法名軸(ほうみょうじく)とは、浄土真宗において用いられる仏具で、死亡年月日と法名を記す掛軸である。浄土真宗の本願寺系の教団では「位牌」を用いないことが推奨される。また「法名軸」を礼拝の対象としない[1]。ただし専修寺系の真宗高田派では、「位牌」を用いる[2]

法名軸

一般家庭の御内仏の場合、仏壇の内側の両側面に掛けて荘厳する。

形状は、白無地の紙を金襴・緞子などを用いて表装したものである。本尊・脇掛の表装が緞子の場合、金襴表装の「法名軸」は用いずに、緞子表装の「法名軸」を用いた方がよい。

本願寺系の宗派であっても、個別の寺院や地域により「位牌」・「繰出位牌」が用いられる場合もある。

また、浄土真宗において「過去帳」は略式であり、命日以外の日の平時は仏壇の引出しなどに収めておくものである。しかし、命日の確認に便利であるため、「法名軸」と併用する事も容認されている。

「法名軸」を掛けることのできない小型仏壇の場合は、「過去帳」で代用する。

用い方 編集

仏具店などで「法名軸」を購入して用意するか、手次寺[3]の住職に用意してもらう。

四十九日までに住職に法名を書き写してもらう[4]。また、「過去帳」を持っている場合は、同時に記載してもらう。「法名軸」を渡されたら、中陰壇にある「白木の位牌」は寺に返す。

故人が本山より「院号」を授与されていた場合は、その時に授与される「院号法名」が記された紙を、真宗専門の仏具店などで表装する。

また、罫線を引いて複数人分を記せるようにしたものを、「合幅[5]」と呼び、「総法名軸」として用いる。

平時は、仏壇の向かって右内側面に、親[6]、もしくは直近に亡くなった人の「法名軸」を掛け、向って左内側面には、代々の法名を記した「総法名軸」を掛ける。側面に掛ける理由は、浄土真宗の仏壇は浄土をあらわしたものであり、故人も諸仏として、その中心にいる阿弥陀如来へ向いていると考えるからである。

個々の「法名軸」は、平時は収めておき[7]、祥月命日・年忌に出し仏壇前に掛ける。また盂蘭盆会には、すべての法名軸を出して掛ける。

脚注 編集

  1. ^ 礼拝の対象…浄土真宗では、阿弥陀如来(阿弥陀仏)のみを礼拝の対象とする。
  2. ^ 「法名軸」と同様に、高田派においても「位牌」は礼拝の対象ではない。
  3. ^ 手次寺…他宗でいう菩提寺
  4. ^ 法名軸の書式は、宗派によって異なる。
  5. ^ 合幅…「がっぷく」と読む。
  6. ^ 右側面の法名軸…両親がすでに亡くなっている場合は、平時用に両親の法名を一幅に記したものを右内側面に掛けても構わない。その場合は、祥月命日用に個々の法名軸も用意する。
  7. ^ 寺院用の大型の「法名軸」は、巻いて収納する。家庭用の小型の「法名軸」は、巻かずに箱などに収めておく。

参考文献 編集

  • 瓜生津隆真、細川行信 編『真宗小事典』(新装版)法藏館、2000年。ISBN 4-8318-7067-6 
  • 菊池祐恭 監修『お内仏のお給仕と心得』真宗大谷派宗務所出版部、1981年改訂。ISBN 4-8341-0067-7