「積乱雲」の版間の差分

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時間がたってくると成長期にある降水セルの雲頂が対流圏上部に達し、氷晶や雨粒なども十分に成長する。よって、これらの雨粒などは上昇気流に逆らって落下運動を始めるのだが、その際に[[摩擦]]によって周辺の空気も一緒に引きずり落とす。これが結果的に[[下降気流]]を発生させ、この下降気流が発生したとき降水セルは(2)の成熟期になる。この段階では一つの降水セルの中で下降気流と上昇気流が共存している状態である。したがって、上昇気流によって下方から運ばれてくる氷晶などと落下中の氷晶が衝突してしまうことになる。この衝突時の摩擦によって[[静電気]]が発生し、これが何度も起こることにより積乱雲が[[電気]]を帯びる。積乱雲と地上の[[電荷]]の違いによって、[[電圧]]が高まると結果的に[[放電]]が起き、これが積乱雲による[[雷]]の始まりでもある。地上で激しい雷雨が起きるのは、この降水セルが成熟期にあることを表す。また、下降気流は雨粒などの摩擦によって生じるほか、氷が乾燥した層を通過する際に[[昇華熱]]によって周りの空気をいっそう冷やし、さらに下降気流が増す。このようなことが次々と起こることから下降気流がどんどん強まるのだ。
 
このような過程を経て強まった下降気流は上空からやってきたことと、今述べたように[[昇華]]によって回りの空気を冷やしているので非常に低温である。結果的にこの下降気流が雲の底に集まり、雲の底は低温なので部分的に高圧状態となる。このような下降気流によって部分的に気圧が高まった場所をメソ・ハイ(メソスケールの高気圧という意味)と呼んでいる。この空気が雲底から地上に向けて一気に流れ出す。最終的には上昇気流よりも下降気流のほうが強まって上昇気流がどんどん弱まってくる。これが減衰期の始まりである。したがって降水セルは収束に向かう。また、メソ・ハイから空気が地上に向けて一気に流れ出すとき、りの比較的暖かい空気と衝突して、冷たい空気が暖かい空気に入り込むような形をする。これはまさに[[寒冷前線]]の発生のメカニズムに似ている。したがってこの部分では小型の寒冷前線のようなものが起き、この線に沿って突風が吹いたりもする。この線をガストフロントという。このとき、地上ではこのように下降気流が増すことによって、結果的には降水セルが死滅し、残っていた雨粒がしとしとと降るなどして最後に雲が消えるのである。こうして降水セルは一生を終えるのだ
 
ガストフロントがある証拠に、実際激しい降水が数分続いてその後突風を伴い、降水が弱まるという気象現象は多く観測されている。しかし、今述べた降水セルの例はかなり活発な積乱雲において起こることで、降水セルによっては(1)からすぐに消滅に向かうこともある。降水セルがきれいに三段階を経て一生を終えるかはそのときの大気の状態によるのだ。
 
また、先ほど述べた原因によって起こる下降気流が極端に強くなり、地上に被害をもたらすこともある。この積乱雲を伴う強い下降気流が極端に強い場合、これを[[ダウンバースト]]という。
 
降水セル及び積乱雲が一生を終えても、先ほど述べたガストフロントは残ることがある。ガストフロントはメソ・ハイが原因で起きたものなので、周りより冷たい空気からなることは明らかである。だから積乱雲が消滅してもガストフロントだけが残るのである。ガストフロントにさらに湿った暖かい空気が流れ込んだ場合、再びその部分だけ上昇気流が発生し、結果的には新たな積乱雲が発生してしまうこともある。すなわち、もとの積乱雲を原因に新たな積乱雲が発生するので、積乱雲の世代交代を行うのだ。積乱雲の世代交代には次の様な場合もある。積乱雲と積乱雲が二つ並行してある場合、両者の積乱雲がメソ・ハイによって下降気流を伴う。下降気流と下降気流がぶつかると空気は上にいくしかなく、結果的に上昇気流が発生して積乱雲が発生することもあるのだ。
 
このような世代交代は[[衛星画像]]で見てみると良く分かる。一つの積乱雲の塊を先頭に、その後ろにいくつもの積乱雲が続いている。これは今述べたようなメカニズムによって発生することが多い積乱雲である。