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車側灯→車側表示灯、扉開閉用→戸閉め表示灯
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'''車側表示灯'''(しゃそくひょうじとう)とは鉄道車両において、機器の動作が正常であるかどうかの確認の為、'''車'''両の'''側'''面に'''表示'''させる'''灯'''火の事である。これは「鉄道車両用語の規格JIS E 4001」における正式名称であるが、鉄道雑誌などの通称では車側灯(しゃそくとう)が一般的である。ま現版本文中では以後車側灯と表記する。[[駅員]]の略語では側灯(そくとう)、消灯した時は側灯滅(そくとうめつ)と呼ぶ。
 
最もよく使われる車側表示灯は、旅客用車両が自動ドアを開閉する際、ドアが閉まっていない間に赤色灯を点灯し続けるもの「戸閉め表示灯」である。これは取り付け位置の関係から、鉄道業者や鉄道趣味人だけでなく一般の利用客も、毎回何気なく目にしている、最もよく知られている鉄道灯火標識の一つである。この他に非常用や電気機関用の車側表示灯もあり、追って説明する。
 
[[画像:Car-side-pilot-lamp.jpg|300px|thumb|right|車側表示灯]]
 
== 車側表示灯の歴史 ==
=== 起源 ===
実用化当初の鉄道はまだ安全技術が不安定であり、脱線事故が比較的多く発生していた。従って[[車掌]]の役目は最後部の乗車や接客だけでなく、走行中に列車全体を監視し、特定の車両だけおかしな揺れ方(脱線の前兆)をしていないか、確認し続ける事が必要であった。
 
夜間には列車全体(特に貨車)の確認が困難なため、[[イギリス]]では全ての車両の側面に赤色灯を設置し(赤は人間にとって注意力を引き易い色であると同時に、当時の色ガラス製造技術では、比較的安価に作る事ができた)、特定の赤色灯だけおかしな揺れ方をしていないかで列車の異常を監視した。日本の鉄道技術はイギリスの輸入技術を基本に作られたが、こうした灯火の使用方法から、車側表示灯が発達していったと考えられる。
 
=== 形状などの変遷 ===
* 初期の車側表示灯は車体側面に埋め込まれず、ドングリの実の様な楕円形物が飛び出し、前後に赤色灯が設けられていた。これは昔の普通鋼車体が現在より頑丈に作られており、車側表示灯を埋め込むことが困難だったと思われる。こうした形状を[[魚雷]]になぞらえて「[[水雷]]型」と呼び、[[ウインドシル]]や[[ウインドヘッダー]]、[[リベット]]と共に、旧型電車のデザインを魅力付ける情景として捉えることも多い。
* やがて[[戦前]]頃までに技術が進むと、車側表示灯は車体に埋め込まれるようになり、収納する[[白熱灯]]の関係からか、横長長円形が基本となった。
* [[1960年代]]後半に[[全金属製車体]]や[[新性能電車]]が登場すると、他にも非常に多くの新機軸が随所に盛り込まれた。車側表示灯も例外ではなく、真円形が基本となった。また従来は外バメ式で車側表示灯の外側に縁があったが、内バメ式で車側表示灯の外側に縁がないタイプも登場した。内バメ式の場合、車内の網棚の高さを調べることにより、内蓋を見つける事が比較的容易である。
* [[1980年]]頃からは見易さま向上を目指し、再度長円形が普及してきた。しかしこれは前述の横長長円形でなく、縦長長円形も登場している。これは車側表示灯を最も使う車掌(つまり後ろ)から見た場合、点灯部の表面積が横長長円形や真円形より広く見えるからである。[[日本国有鉄道|国鉄]](現:[[JRグループ]])では[[国鉄201系電車|201系]]から採用された。
* 円形車側表示灯の変形バリエーションとしては、真円形の外バメカバーの中に、横長長円形の車側表示灯が入ったものがあり、車体側面に多数のコルゲートを付けていた、少し前の世代のステンレスカーなどに見られる。
* やがて[[白熱灯]]にかわって[[発光ダイオード|LED]]の実用化の幅が広がると、鉄道関係の表示類にもLEDが進出してきた。鉄道車両の表示類としては[[運転席]]の動作表示灯→車側表示灯→[[尾灯]]の順に採用され、[[阪急電鉄]]の[[阪急6300系電車|6330系]]に採用されたのが、日本初のLED式車側表示灯である可能性が高い(出典:「[[鉄道ファン (雑誌)]]」新車ガイド)またLEDは白熱灯に比べ灯具の収納スペースをコンパクトに出来る為、車側表示灯の表面が平らになっている特徴を持つ。この為後からLED式車側表示灯に交換された車両でも、表面を見ることで判別は容易である。
* 従来の灯具の構造は、白熱灯の周囲に赤透明カバー(当初は[[ガラス]]、後に[[プラスチック]])、次いでLEDの周囲に赤透明カバーとなったが、LEDは自身が赤く光るため、カバーを赤くする必要がない。これにより[[国土交通省]]で定められていた、[[尾灯]]などの赤色灯に関する規定が変更された為、LEDの周囲を透明カバーとした車側表示灯が[[2003年]]頃から登場している。この透明カバー式は点灯していない(扉が閉まっている)状態では赤色が全くないため、LEDを取り付けている[[基板]]の緑が透けて、薄緑色の車側表示灯に見える。
* また近年旅客車の側面に付けられるようになった機器として、種別・行先の表示器が挙げられるが、[[京王6000系電車]]や[[東京都交通局5300形電車]]等には、車側表示灯と行先表示をデザイン的に一体化させた意匠が見られる。
* ここまで説明して来た形状は全て円形だが、四角形の車側表示灯も国鉄の客車や[[近畿日本鉄道]]などに見られる。類似した形状で三角柱形もあるが、これは横から見ると三角なのでなく、三角柱の一面が全て車体に接する形状をしている。この為真下から見れば三角だが、正面や真横から見れば結局四角である。
 
== 用途による分類 ==
[[画像:Odakyu-HiSE-Door.jpg|thumb|250px|ドア右上の2つ並んでいるランプが車側表示灯。上の点灯している方が扉開め表示灯、下の消灯している方は非常用]]
 
=== 扉開め表示灯 ===
旅客用の自動ドアを持つ鉄道車両は法規により、赤色車側に光る戸閉め表示灯の設置が義務付けられている。
 
手動ドア車両には必要ないが、手動ドアが自動ドアに改造された場合は車側戸閉め表示灯が増設される。現在の日本で一般的な通勤通学用に製造された電車では、自動ドア改造前に手動ドアだった車両自体は殆ど存在せず、[[三重交通]]で製造された[[三重交通サ360形電車|130形]]と[[北勢鉄道モハニ50形電車|220形]](形式番号はいずれも近鉄手動ドア時代)が、[[近鉄内部線|近鉄内部・八王子線]]と[[三岐鉄道北勢線]]に生き残っている程度である。
 
また[[路面電車]]も客扱い方法の観点から車側戸閉め表示灯の設置義務はない。ただし路面電車と[[高速電車]](この場合は路面電車でない鉄道を意味する)両方の条件を備える路線では、車側戸閉め表示灯つきの車両が路面区間を、あるいは車側戸閉め表示灯なしの車両が[[専用軌道]]を走行するケースもある。
 
=== 戸閉め知らせ灯 ===
扉開め表示灯に似た働きをする表示灯として、運転室の戸閉め知らせ灯(または運転士知らせ灯とも呼ばれる)が挙げられる。車側戸閉め表示灯は扉が開くと点灯・閉まると消灯するが、戸閉め知らせ灯は逆で扉が閉まると点灯・開くと消灯する。
 
運転士にとっては最も大切な表示類の一つであるため、速度計や圧力計などを配置したメーターパネルの中央に置かれる事が多い。鉄道会社によっては車両走行に関する表示灯列(電車なら「[[並列]]」や「[[弱め界磁]]」などを表示する。一般に運転士から見て左側か、メーターパネルの上部が多い)に組み込まれていることもあるが、これは車掌からの押しボタン合図で運転士が出発する事を前提にしているため、運転士の視線からやや離れた所でも業務上支障ないからである。
 
また[[東日本旅客鉄道|JR東日本]]を始めとする一部の車両では、通常の戸閉め知らせ灯以外に編成両数分の戸閉め知らせ灯も装備していたり、多機能式[[液晶ディスプレイ]]に電圧などの各種情報を表示しつつ、扉開閉時に各車両の戸閉め状態を表示するものもあり、これも(側面で表示情報としてないが)一種の車側戸閉め表示灯と言え同じとなっている。
 
=== 非常用 ===
扉開め表示以外の目的で設置される。その殆どが故障表示用で、営業線上では点灯はまず見られないが(全て正常に運行していれば点灯しない)、車庫における点検中に点灯が見られる場合もある。点灯条件としては以下のものが挙げられる。
* [[過電流]]、[[過電圧]]
* [[電気指令式ブレーキ]]の制動不緩解(ブレーキがゆるまない)
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* 車内からの非常警報装置発報
 
扉開め表示灯が赤である為、非常用には他の色が使われる。燈、黄、緑が多く、白や青なども使用される。
 
=== 電気機関車の車側表示灯 ===
[[客車]]の[[暖房]]は当初、[[電気機関車]]でも蒸気暖房を使用していたが、時代のニーズから電気暖房を使用する事になり、電気機関車では当然、半永久的に電気が供給可能な機関車から回線を通すことになった。ところが暖房用の[[ジャンパー線]](連結用の電気栓)に通電していた時に連結手が触れた際、[[感電]]死する事故が発生したため、通電の有無を連結手に知らせる安全対策が必要となった。
 
こうして旅客用電気機関車に設置された電気暖房用車側表示灯は、ジャンパー線に通電していない時に黄色灯が点灯する。
 
機関車の後部に位置する連結手から見る必要がある為、灯具は車体方向に対し前後に点灯する構造になっており、旅客車両用の様な真横からの視野は考慮されていない。
 
== 車側表示灯の数 ==
[[Image:Tokyu-8000 car-side-pilot-lamp.jpg|thumb|right|240px|非常警報、戸閉、過負荷およびブレーキ(BC)不緩解と4個の車側表示灯がある[[東急8000系電車|東急8000系]]。]]
現在日本で使用されている旅客用車両なら、殆どの場合自動ドアを持つ為、[[客車]]および電車の[[付随車]]では、扉開め表示灯が最低一つ装備されている。付随車の一部および[[動力車|電動車]]では故障表示用も必要とする為、二つ装備されている。中には三つ装備している電動車もあり、[[東京モノレール500形電車]]などは四つも装備されていた。
 
しかし非常用車側表示灯は用途別にせずとも、まとめて一つ装備されていれば充分という事もあり、近年ではこれを統廃合した車両も見られる。[[ステンレスカー]]や[[アルミカー]]では車体材料の再加工が難しいという事情もあり、こうした撤去済の車側表示灯は、[[普通鋼]]車体の様に全体を消去せず、蓋をした跡が残っており、[[東急8000系電車]]や[[東京地下鉄01系電車|東京メトロ0系シリーズ]]が代表例として挙げられる。またメトロ0系シリーズは床下にも車側表示灯が存在し、ブレーキを非常用位置まで入れると、車体の下に緑色灯が点灯する。
 
=== 複数ある場合の取り付け位置 ===
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: 取り付け位置を集約した為、点検蓋なども一つに集約できるというメリットがある。[[東京地下鉄6000系電車]](当時は営団)や[[京王6000系電車]]などから、広く使われる様になった。
 
車側表示灯の目的別に見た取り付け高さでは、扉開め表示灯が一番上になる。これは同じ高さで並んでいると、どちらの意味で車側表示灯が点灯したかわかり難く、また使用頻度から扉開め表示灯を高い位置にし、より見易くしておく必要があるためと考えられる。
 
[[Category:鉄道車両工学|しやそくひようしとう]]