「ノンフィクション「逆転」事件」の版間の差分

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**「その者の社会的活動の性質あるいはこれを通じて社会に及ぼす影響のいかんによっては、その社会的活動に対する批判あるいは評価の一資料として」
**「その者が…社会一般の正当な関心の対象となる公的立場にある人物である場合には、その者が公職にあることの適否などの判断の一資料として」
 
と過去の判例を挙げた上で、
 
:本人を特定する形で公表が許される場合もあると指摘し、公表することが不法行為を構成するか否かは、「その者のその後の生活状況のみならず、事件それ自体の歴史的又は社会的な意義、その当事者の重要性、その者の社会的活動及びその影響力について、その著作物の目的、性格等に照らした実名使用の意義及び必要性をも併せて判断すべき」ものであり、「前科等にかかわる事実を公表されない法的利益が優越するとされる場合には、その公表によって被った精神的苦痛の賠償を求めることができる」とした。
 
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**事件・裁判から本作が刊行されるまでに、Aが「社会復帰に努め、新たな生活環境を形成していた事実に照らせば…前科にかかわる事実を公表されないことにつき法的保護に値する利益を有して」おり、
**Aは「無名の一市民として生活していたのであって」、「社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として」前科の公表を受忍すべきケースではなく、
**「陪審制度の長所ないし民主的な意義を訴え、当時のアメリカ合衆国の沖縄統治の実態を明らかにしようとする」作品の目的を考慮しても、実名を使用しなければその目的が損なわれると解することはできない。その理由として本件作品が歴史的事実そのものの厳格な考究をしたものではなく、一部原告の想像で書かれた部分や被告が事実でないと主張している部分があり、原告自身を含む陪審員は仮名で記載されていることをあげている。
*本件著作は、右の目的のほか、原告ら四名が無実であったことを明らかにしようとしたものであるから、本件事件ないしは本件裁判について、原告の実名を使用しても、その前科にかかわる事実を公表したことにはならないという被告の主張に対しては、
**本件著作は、原告ら4名に対してされた陪審の答申と当初の公訴事実との間に大きな相違があり、また、言い渡された刑が陪審の答申した事実に対する量刑として重いという印象を強く与えるものではあるが、原告が本件事件に全く無関係であったとか、原告ら4名の行為が正当防衛であったとかいう意味において、その無実を訴えたものであると解することはできない
:などとして、以上を総合して考慮して、実名を使用して前科を公表したことを正当とするまでの理由はないと判示している。
 
==関連項目==