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'''燃料被覆管'''とは、[[原子炉]]で[[燃料ペレット|核燃料]]が放出される[[放射能]]を、外部に漏らさないように封じ込めるために用いられるもので、原子炉の多重防護([[5重の壁]])の一つとされる。

また燃料被覆管の中に[[燃料ペレット]]を一列に積み重ねて挿入したものを、燃料棒という。被覆材には数種類あり、炉心温度や、使用する[[冷却材]]に合わせて使い分けられる。
日本の発電用原子炉で主に使用されているのは、ジルカロイ合金である。
 
==材料==
燃料被覆管に用いる材料は、内側からの高圧および高温に耐え、冷却材との[[化学反応]]を起こさない材質が望ましい。内側からの[[圧力]]は、燃料から放出される気体性の[[核分裂]]生成物によるものである。気体性[[放射性物質]]の発生は、燃料ペレットによりある程度緩和されるが、圧力が上昇し、被覆管が膨張変形することを[[スエリング]]という。
 
また、[[原子核分裂|核分裂反応]]を継続させる上で重要な[[熱中性子]]を吸収しないこと、[[熱伝導率]]が高いこと、加工性がよいこと、燃料の再処理が容易に行えること等も重要な条件である。
 
*'''アルミニウム合金'''<br>
以下の材料が使われる:
*'''アルミニウム合金'''<br>
*'''マグネシウム合金'''<br>
*'''ステンレス鋼'''<br>
*'''ジルカロイ合金'''<br>
 
日本の発電用原子炉で主に使用されているのは、ジルカロイ合金である。
 
===アルミニウム合金===
[[アルミニウム]]の[[融点]]は660℃で、高温を伴う原子炉で使用すれば容易に溶けてしまう上、温度上昇により強度が著しく損なわれるという弱点がある。実験用原子炉の場合、熱出力が小さいため、炉心が高温に晒されることが少ない。よって、中性子の吸収を極力抑え、高温に耐える必要のない材質として、アルミニウム合金を使用する場合がある。
 
*'''マグネシウム合金'''<br>
===マグネシウム合金===
[[マグネシウムノックス]]合金([[マグノックスネシウム]])合金の一種)は、原子炉での400℃を超える高温高圧に耐えうる材質として開発された合金で、マグネシウムに[[ベリリウム]]を0.1 %を加えたものである。燃料として[[ウラン|天然ウラン]]を装填できる[[黒鉛炉|黒鉛減速炉]]の燃料被覆材として用いられてきたが、近年ではジルカロイ合金に置き換えられるようになった。マグネシウム合金は水に弱いため、冷却材に[[軽水]]を使用する[[軽水炉]]では、被覆管に穴が開いてしまう恐れがあることから使用されない
*'''ステンレス鋼'''<br>
 
マグネシウム合金は水に弱いため、冷却材に[[軽水]]を使用する[[軽水炉]]では、被覆管に穴が開いてしまう恐れがあることから使用されない。
 
===ステンレス鋼===
[[ステンレス]]鋼は、高温高圧に耐え、化学的にも安定しており、主に[[改良型ガス冷却炉]]や[[高速増殖炉]]で用いられている。中性子の吸収効果が大きいため、軽水炉では使用されていない。
 
なお、原子炉を制御する為の[[制御棒]]の被覆にもステンレス鋼が使用されている。
 
*'''ジルカロイ合金'''<br>
===ジルカロイ合金===
[[ジルコニウム]]は中性子吸収断面積が最小で、ジルカロイ合金は、ジルコニウムに[[スズ]]、[[鉄]]、[[クロム]]、[[ニオブ]]などを含ませた合金である。燃料被覆材としては非常に優れた特性を有するため、現在多くの軽水炉で利用されている。
[[ジルコニウム]]は中性子吸収断面積少ないの最小で、ジルカロイ合金ジルコニウムの特性で、鉄、に[[スズ]]・[[鉄]]・[[クロム]]・[[ニオブ]]などの材質は、ジルコニウムの耐食性向上さ含まめに加えられる。なお、合金である。燃料被覆材としては非常ニオブ優れた特性加え有すため、現在多くは[[ソ連]]製の原子軽水炉で利用されている。
 
中性子の吸収が少ないのはジルコニウムの特性で、鉄、スズ、クロムなどの材質は、ジルコニウムの耐食性を向上させるために加えられる。なお、合金にニオブを加えるのは[[ソビエト連邦|ソ連]]製の原子炉である。
 
==関連項目==