・土・石などの採取は禁止されている[14]
  5. ^ 多賀町域を構成する石灰岩層のうち最も広大なもの。これに次いで広いのは大君ケ畑(おじがはた)地区[gm 4]北部の大君ケ畑層(チャート層)[21]
  6. ^ 現地の入場券の解説。
  7. ^ 学名Akiyoshia kobayashii 腹足綱中腹足目(ニナ目)ミズツボ科。絶滅危惧II類(2007年版、cf. 貝類レッドリスト (環境省))。
  8. ^ 学名:Cavernacmella kuzuuensis 腹足綱中腹足目(ニナ目)カワザンショウガイ科。絶滅危惧I類(2007年版)。
  9. ^ 久徳の国道306号・県道17号交差点 [1]
Googleマップ
  1. ^ 多賀町河内(地図 - Google マップ) ※該当地域は赤色で囲い表示される。
  2. ^ 霊仙山(地図 - Google マップ) ※該当地域は山頂が赤色でスポット表示される。
  3. ^ 鍋尻山(地図 - Google マップ) ※該当地域は山頂が赤色でスポット表示される。
  4. ^ 大君ケ畑(地図 - Google マップ) ※該当地域は赤色で囲い表示される。
  5. ^ 河内風穴駐車場(地図 - Google マップ) ※該当施設は赤色でスポット表示される。

出典編集

  1. ^ 宮村他 1976, p. 19.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n 多賀町_基本構想2-2-7-1 p.26
  3. ^ 検索ワード「Mapion 河内風穴 海抜」
  4. ^ 出典:河内風穴 - カルストの地下湿地リスト 総延長 1,000m 以上石灰洞 or 重要湿地記載 地下湿地。
  5. ^ a b c d e 河内風穴観光協会 (2015年8月10日更新). “河内風穴”. 滋賀・びわ湖 観光情報(公式ウェブサイト). 公益社団法人びわこビジターズビューロー. 2019年10月6日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j k SPEC 2015.
  7. ^ a b 環境省 自然環境局 自然環境計画課. “「重要湿地」の選定地分布 滋賀県”. 公式ウェブサイト. 環境省. 2019年10月6日閲覧。
  8. ^ イザナギ・プロジェクト - 共著関連データベース”. 公式ウェブサイト. 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研). 2019年10月6日閲覧。
  9. ^ 大平祐嗣「無限の闇、探検家育む 河内風穴(未来への百景) 滋賀県多賀町」『日本経済新聞日本経済新聞社、2015年6月23日。2019年10月6日閲覧。「滋賀県多賀町の河内風穴(かわちふうけつ)は(...略...)」
  10. ^ 河内風穴”. ニッポン旅マガジン(公式ウェブサイト). 一般社団法人プレスマンユニオン. 2019年10月6日閲覧。
  11. ^ びわ湖ラン/43 20.9km→近江鉄道多賀大社前駅~河内風穴(往復) 涼求め「河内風穴」へ」『毎日新聞 滋賀版』毎日新聞社、2019年7月29日。2019年10月6日閲覧。「(...略...)鍾乳洞「河内風穴(かわちのかざあな)」(多賀町)を目指すことにしました。」
  12. ^ a b c 多賀町_基本構想9 ※出典は109頁の「石灰岩と鍾乳洞」項。
  13. ^ 秋芳洞もっと長かった! 再測量、新空間発見で」『山口新聞みなと山口合同新聞社、2017年7月10日。2019年10月6日閲覧。
  14. ^ a b hitoyo (2001年11月30日). “【滋賀県】秘境スポット「河内の風穴」冒険気分が味わえる、自然の魅力に迫ります”. wondertrip(個人ウェブサイト). 株式会社アルゴリズム. 2019年10月6日閲覧。 ※8枚目の画像を典拠とする。
  15. ^ a b 環境省 自然環境局 自然環境計画課. “「重要湿地」 No.314 河内風穴”. 公式ウェブサイト. 環境省. 2019年10月6日閲覧。
  16. ^ a b 多賀町 基本構想2-2 pp.14, 16
  17. ^ 宮村他 1976, pp. 3, 6-7.
  18. ^ 宮村他 1976, p. 3.
  19. ^ a b c 宮村他 1976, p. 10.
  20. ^ 宮村他 1976, p. 8.
  21. ^ 宮村他 1976, pp. 3, 6.
  22. ^ a b 多賀町_基本構想9 ※出典は109頁の「サンゴ礁と海山」項。
  23. ^ 筒井杏正(伊吹山ネイチャーネットワーク出版部). “伊吹山と伊吹海山列の化石たち:清水克己 - 伊吹山を知るやさしい地質学の本”. 公式ウェブサイト. 伊吹山ネイチャーネットワーク. 2019年10月6日閲覧。
  24. ^ 宮村他 1976, pp. 3-4.
  25. ^ a b c 大平祐嗣「無限の闇、探検家育む 河内風穴(未来への百景) 滋賀県多賀町」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2015年6月23日。2019年10月6日閲覧。
  26. ^ 『イザナギプロジェクト』概要”. 公式ウェブサイト. 東京スペレオクラブ. 2019年10月6日閲覧。
  27. ^ 神秘の鍾乳洞「河内の風穴」”. 「多賀町史編纂を考える委員会」より(公式ウェブサイト). 多賀町史編纂を考える委員会 (2016年10月6日). 2019年10月6日閲覧。
  28. ^ 神秘の鍾乳洞「河内の風穴」”. 「多賀町史編纂を考える委員会」より(公式ウェブサイト). 多賀町史編纂を考える委員会 (2016年10月6日). 2019年10月6日閲覧。 “滋賀県からこの風穴に入った犬が山向こうの三重県側から出てきた?? なんて話、よく聞きますね。”
  29. ^ a b c 多賀町 基本構想2-2 p.22
  30. ^ a b 多賀大社前駅から河内風穴 のタクシー料金・予約”. いつもNAVI(公式ウェブサイト). ゼンリン. 2019年10月6日閲覧。
  31. ^ 多賀町役場 企画課 (2019年7月25日). “予約型乗合タクシー「愛のりタクシーたが」のご案内”. 公式ウェブサイト. 多賀町. 2019年10月6日閲覧。

関連項目編集

参考文献編集

  • 巻末資料 (PDF)”. 基本構想9(公式ウェブサイト). 多賀町. 2019年10月6日閲覧。

外部リンク編集