潜水艦イ-57降伏せず
『潜水艦イ-57降伏せず』(せんすいかんいのごじゅうななこうふくせず)は、東宝が製作し、1959年(昭和34年)7月5日に封切り公開した戦争映画。 白黒、東宝スコープ、パースペクタ・ステレオフォニック・サウンド。
潜水艦イ-57降伏せず | |
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監督 | 松林宗恵 |
脚本 |
須崎勝彌 木村武 |
出演者 |
池部良 三橋達也 平田昭彦 |
音楽 | 團伊玖磨 |
撮影 | 完倉泰一 |
編集 | 黒岩義民 |
配給 | 東宝 |
公開 |
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上映時間 | 104分 |
製作国 |
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言語 | 日本語 |
ストーリー編集
1945年(昭和20年)6月、太平洋戦争にて敗戦濃厚となった大日本帝国海軍において最前線に従軍していた潜水艦「イ-57」は突如ペナンに寄港を命ぜられ、某国の外交官父娘を中立国であるスペイン領カナリー諸島まで輸送する任務を負った。この外交官は早期講和を目指す大本営の秘密工作であり、艦長以下の反対も派遣された参謀の説得により収まった。しかし外交官父娘の正体は一般乗組員には知らされないままであった。「イ-57」はアフリカ沖目指してインド洋を潜行する。途中、敵の駆逐艦による攻撃などにも耐えようやく喜望峰沖まで達した時、連合国はポツダム宣言を発表し「イ-57」の航海は全くの無意味となった…。
概要編集
本作は「潜水艦」を題材とした日本初の映画作品であるとされるが[要出典]、実際には1941年に「潜水艦1号」が製作・上映されている。
海軍出身の松林宗恵監督は、海軍という独特の世界を描くにあたり、なにげない所作や軍装の細部に当たるまで神経を使ったといい、それでもやはり当時の完全再現には至らなかったことを悔やんでいる。艦上撮影に当たっては海上自衛隊の協力を受け、当時日本でただ一隻の潜水艦、「くろしお」[1]を使用。百数十人の撮影スタッフが危険な海上撮影を敢行した。また海上自衛隊はくす型護衛艦や護衛艦わかば他、駆逐艦、内火艇など、草創期の海上自衛隊艦艇を多数出動させて、撮影に協力している。
本作の特撮シーンでは、特撮用に手前が深く造られた小プールが用意され、サンゴや岩場を配置した海底が再現された[2]。このプールの側面には撮影用の小窓が設けられ、魚雷の発射や海底から見た水面描写など、鮮やかな映像の数々が撮影された。イ号を始め、各種船舶も20尺(約7m)を超える大型のミニチュアが用意され、主役のイ号は艦首だけのものや、実物大のブリッジも制作され、迫力のある海戦シーンが織り込まれている。
円谷英二特技監督は、本作においての合成カットに、精度を高めるため白黒作品ながらブルーバック合成を導入。合成画面用にカラーフィルムが使われている[2]。特撮助監督を務めた中野昭慶は打ち合わせで「白黒なのにカラーフィルムを使うってんで、びっくりしました」と述懐しており、この異例の撮影技法には、東宝本社からも「なんでそんなに大量のカラーフィルムがいるんだ」と文句が出たという。しかしカラーフィルムをモノクロに変換するというこの手法によって、ラストでの艦上の隊員、これを覆う水柱など、より明るくクリアでシャープな画像が実現されることとなった[2]。
スタッフ編集
≪本編≫
- 監督:松林宗恵
- 撮影:完倉泰一
- 美術:清水喜代志
- 録音:刀根紀雄、宮崎正信
- 照明:森弘充
- 音楽:團伊玖磨
- 助監督:清水勝也
- 編集:黒岩義民
- 現像:キヌタ・ラボラトリー
- 考証指導:板倉光馬(名義は「板倉秀暢」[3])、藤田和彦
- 製作担当者:島田武治
≪特殊技術≫
キャスト編集
- 艦長・河本少佐:池部良
- 先任将校・志村大尉:三橋達也
- 機関長・清水大尉:三島耕
- 軍医長・中沢中尉:平田昭彦
- 通信長・足立中尉:岡豊
- 航海長・永井中尉:土屋嘉男
- 甲板士官・山野少尉:久保明
- 掌水雷長・太田兵曹長:織田政雄
- 竹山上曹:南道郎
- 小林上曹:中島元
- 金原上曹:大村千吉
- 前田一曹:宇畄木耕嗣
- 丸田上水:石田茂樹
- 原田上水:越後憲三
- 野村上水:上村幸之
- 阿部一水:多川譲二
- 伝令:荒木保夫、勝部義夫
- 聴音兵:永島寛、細川隆一
- ペナン基地隊司令官・秋山少将:高田稔
- 軍令部参謀・横田大佐:藤田進
- 副官・三宅大尉:伊藤久哉
- 特攻隊員・遠藤:瀬木俊一
- 伊原二曹:伊原徳
- イ-57乗組員:伊藤実、岩本弘司、大前亘、鹿島邦夫、加藤茂雄、川村郁夫、権藤幸彦、鈴木孝次、中島春雄、古田俊彦、若松明
- ペナン基地の従兵:井上大助
- 外交官・ペルジェ:アンドリュー・ヒューズ
- その娘・ミレーヌ:マリア・ラウレンティ[4]
関連項目編集
- 日本海軍潜水艦としてくろしおの映像が使用されている。また池部良が潜水艦長として出演。
- 『太平洋奇跡の作戦 キスカ』(1965年、丸山誠治監督)
- 本作品の、アフリカ沖を航行中にイ-57号が、ブラックバーン スクアと思われる英軍機から空襲を受ける特撮シーンが流用されている。
脚注編集
参考資料編集
- 『東宝特撮映画全史』(東宝)
- 『潜水艦イ-57降伏せずDVD』(東宝)