浄土真宗親鸞会
浄土真宗親鸞会(じょうどしんしゅうしんらんかい)は、1958年(昭和33年)に発足した仏教系の宗教法人。
設立 | 1958年(昭和33年) |
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設立者 | 高森顕徹 |
種類 | 宗教団体 |
法人番号 | 1230005007438 |
法的地位 | 宗教法人 |
所在地 | 富山県射水市上野1191 |
座標 | 北緯36度41分15.8秒 東経137度5分21.6秒 / 北緯36.687722度 東経137.089333度座標: 北緯36度41分15.8秒 東経137度5分21.6秒 / 北緯36.687722度 東経137.089333度 |
ウェブサイト | 公式ウェブサイト |
親鸞会は自らを新宗教と呼ばれるのを好まず、浄土真宗の宗派の一つであると主張し、今日の浄土真宗本願寺派や真宗大谷派など、他の浄土真宗各派は全て親鸞の教えから逸脱していると非難している。
一方、伝統的な浄土真宗系各宗派は教義の解釈の違いから、親鸞会を異端(異安心、邪義)とみている。
主として、組織的に偽装した布教方法を批判されることがあり、カルト教団であると批判的に議論されることがある。
解説編集
元浄土真宗本願寺派僧侶である高森顕徹が設立し、会長を務める。本部を富山県射水市(旧射水郡小杉町)に置く。関連会社・団体として1万年堂出版、オンライン仏教アカデミー、浄土真宗学院、真生会富山病院、有限会社ウェルカムなどがある。
機関紙は「顕正新聞」。なお、日蓮系団体冨士大石寺顕正会の発行する同名の新聞とは無関係。親鸞会は日蓮及び日蓮宗系諸団体を激しく非難している。
各種報道によると、同会の会員数は1980年(昭和55年)時点で約5万人[1]、1997年(平成9年)時点で約10万人[2]とされる。
目的編集
浄土真宗各派で主流となっている清沢満之による近代教学を否定[3]、「宗祖親鸞聖人の正しい教えを広めることを唯一の目的として、親鸞、覚如、蓮如の文を根拠にして、それを忠実に解説する」という趣旨の法話会を各地で行っている。会では他の真宗宗派、とりわけ浄土真宗本願寺派(西本願寺)や真宗大谷派(東本願寺)との教義上の差異を主張しており、本願寺の教えは善の勧めがない教え、後生の一大事を否定した教えだと批判している。
仏教を求める目的は、後生の一大事(死ねば必ず無間地獄へ堕ちるという一大事)の解決一つと教えている。平生に信心決定した人は極楽に往生するが、信心決定していない人は無間地獄に堕ちると説く。この内容は、浄土真宗本願寺8代目法主である蓮如上人の著書に同様の記載があることを、本願寺系列の出版物で確認できる。[4]
親鸞会では親鸞が書いたと言われる「南無阿弥陀仏」の名号を本尊に用いる。寺院で広く見られる木像本尊や絵像は一切用いていない。
また親鸞会では本尊は会から「貸与」されるもので、おろそかに扱われることを防ぐという理由で、会員が亡くなった時や退会の際は会に返却しなければならない。
布教編集
日本全国各地で、大学新入生や、高齢者、在日外国人などを対象に、組織的に正体を隠した、いわゆる「偽装勧誘」を行っている。このため、カルト問題と関連付けて議論されることがある。「被害者家族の会」が存在する。
その手口は極めて巧妙である。その概要は、おおむね下記のとおり。
- 大学の空き教室を勝手に使用し、大学と関係のある勉強会のように見せかけて勧誘を行う。
- 大学新入生のアパート・マンションを、主として複数人で訪問し、「大学から、あなたの面倒をみるように頼まれて来ました」等と偽り、接近する。大学がこのような目的で、学生の居所などの個人情報を開示することはない。
1999年(平成11年)に別冊宝島『「救い」の正体』や月刊現代『若者を魅きつけるラディカル宗教「終末論」』、また2001年(平成13年)には新潮45『シリーズ:現代のカルト第三回』で、哲学サークルなどを装う大学での正体を隠した勧誘の実態が報じられた。各地の大学[5]や日本脱カルト協会、全国霊感商法対策弁護士連絡会といった団体から問題視されている。
なお、この数年来、日本全国各大学では、これらの勧誘方法によって、主として新入生が偽装勧誘の被害に遭わないよう、警告ポスターが掲示される、新入学時に予防啓発DVDが上映されるなどの、防衛手段が取られてきている。
日本全国や日本国外で積極的な布教活動を展開して、その会員はあらゆる年齢層・地域・職業に広がっており、伝統教団の苦手とする若年層の会員の獲得にも成功している。
また、関連会社であるチューリップ企画が製作した親鸞のアニメビデオ・DVDの『世界の光 親鸞聖人』『親鸞聖人と王舎城の悲劇』『なぜ生きる』『歎異抄をひらく』を訪問販売する活動がある。親鸞会内では、この活動は「光作戦」と呼ばれている。2011年からは弁当の製造販売も行なっている。
現在は公民館や市民センターなど各地で正体を隠してのアニメ上映会や、“仏教講師”による講演会を行っている。近年、日本各地に会館が建設されたり、アニメ映画「なぜ生きる」(主演:里見浩太朗)、「歎異抄をひらく」(主演:石坂浩二)などを上映している。さらには一部の“仏教講師”はYouTubeにも親鸞会と明かさずに“仏教YouTuber”と称して講演映像を作成・投稿している。
高森顕徹の著書「なぜ生きる」「光に向かって ―心地よい果実―」「光に向かって ―100の花束―」「歎異抄をひらく」の広告を繰り返し新聞に打っている。
布施編集
親鸞会で会費は、本人の希望によって、12通りから選ぶことができる。いつでも変更は自由である。行事の際は名札を着け、会費を多く払っている者から順番に座る。財施は、新しい会館の建設、会館にかかげる絵画などの際に必要に応じて呼びかけられる。
歴史編集
- 1952年(昭和27年) - 高森顕徹を会長とし、68名の会員を集めて「徹信会」を発足。
- 1957年(昭和32年) - 富山県高岡市前田町に徹信会館(24畳)を建設。
- 1958年(昭和33年) - 宗教法人格を取得し、浄土真宗親鸞会と改称。
- 1974年(昭和49年) - 高岡市芳野へ本部を移転(100畳)。
- 1979年(昭和54年) - 浄土真宗本願寺派の紅楳英顕が論文「現代における異義の研究 ─高森親鸞会の主張とその問題点」を発表。親鸞会はこれに反発し、再三にわたり質問状を送り、本願寺派に対する批判キャンペーンが展開される。
- 1984年(昭和59年) - 上記に関し、紅楳側が誠意を持って答えていないとして、親鸞会会員約1,500人が西本願寺の御影堂に座り込み抗議を行う。以後、西本願寺の駐車場は、指定旅行業者のバスのみ駐車可能となった。
- 1988年(昭和63年) - 富山市に隣接する射水郡小杉町に本部を移転。親鸞会館(現本館・520畳)となり、支部は全国及び南米・北米・台湾・韓国に及ぶ。
- 1992年(平成4年) - 既存の親鸞会館本館の収容能力不足から、隣接地に顕真会館を建設。
- 2004年(平成16年) - 参詣者で溢れるため、親鸞会館本館の隣接地に2,000畳の講堂を持つ正本堂を建設。
- 2011年(平成23年) - 関連会社として有限会社ウェルカム設立。資金稼ぎの手段として、弁当事業に進出する。
- 2013年 (平成25年) - 札幌市厚別区に北海道会館が開館。
浄土真宗親鸞会を取り上げたメディア編集
- 『岩波講座日本通史』第21巻、小沢浩のレポート
- 講談社「現代」平成11年11月号、米本和広のレポート。補強版として『教祖逮捕―「カルト」は人を救うか』(ISBN 4796617191)
- 別冊宝島編集部編『「救い」の正体。』高橋繁行のレポートを掲載(ISBN 4796694617)
- オーマイニュース [1]
- インテリジェンス・レポート 2012年3月号 2012.03 「カルト団体の学生勧誘をめぐる動向」
- 北國新聞編集局『真宗王国と新宗教「蓮如さん今を歩む」』 アーカイブ 2004年2月15日 - ウェイバックマシン
- 「蓮如」 マイナー・T・ロジャース アン・T・ロジャース 共著 アーカイブ 2003年12月23日 - ウェイバックマシン
- 富山新聞 平成9年10月28日号 掲載記事 「神よ仏よ」 信仰厚き北陸路を行く アーカイブ 2004年4月7日 - ウェイバックマシン
- 『宗教問題15:親鸞会とは何か』、合同会社宗教問題、2016年8月 ISBN 978-4990852641
宗教番組編集
2016年10月から日本全国のラジオ局で「浄土真宗親鸞会の時間」を放送している。内容はラジオ朗読版「なぜ生きる」の焼き直しである。
ネット局編集
評価編集
井上順孝は一般的な新宗教と比べ、伝統宗教と教義面での違いが少なく、教団改革運動ないし再生運動的な性格を持っているとしている[6]。
エドワード・G・サイデンステッカーは『なぜ生きる』の翻訳を終えて、“YOU WERE BORN FOR A REASON is a solemn and profound book.”(『なぜ生きる』は厳粛にして深遠な書である)と裏表紙に記述するなど、一部には親鸞会を擁護する意見もある。[7]
脚注編集
- ^ 「親鸞会は(乃至)会員約五万人」読売新聞 1980年5月28日
- ^ 「現在の会員数は約10万人で」小沢浩「新宗教の風土」
- ^ 歴史の視点 学徒の論点 西方浄土はおとぎ話か 真宗破壊の「近代教学」 その元を作った清沢満之 親鸞会.NET|親鸞会
- ^ 現代布教全書
- ^ 岡山大学学生相談室だより 2011年4月臨時特集号 (PDF) 岡山大学
- ^ 井上順孝『人はなぜ新宗教に魅かれるのか』三笠書房(2009)p210
- ^ “川端康成氏にノーベル賞をもたらしたサイデンステッカー氏も絶賛した親鸞聖人の講演会”. 浄土真宗親鸞会. 2022年12月21日閲覧。
参考文献編集
- 柏原祐義編『真宗聖典』法蔵館、1935年。ISBN 4-8318-9001-4。
- 高森顕徹 著『歎異抄をひらく』1万年堂出版、2008年発行。ISBN 978-4-925253-30-7。
- 明橋大二・伊藤健太郎 著 高森顕徹 監修『なぜ生きる』1万年堂出版、2001年発行。ISBN 4-925253-01-8。
- 小沢浩 著『新宗教の風土』岩波書店、1997年発行。ISBN 978-4004305064。
関連項目編集
外部リンク編集
- 浄土真宗親鸞会
- 親鸞会 親子ネット 心の絆 - archive.today(2013年4月27日アーカイブ分)
- 1万年堂出版
- 浄土真宗親鸞会被害 家族の会
- さよなら親鸞会 元会員から見た親鸞会の姿
- 親鸞会を脱会した人(したい人)へ