低木ていぼくとは、樹木の便宜的な区分の1つである。一般的には、高さ2–3メートル (m) 以下の木本であり、ふつう基部で分枝して主幹が明瞭ではない。灌木[1][2][3][4]潅木[5](かんぼく)、ブッシュ[6]ともよばれる。森林においては、低木層を形成する。例として、ハイマツナンテンノイバラアジサイアオキなどがある。

典型的な低木であるアジサイ

低木に対する用語は高木である。また高さや木化の程度に基づいて亜低木(半低木)や矮性低木(小低木)を分けることもある。ただしこれらの区分はおおよそであり、また定義も一定していないため、同一植物が異なる区分に分類されることもある[7][8]

定義 編集

生物学における低木 編集

低木 編集

生物学においては、一般的に成長した状態で高さ2または3メートル以下であり、またふつう根元または地下部で複数の幹に分枝して主幹が明瞭ではない樹木低木とよぶ[1][2][3][8]。狭義には、高さ0.3メートル以上のものを指し、森林においては、低木層(shrub layer)を形成する[1][9]。低木層が最上層となる植生は、低木林(shrub)とよばれる[10]。日本で見られる低木の例として、ハイマツシモクレンナンテン(下図1a)、ボタンノイバラ(下図1b)、マユミミツバウツギサンショウ(下図1c)、ジンチョウゲアジサイヤマツツジアオキ(下図1d)、クチナシヤツデ(下図1e)などがある[11]

亜低木 編集

低木と同様の高さ、形態であるが、茎の下部または基部のみが木化している植物は、亜低木(半低木、亜灌木[12]、半灌木[13]、undershrub, subshrub, suffruticose plant)ともよばれる[1]。草本と木本の中間的な植物である[1]。例としてはヤマブキ(下図1f)、モミジイチゴ(下図1g)、ヤマハギ(下図1h)、フヨウコウヤボウキハマギクなどがある[1][12]

矮性低木 編集

狭義の低木同様、主幹がはっきりしない木本であるが、高さがおよそ30センチメートル以下の植物は、矮性低木(小低木、匍匐性低木、dwarf shrub)とよばれることがある[1]植生においては、草本層を構成する。例としてはツルシキミ(下図1f)、ツルツゲヤブコウジ(下図1g)、コケモモ(下図1h)、イブキジャコウソウ(下図1i)などがある[1]高山では、矮性低木を主とする群落が見られることが多い[1]

ラウンケルの生活型 編集

クリステン・ラウンケルChristen C. Raunkiær)は、休眠型に基づいて植物の生活型を類別した (Raunkiaer 1908)[14]。その中で、休眠芽を高さ25センチメートル以上につける植物を地上植物(挺空植物、phanerophyte)とし、さらに以下のように細分している。このうち、nanophanerophyte に低木の訳語を充てることがある[14]

  • macrophanerophyte(大型地上植物、大高木)… 休眠芽の位置が高さ30メートル以上。
  • mesophanerophyte(中型地上植物、中高木)… 休眠芽の位置が高さ8メートルから30メートル。
  • microphanerophyte(小型地上植物、小高木)… 休眠芽の位置が高さ2メートルから8メートル。
  • nanophanerophyte(微小型地上植物、矮形地上植物、低木)… 休眠芽の位置が高さ25センチメートルから2メートル。

管理・植栽における低木 編集

緑地管理などにおける低木の定義は、省庁や自治体によってさまざまなものがある。国土交通省では、高さ3メートル以上の樹木を高木、1から3メートルの樹木を中木、1メートル以下の樹木を低木とすることが多い[15][16]環境省の「かおりの樹木データ一覧表」では、高さ5メートル以上の樹木を高木、2から5メートルの樹木を中木、2メートル以下の樹木を低木としている[17]。低木の定義として、他にも植栽時に0.3メートル以上で成木では3メートル以下のもの[18]、植栽時に0.3から1メートルであるもの[19]、などがある。

脚注 編集

出典 編集

  1. ^ a b c d e f g h i 清水建美 (2001). “高さと形状による分類”. 図説 植物用語事典. 八坂書房. pp. 21–22. ISBN 978-4896944792 
  2. ^ a b 巌佐庸, 倉谷滋, 斎藤成也 & 塚谷裕一 (編) (2013). “低木”. 岩波 生物学辞典 第5版. 岩波書店. p. 955. ISBN 978-4000803144 
  3. ^ a b "低木". デジタル大辞泉. コトバンクより2022年4月10日閲覧
  4. ^ "低木". ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. コトバンクより2022年4月10日閲覧
  5. ^ 春木雅寛 (1982). “潅木類の生態学的研究 (I): 野幌国有林のハイイヌガヤ”. 日本林學會北海道支部講演集 30: 146-148. doi:10.24494/jfshc.30.0_146. 
  6. ^ "ブッシュ". デジタル大辞泉. コトバンクより2022年4月12日閲覧
  7. ^ "高木". ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. コトバンクより2022年4月10日閲覧
  8. ^ a b IAWA(国際木材解剖学者連合)委員会『広葉樹材の識別 IAWAによる光学顕微鏡的特徴リスト』海青社、1998年、90頁。 
  9. ^ 巌佐庸, 倉谷滋, 斎藤成也 & 塚谷裕一 (編) (2013). “低木層”. 岩波 生物学辞典 第5版. 岩波書店. p. 955. ISBN 978-4000803144 
  10. ^ 巌佐庸, 倉谷滋, 斎藤成也 & 塚谷裕一 (編) (2013). “低木林”. 岩波 生物学辞典 第5版. 岩波書店. p. 955. ISBN 978-4000803144 
  11. ^ 馬場多久男 (1999). 葉でわかる樹木 625種の検索. 信濃毎日新聞社. pp. 96–385. ISBN 978-4784098507 
  12. ^ a b 亜灌木. コトバンクより2022年4月10日閲覧
  13. ^ 半灌木. コトバンクより2022年4月10日閲覧
  14. ^ a b 清水建美 (2001). “休眠型による区分”. 図説 植物用語事典. 八坂書房. pp. 7–8. ISBN 978-4896944792 
  15. ^ 都市公園の樹木の点検・診断に関する指針(案)”. 国土交通省. 2022年4月9日閲覧。
  16. ^ 公園緑地工事数量算出要領”. 国土交通省. 2022年4月9日閲覧。
  17. ^ かおりの樹木データ一覧表”. 環境省. 2020年1月19日閲覧。
  18. ^ 5.用語について”. 大田区. 2022年4月10日閲覧。
  19. ^ 2)高木・中木・低木”. 世田谷区. 2022年4月9日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集