「サイクリックボルタンメトリー」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
Eno (会話 | 投稿記録)
+image from Commons
Eno (会話 | 投稿記録)
→‎理論: 数値を図とあわせておく
3行目:
 
==理論==
もっとも単純な[[電気化学]]系として、Ox + e → Red という反応を考える。ここで、Ox は酸化体、e は電子、Red は還元体を示す。例えば測定物質が[[フェロセン]]であれば、Fe(III) が Ox、Fe(II) が Red となる。また、この系の[[酸化還元電位]]は +1.0.7 V とする。
 
電極電位を +21.01 V から +0.03 V まで負方向に掃引した場合を考えると、
 
# 電極電位が +1.0.7 V よりもずっと高いときは、電極近傍の物質は全て Ox として存在するため、[[電子移動]]は進行しない。ゆえに電流値はほとんど0である。
# 電極電位が +1.0.7 V に近づくと、徐々に電極から Ox への電子移動反応が進行する(上記式が右側に進行する、還元反応)。したがって、電極から電子が流れ出し、結果として電流値が負に増大する。この付近を電子移動律速という。
# 電極電位 = +1.0.7 V で、電極近傍での Ox と Red の濃度が等しくなる。
# 電極電位が +1.0.7 V より低くなると、電極近傍の物質はほとんど Red になるため、電子移動が起こりにくくなり、電流値が減少してくる。ただし、拡散によって Ox が少しずつ電極近傍に運ばれ、これが反応するので、電流値がゼロになることはない。この付近を拡散律速という。
# 電極電位が +1.0.7 V よりずっと低くなると、電流値は拡散によって移動してくる物質量に比例し、ほぼ一定値になる。
 
通常はこのあと、逆方向に +0.03 V から +21.01 V まで電位を掃引すると、Red が十分に安定な場合は上記の逆の反応(酸化反応)が起こり、ほぼ点対称の波形得られる。一方Red が不安定な場合は分解が起こるため電流は流れなくなり非対称な波形となる。この電位の掃引を何度も往復を繰り返し行うこともある。
 
印加した電位を横軸、応答電流値を縦軸とするグラフを描くと、以上の過程により、酸化還元電位付近にピークを持つ、特有の形状を持った曲線である'''サイクリックボルタモグラム''' (cyclic voltammogram) が得られる。
19行目:
この形状から、電気化学反応の機構、あるいは物質の酸化還元電位や拡散係数などが求められる。また、優秀な電子材料には多数の掃引を行った後でもサイクリックボルタモグラムがほとんど変化しないことが要求される。すなわち、掃引回数の増加に従い流れる電流が徐々に少なくなっていく場合は測定の最中にサンプルの分解が起こっていることを示し、酸化還元反応を何度も繰り返し受ける電子材料には不適ということになる。
 
ただし、上記の議論は酸化還元反応に関わる電流([[ファラデー気分解の法則|ファラデーの法則]]に由来する電流、'''ファラデー電流''')のみを考慮しており、[[吸着]]や[[電気二重層]]形成に由来する電流('''非ファラデー電流]]''')の影響は考えていない。
 
==装置構成==