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無腸動物(むちょうどうぶつ、Acoelomorpha)は、プラヌラに似た特徴を持つ動物の分類群で、従来は扁形動物門に分類されていたが、 Jaume BagunaとMarta Riutortによって左右相称動物の新しい門として分離された[1]。2007年の研究によって、側系統群無腸目 (Acoela)と皮中神経目 (Nemertodermatida)に分割された[2]。さらに珍渦虫と近縁とする説も有力である[3][4][5][6]。その場合、珍無腸動物門 Xenacoelomorphaを設立し、その1亜門[7]または1綱、無腸綱[8]として、その下位に置かれることもある。

無腸動物
サンゴの一種Plerogyra sp.上に集まる Waminoa sp.
サンゴの一種Plerogyra sp.上に集まる Waminoa sp.
分類
: 動物界 Animalia
亜界 : 真正後生動物 Eumatazoa
階級なし : 左右相称動物 Bilateria
: 珍無腸動物門 Xenacoelomorpha
亜門 : 無腸動物亜門 Acoelomorpha
Ehlers, 1985

ほぼ全て海産で、堆積物の粒の間に住む間隙性のもの、プランクトンのように泳ぐもの、藻類の上を這い回るものなどがある。無腸目は平衡胞を持つ。これは恐らく重力の方向に対して体を定位するのに役立っている。その体が柔らかいことによって、分類が困難となっている[9]

生体構造編集

非常に小さく平たい生物で、通常は2 mm以下の長さである(Symsagittifera roscoffensisは15 mm程度である)。は持たない[10]消化は、合胞体によって行われ、そこでは取りこまれた食物の周りに小胞が形成される。消化のための腔所を裏打ちする上皮細胞はないが、口から合胞体に導く短い咽喉を持つものはある。(この門に属する動物以外は、寄生性であるサナダムシなどの少数の例外を除いて、大多数の左右相称動物は上皮細胞に裏打ちされた腸を持っている)

無腸動物は多くの点で扁形動物に似ているが、腸がない以外にもより単純な構造を持っている。扁形動物と同様に循環器呼吸器を持たないが、無腸動物はさらに排出器も欠いている。真の神経節もなく、表皮の下に神経の単純なネットワークがあるだけであるが、神経の密度は動物体の後方から前方に向かって、より集中的になっている。感覚器としては平行胞があり、一部の例では非常に原始的な色素の斑点からなる単眼を持ち、光を検出することができる[11]

無腸動物は雌雄同体であるが、生殖腺は持たず、メスの生殖器に繋がる管もない。その代わり、間充織細胞から配偶子が生産される[11]

下位分類編集

 
様々な無腸類。A-D: Isodiametridae科のIsodiametra pulchra、E-G: コンボルータ科のNeochildia fusca、H: Isodiametridae科のAphanostoma sp.
 
様々な皮中神経類。a: Sterreria rubra, b: S. psammicola, c: S. martindalei, d: S. ylvae, e: S. variabilis, f: S. variabilis, g: Nemertinoides elongatus, h: S. rubra, i: N. glandulosum, j: N. wolfgangi

無腸動物は無腸目 Acoela皮中神経目 Nemertodermatidaが含まれる[6]。2018年現在、無腸目には約380種、皮中神経目には約10種が含まれている[6]

以下に科までの下位分類を示す。無腸目の分類はZhang (2011)による[12][13]

人間との関わり編集

海水魚を飼育する際に、珊瑚や、石(リビングブロック)、海藻などに紛れ込んでいる場合があり、水槽内でたびたび大発生する。地道にスポイトで吸い取るか、淡水浴を行うか、捕食する生物を入れる方法で駆除を行う。ネズッポ科の魚類やニセモチノウオ、ほかニシキツバメガイや、ベルベットウミウシなどが有効であるが、個体差があり一概には言えない。淡水浴は最も有効であるが、サンゴなども死滅する恐れがある。他の海水中からリビングブロックや砂利などを持ってくる場合は、淡水中にしばらく浸し、薬剤などで消毒すればよい。

出典編集

  1. ^ Baguñà J, Riutort M (2004) Molecular phylogeny of the Platyhelminthes. Can J Zool 82:168-193.
  2. ^ A Wallberg, M Curini-Galletti, A Ahmadzadeh, U Jondelius (September 2007) Dismissal of Acoelomorpha: Acoela and Nemertodermatida are separate early bilaterian clades. Zoologica Scripta Vol. 36, Issue 5, pages 509–523.
  3. ^ Lundin, K. (1998). The epidermal ciliary rootlets of Xenoturbella bocki (Xenoturbellida) revisited: new support for a possible kinship with the Acoelomorpha (Platyhelminthes). Zoologica Scripta, 27, 263–270.
  4. ^ Raikova, O. I., Reuter, M., Jondelius, U., & Gustafsson, M. K. S. (2000). An immunocytochemical and ultrastructural study of the nervous and muscular systems of Xenoturbella westbladi (Bilateria inc. sed.). Zoomorphology, 120, 107–118.
  5. ^ Hejnol, A., Obst, M., Stamatakis, A., Ott, M., Rouse, G. W., Edgecombe, G. D., et al. (2009). Assessing the root of bilaterian animals with scalable phylogenomic methods. Proceedings of the Royal Society, Series B, 276, 4261–4270.
  6. ^ a b c 中野裕昭 (2018), 珍無腸形動物 ―左右相称動物の祖先に迫る?  in 日本動物学会 (2018). 『動物学の百科事典』. 丸善出版. pp. 86-87. ISBN 978-4-621-30309-2. 
  7. ^ Acoelomorpha 無腸動物亜門 - BiSMaL
  8. ^ a b c 珍無腸動物門 - 岡山県
  9. ^ Petrov A, Hooge M, Tyler S (May 2006). “Comparative morphology of the bursal nozzles in acoels (Acoela, Acoelomorpha)”. J. Morphol. 267 (5): 634–48. doi:10.1002/jmor.10428. PMID 16485278. 
  10. ^ The Platyhelminthes and the Acoela”. 2009年3月21日閲覧。
  11. ^ a b Barnes, Robert D. (1982). Invertebrate Zoology. Philadelphia, PA: Holt-Saunders International. p. 229. ISBN 0-03-056747-5. 
  12. ^ Zhang, Zhi-Qiang (2011-12-23). “Animal biodiversity: An outline of higher-level classification and survey of taxonomic richness”. Zootaxa (Magnolia Press) 3148: 1–237. doi:10.11646/zootaxa.3148.1.1. http://www.mapress.com/zootaxa/list/2011/3148.html 2016年2月3日閲覧。. 
  13. ^ Tyler, S. (2006–2016). “Acoela”. Turbellarian taxonomic database. Version 1.7. 2016年2月3日閲覧。
  14. ^ a b 彦坂–片山智恵; 彦坂暁 (2015). “瀬戸内海産無腸動物 Praesagittifera naikaiensisの飼育システム”. 人間科学研究 (広島大学大学院総合科学研究科) 10: 17-23. http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/3/39144/20160304120320110599/StudiesInHumanSciences_10_17.pdf. 
  15. ^ ワミノアムチョウウズムシに共生している渦鞭毛藻の母系遺伝のメカニズム - 日本動物学会

外部リンク編集