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海賊になった貴族

『海賊になった貴族』（かいぞくになったきぞく、原題：Our Flag Means Death）は、デヴィット・ジェンキンス（英語版）原案による歴史物、ロマンティック・コメディのテレビドラマシリーズ。18世紀初頭の海賊の黄金時代を舞台とし、地主階級（ジェントルマン）から海賊になった実在の人物であるスティード・ボネットを主人公とする。彼と彼が指揮したリベンジ号の乗組員たちが、有名な海賊である黒髭ことエドワード・ティーチと出会い、海賊として成り上がるために、黒髭やその右腕イジー・ハンズと渡り合わなければならなくなった不運を描く。主人公のボネットをリス・ダービーが、黒髭をタイカ・ワイティティが演じ、ワイティティは製作総指揮も務める。

Our Flag Means Death
ジャンル
原案 デヴィット・ジェンキンス（英語版）
出演者
テーマ曲作者 マーク・マザーズボー
国・地域 アメリカ合衆国
言語 英語
シーズン数 1
話数 10
各話の長さ 26–36分
製作
製作総指揮
プロデューサー
  • Todd King
  • Allen Marshall Palmer
撮影監督
  • Mike Berlucci
  • Cynthia Pusheck
編集
  • Christian Kinnard
  • Hilda Rasula
  • Daniel Haworth
  • Gina Samsom
製作
配給 Warner Bros. Discovery Global Streaming & Interactive Entertainment
放送
放送チャンネルHBO Max
放送期間2022年3月3日 (2022-03-03) - 放送中
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本作はHBO Maxにて2022年3月3日に第1話が初公開された（最終話は3月24日）。日本語版は『海賊になった貴族』のタイトルで、U-NEXTより同年6月24日から公開開始。LGBT表現が肯定的に見られるなど、概ね好評を博し、2022年6月に第2シーズン製作決定が発表された。

あらすじ 編集

本作は、18世紀初頭の海賊の黄金時代に活動した実在の海賊であるスティード・ボネットを主人公とし、彼の生涯をゆるく描く。

1717年、バルバドスの地主（ジェントリ）であったボネットは、海賊として名を上げることを決意して、その適性がないにもかかわらず、裕福な生活を捨て自前の船リベンジ号に乗って海に出る。しかし、船長としての能力に欠くボネットの指揮では、海賊としての体をなさず、彼や彼の手下たちは、海軍や血に飢えた他の海賊たちの脅威に巻き込まれ、四苦八苦する。やがて、彼らは悪名高き海賊・黒髭ことエドワード・"エド"・ティーチと彼が率いる海賊団と出会い、ボネットとティーチは紆余曲折の末に恋に落ちる。

製作 編集

企画 編集

原案者で制作総指揮者（ショーランナー）であるデヴィット・ジェンキンス（英語版）は、妻からスティード・ボネットのことを知り、ウィキペディアの記事を読んで、本作を企画した。特に、その生涯において、家族を捨てたことや、黒髭が客分として迎え入れた理由といった彼の生涯の不明点に興味を持ち、それを理解し、埋めようとした[1][2]。当初からボネットと黒髭の恋愛関係を中心とする展開を構想しており、実際、その部分をメインに企画を持ち込んだ[3][4][5]。

マネージャーが同じである縁から、ジェンキンスはタイカ・ワイティティにボネットの話をし、製作に興味があるか尋ね、ワイティティは製作に加わること決めた[6]。ワイティティによれば、ジェンキンスの海賊に対する独自のアプローチに興味を持ち、プロジェクトに興味を惹かれたと述べている。その後の打ち合わせで、ボネットとティーチのロマンスは「製作の動機」であることに合意した[7]。その後、パイロット版の脚本を読んだギャレット・バッシュ（英語版）も製作責任者として参加をすることを決めた[8]。

2020年9月にHBO Maxより、1シリーズ分を正式に発注を受け、ジェンキンス、ワイティティ、バッシュ、そしてダン・ハルステッド（英語版）が製作総指揮に決まり、さらにワイティティは第1話の監督も務めることになった[9]。

キャスティング 編集

発注直後からスティード・ボネットのキャスティングの検討が始まった。リス・ダービーは初期段階から名が上がっていたがオーディションに失敗し、再びダービーが候補として浮上したのは脚本の大部分が完成した後になってからであった[10][2][7]。 最終的にダービーのキャスティングは2021年1月に正式発表された[11]。 ジェンキンスはSlash Filmsの記事において、一般に嫌われ者のスティード・ボネットを、ダービーは好感の持てるものにしたと評し、「演じられるのは彼だけだ」と語った[2]。 ダービーはこれまで主にコミカルな脇役でキャリアを積んできた俳優であったが、本作のボネットを主役級の、よりドラマチックな役柄を演じる好機と捉え、Deadlineのインタビューで「自分自身とこれまで培ってきた経験を見直した時に、そろそろステップアップする時かもしれないと思ったんだ」と語っている[7]。

既に製作総指揮兼監督として参加していたタイカ・ワイティティが、黒髭役として参加することが決まったのは4ヶ月後の2021年4月であった[12]。 もともとジェンキンスは、ワイティティが演じることを念頭において役を書いており、最終的には文章で黒髭役に興味があるか打診した[10][13]。 公式のキャスティング発表において、ジェンキンスはワイティティについて「私たちの黒髭は伝説であり、恋人であり、戦士であり、策士であり、詩のような魂であり、また、かなり狂気的な存在です。この役を演じられるのはただ一人、偉大なタイカ・ワイティティその人だけです。彼が髭をつけてくることを決めてくれたことに、私たちはこれ以上ない興奮を感じています」と述べている[12]。

6月には、クリスチャン・ナイアン（英語版）、ネイサン・フォード（英語版）、サムソン・ケイオ（英語版）、ロリー・キニア、コン・オニール（英語版）、 ヴィコ・オルティス（英語版）らが参加し[14]、7月にはユエン・ブレムナー、デヴィット・フェイン（英語版）、ジョエル・フライ、ガズ・カーン（英語版）、マシュー・マー（英語版）らも加わった[15]。8月にもレギュラーキャラクターとしてレスリー・ジョーンズ、ナット・ファクソン、フレッド・アーミセン、サンバ・シュッテ（英語版）らが参加した[16][17]。

撮影 編集

撮影は2021年6月14日から9月28日にかけて行われた[18]。 パイロット版の撮影監督を務めることになっていたワイティティは、『ソー:ラブ&サンダー』の製作完了後に、本作の撮影に取り掛かった[9]。 リベンジ号のシーンは、ステージクラフト（英語版）を使ったサウンドステージで行われた[2][6][19]。

音楽 編集

シリーズの音楽はマーク・マザーズボーが担当した。シリーズのオリジナル・サウンドトラックは2022年5月6日にリリースされた[20]。

続編 編集

2022年6月1日、第2シーズンの製作決定が発表された[21]。また、撮影は10月開始で、ニュージーランドで行われるという[22]。

公開 編集

シリーズはHBO Maxで公開され、第1話は2022年3月3日に公開された[23][24]。その後、第1シーズン最終話は3月24日に公開された[25][26]。

評価 編集

レビュー集計サイト「Rotten Tomatoes」では35件のレビューを基に91%の支持、平均評価は7.6/10となっている。同サイトの批評コンセンサスでは「『海賊になった貴族』の優しい感性はコメディの金字塔というには物足りないが、困惑した海賊団員たちは十分に魅力的であり、心休まる作品を求める視聴者は実りある戦利品を見つけることになるだろう」[27]。 Metacriticでは、13人の批評家を基に100点満点中70点の加重平均スコアを獲得しており、「全般的に好意的な評価」としている[28]。 最終回後は、アメリカで一番人気のシリーズとなり、3ヶ月の間トップの座に君臨していた『ボバ・フェット/The Book of Boba Fett』を降した[29]。

本シリーズは3つのクィアからなる実質的なLGBTQ+表現で称賛を集め、そのうちの1つにはノン・バイナリーのキャラクター（Jim Jimenez）を含む[30][31][32][33][34]。 また、物語の中心となるボネットとティーチのロマンスは、シーズン終了前に2人の関係を明確にすることによって、よくあるクィアベイティング（英語版）の形式に陥らなかったことでも称賛を受けている[35][36]。

脚注 編集

[脚注の使い方]

注釈 編集

出典 編集

  1. ^ Lane, Carly (2022年3月3日). “'Our Flag Means Death' Creator David Jenkins on How 'The Road Warrior' and Rom-Coms Inspired the Pirate Comedy Series” (英語). Collider. 2022年4月19日閲覧。
  2. ^ a b c d Giroux, Jack (2022年3月9日). “Our Flag Means Death Creator David Jenkins On The Freedom Of Not Doing Research [Interview]” (英語). Slash Film. 2022年4月19日閲覧。
  3. ^ Cobb, Kayla (2022年3月24日). “'Our Flag Means Death' EPs Unpack That Huge Finale Twist, And Tease Season 2” (英語). Decider. 2022年4月19日閲覧。
  4. ^ Travers, Ben (2022年3月24日). “'Our Flag Means Death': Taika Waititi and Rhys Darby on Their Pirate Love Story's Sincere Finale — Q&A” (英語). IndieWire. 2022年4月19日閲覧。
  5. ^ Rich, Katey (2022年4月21日). “Can This Pirate Comedy Bring Real Romance Back to TV?” (英語). Vanity Fair. 2022年4月21日閲覧。
  6. ^ a b “David Jenkins and Garret Basch talk Taika Waititi as Blackbeard and OUR FLAG MEANS DEATH”. YouTube. Comics Beat (2022年3月1日). 2022年4月19日閲覧。
  7. ^ a b c Del Rosario, Alexandra (2022年2月16日). “'Our Flag Means Death' Stars Rhys Darby & Taika Waititi Talk Reuniting For "Outlandish" HBO Max Comedy, Possible 'What We Do In The Shadows' Cameos” (英語). Deadline. 2022年4月21日閲覧。
  8. ^ fresh pair of iis (3 March 2022). Our Flag Means Death Creator and EP Talk About Not Wanting To Make 'Trauma Porn' for People of Color (Video) (アメリカ英語). 0:56 該当時間:. 2022年4月19日閲覧。
  9. ^ a b “HBO Max Orders Period Comedy 'Our Flag Means Death' From Taika Waititi & David Jenkins”. Deadline Hollywood (2020年9月15日). 2020年9月21日閲覧。
  10. ^ a b DeAngelo, Mike (2022年3月3日). “Taika Waititi & Rhys Darby Talk 'Our Flag Means Death,' 'Thor: Love And Thunder' & More [The Discourse Podcast]”. theplaylist.net. 2022年5月25日閲覧。
  11. ^ “Rhys Darby To Headline Taika Waititi's HBO Max Period Comedy Series 'Our Flag Means Death'”. Deadline Hollywood (2021年1月5日). 2021年1月5日閲覧。
  12. ^ a b “Taika Waititi To Star In HBO Max Period Comedy Series 'Our Flag Means Death”. Deadline Hollywood (2021年4月30日). 2021年4月30日閲覧。
  13. ^ Rosen, Lisa (2022年6月7日). “Sure, 'Our Flag Means Death' has pirates. But it's really a workplace relationship show” (英語). Los Angeles Times. 2022年6月8日閲覧。
  14. ^ “'Our Flag Means Death': Rory Kinnear, Kristian Nairn & Vico Ortiz Among Six Cast In HBO Max Period Pirate Comedy”. Deadline Hollywood (2021年6月22日). 2021年6月21日閲覧。
  15. ^ “'Our Flag Means Death': HBO Max Comedy Adds Five To Cast”. Deadline Hollywood (2021年7月1日). 2021年7月2日閲覧。
  16. ^ White, Peter (2021年8月4日). “Leslie Jones & Nat Faxon Join HBO Max's Pirate Comedy Our Flag Means Death” (英語). Deadline Hollywood. Penske Media Corporation. 2022年2月16日閲覧。
  17. ^ Del Rosario, Alexandra (2021年8月20日). “Fred Armisen & Samba Schutte Board HBO Max Pirate Comedy Our Flag Means Death As Recurring” (英語). Deadline Hollywood. Penske Media Corporation. 2022年2月16日閲覧。
  18. ^ Sosland, Zachary (2022年2月22日). “'Our Flag Means Death': Release Date, Trailer, Cast and Everything We Know So Far”. Collider. 2022年3月8日閲覧。
  19. ^ Peterson, Karen M. (2022年4月29日). “How 'Our Flag Means Death' Designers Mixed History With Broad Theatricality” (英語). Variety. 2022年5月1日閲覧。
  20. ^ “Soundtrack Album for HBO Max's 'Our Flag Means Death' to Be Released” (英語). Film Music Reporter (2022年5月5日). 2022年5月5日閲覧。
  21. ^ Rich, Katey (2022-06-01). “Our Flag Means Death's Season 2 Renewal: The Sigh of Relief Heard 'Round the Internet” (英語). Vanity Fair. https://www.vanityfair.com/hollywood/2022/06/our-flag-means-death-season-2-renewed 2022年6月1日閲覧。. 
  22. ^ Oddo, Marco Viddo (2022年6月9日). “'Our Flag Means Death' Season 2: Taika Waititi Reveals Production Start Date [Exclusive]” (英語). Collider. 2022年6月9日閲覧。
  23. ^ “Our Flag Means Death: HBO Max Pirate Comedy With Taika Waititi & Rhys Darby Gets Premiere Date, Trailer”. Deadline Hollywood. Penske Media Corporation (2022年2月16日). 2022年3月8日閲覧。
  24. ^ “Max Original Comedy Series OUR FLAG MEANS DEATH, From Creator David Jenkins And Emmy®-Nominated Executive Producer Taika Waititi, Debuts March 3”. WarnerMedia. 2022年3月27日閲覧。
  25. ^ “Shows A-Z – our flag means death on hbo max”. The Futon Critic. 2022年5月7日閲覧。
  26. ^ David (2022年3月24日). “Our Flag Means Death Episode 11 Date de sortie aux États-Unis, Royaume-Uni, Mises à jour de la saison 2, où regarder, spoilers” (フランス語). 45Secondes. 2022年3月27日閲覧。
  27. ^ "Our Flag Means Death: Season 1". Rotten Tomatoes. Fandango Media. 2022年3月24日閲覧。
  28. ^ "Our Flag Means Death: Season 1". Metacritic. Red Ventures. 2022年3月8日閲覧。
  29. ^ “All of "Our Flag Means Death's" Impressive Rankings”. The Geekiary. 2022年4月19日閲覧。
  30. ^ Rude, Mey (2022年3月24日). “With Gay Pirates, 'Our Flag Means Death' Revolutionizes Queer TV” (英語). Out. 2022年4月20日閲覧。
  31. ^ Alexandra Iciek (2022年4月11日). “'Our Flag Means Death' subverts standards of queer representation through authenticity • AIPT” (英語). 2022年4月20日閲覧。
  32. ^ Laman, Douglas (2022年4月7日). “How 'Severance' and 'Our Flag Means Death' Deliver Unique and Thoughtful Queer Representation” (英語). Collider. 2022年4月20日閲覧。
  33. ^ Herd, Dani (2022年3月29日). “Not Just Queer Rep, but Queer Joy: A Deeper Look at the Multiple Romances of 'Our Flag Means Death'” (英語). Collider. 2022年4月20日閲覧。
  34. ^ Tricarico, Angela (2022年4月20日). “Taika Waititi's 'Our Flag Means Death' is one of HBO Max's best original series — here's why the pirate comedy is worth a subscription” (英語). Business Insider. 2022年4月21日閲覧。
  35. ^ Sarappo, Emma (2022年4月9日). “The Shadow That Queerbaiting Casts on Gay Romance” (英語). The Atlantic. 2022年4月20日閲覧。
  36. ^ Cejer, Autumn (2022年3月27日). “Our Flag Means Death Shows That TV Has No More Excuses For Queerbaiting” (英語). ScreenRant. 2022年4月20日閲覧。
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