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[[数学]]において'''列'''(れつ、<em lang="en">sequence</em>)とは、対象あるいは事象が羅列されたものを順番に並べたものである。順番に並べるというのは、どの要素間においてもその序列が矛盾無く有効に定められていること(自然数による全順序あるいは線型順序)を言う。列の構成要素は、列の要素あるいは'''項'''(こう、{{lang|en|term}})と呼ばれ、項の数をその列の項数あるいは長さという。
{{see also|数列}}
列を考えるとき、必ずしも何らかの決まった集合から同様のものが取り出されている必要は無いのであるが、大抵の場合は、ある集合 ''X'' の元であるなど、一定の性質を持つものを選んで並べる。このとき、列の各項が、[[数]]である列を[[数列]]、整数である列を'''整数列'''、[[多項式]]である列を'''多項式列'''といったように、「何々」の列を省略して「何々」列と呼ぶことは多い。適当な「文字」集合から作った列は'''文字列'''({{lang|en|string}} あるいは'''語''' {{lang|en|word}})、ある空間のの列を言うのであれば、'''点列'''である。英語では単に {{lang|en|"''sequence''"}} という場合にも、日本語では数列や点列のような形容を伴うことが多い
 
たとえば (C,Y,R) は[[文字]]の列あり列としては順序が重要だから (Y,C,R) はまた別の文字列である。こと見なさは、列としては順序が重要だからである。列はこの例のように項数が有限である'''有限列'''(ゆうげんれつ、<em lang="en">finite sequence</em>)と、正の[[偶数]]全体の成す列 (2, 4, 6, ...) のように項数が無限大(可算無限)である'''無限列'''(むげんれつ、<em lang="en">infinite sequence</em>)とがある。
 
== 級数定義 ==
列を考えるとき、必ずしも何らかの決まった集合から同様のものが取り出されている必要は無いのであるが、大抵の場合は、一定の性質を持つものを選んで並べる。このとき、列の各項が、[[数]]である列を[[数列]]、整数である列を'''整数列'''、[[多項式]]である列を'''多項式列'''といったように、「何々」の列を省略して「何々」列と呼ぶことは多い。ある空間の点の列を言うのであれば、点列である。
もう少し形式的に、項が[[集合]] ''S'' にを持つ'''有限列'''とは、適当な自然数 ''n'' についての {1, 2, ..., ''n''} から ''S'' への[[写像]]のことである。同様に、''S'' における'''無限列'''とは、自然数全体のなす集合 {1,2,...} から ''S'' への写像である。
: <math>a\colon \{1,2,\ldots,n\}\to S</math>
のことである。このとき、''i'' &isin; {1, 2, ..., ''n''} に対して、''i'' の写像 ''a'' による像 ''a''(''i'') は[[添字記法]]にしたがって ''a''<sub>''i''</sub> などと記されるのが通例である。同様に、''S'' における'''無限列'''とは、自然数全体のなす集合 '''N''' = {1, 2, ...} から ''S'' への写像
: <math>a\colon \mathbb{N}\to S;\ i\mapsto a_i := a(i)</math>
である。
 
列のひとつの記法としては (''a''<sub>1</sub>, ''a''<sub>2</sub>, ...) のように項を列挙する方法がある。また簡単に (''a''<sub>''n''</sub>) と記す方法もしばしば用いられる。動く添字や添字集合を明示するために (''a''<sub>''n''</sub>)<sub>''n''</sub> や (''a''<sub>''i''</sub>)<sub>''i''=1,2,...,''n''</sub>, (''a''<sub>''n''</sub>)<sub>''n''&isin;'''N'''</sub> などのように記すこともある。
英語では単に<em lang="en">sequence</em>という場合にも、日本語では数列や点列ということが多い。日常語の列のイメージによる違和感が大きいからである。
: [[完全列]]のようなものは、項の並びのほかに項と項の間の関係性に意味があるため、ここでの記法とは異なり、項をノードとする直線状の有向グラフ(図式)を用いて記される。このようなものは[[鎖 (数学)|鎖]](さ、{{lang|en|chain}})や系列(けいれつ、{{lang|en|series}})などとも呼ばれる。
 
有限列 (''x''<sub>1</sub>, ''x''<sub>2</sub>, ..., ''x''<sub>''n''</sub>) のことをその項数 ''n'' に対して ''n''-'''[[タプル|組]]''' {{lang|en|(tuple)}} と呼ぶことがある。有限列のなかには、何の項も含まない'''空の列''' (''null'' or ''empty sequence'') ( ) も含める。また、[[整数]]全体のなす集合からある集合への写像を
== 例と記法 ==
: (..., ''a''<sub>&minus;2</sub>, ''a''<sub>&minus;1</sub>, ''a''<sub>0</sub>, ''a''<sub>1</sub>, ''a''<sub>2</sub>, ...)
数学においては、いくつかのそしてまったく異なる列の記法が存在する。たとえば[[完全列]]のような列は以下に記すような記法ではカバーしていない。
有限列ことをその項数 ''n'' よう対し書い ''n''-'''[[タプル|組]]'''(または ''n''-'''対''')と呼ぶことがある。また[[整数]]全体のなす集合からある集合への写像を'''両無限列'''あるいは'''双方向無限列''' {{lang|en|(''doubly'' or ''bi-infinite sequence'')}} と呼ぶ。 これは、[[負の整数]]で[[媒介変数添字記法|添字]]付けられた列を正の整数で添字付けられた列に接いだものと考えることができることによる名称である。
 
ある与えられたのひとつの記法としては (''a''<sub>1''n''</sub>,)<sub>''an''<sub>2</sub>, ...)ように記す方法がある。また簡単に'''部分列'''(ぶぶんれつ、<em lang="en">subsequence</em>)(''a''<sub>''ni''<sub>''k''</sub></sub>)<sub>''k''</sub>記す方法は、残った要素がしばしば用いられとの数列におけ相対的な序列を保つ i.e.
: <math>i\colon \mathbb{N}\to\mathbb{N};\ k \mapsto i_k, \quad (k_1< k_2 \Rightarrow i_{k_1}< i_{k_2}),</math>
ようにして、与えられた列からいくつかの要素を取り去ることによって得られる列
: <math>a'\colon \mathbb{N}\to S;\ k \mapsto a_{i_k}</math>
のことである。
 
== 列の種類と性質 ==
もう少し形式的に、[[集合]] ''S'' に項を持つ'''有限列'''とは、適当な自然数 ''n'' についての {1, 2, ..., ''n''} から ''S'' への[[写像]]のことである。同様に、''S'' における'''無限列'''とは、自然数全体のなす集合 {1,2,...} から ''S'' への写像である。
列の性質は、その列の項が属する集合がどのような構造を持っているかということに大きく依存している。たとえば解析学では、数列をベクトルとみなして演算を与えたり、実数や複素数のなす集合の位相を用いて抽象的あるいは具体的な[[位相空間]]の点に関する点列として調べたりすることができる。
 
=== 代数構造と数列空間 ===
有限列のことをその項数 ''n'' に対して ''n''-'''[[タプル|組]]'''(または ''n''-'''対''')と呼ぶことがある。また、[[整数]]全体のなす集合からある集合への写像を'''両無限列'''あるいは'''双無限列''' (''bi-infinite sequence'') と呼ぶ。 これは、[[負の整数]]で[[媒介変数|添字]]付けられた列を正の整数で添え字付けられた列に接いだものと考えることができることによる名称である。
{{main|数列|数列空間|函数空間}}
代数的な構造である演算を持つ最も基本的な列の種類は[[数列]]、つまり[[実数]]や[[複素数]]などからなる列であり、数列同士の和や、数列を定数倍することなどを考えることができるため、この種の列はあるベクトル空間の元に一般化できる。
 
さらに適当な[[環 (数学)|環]] ''R'' に値を持つ無限列は、[[畳み込み|適当な意味]]で積を定義することによって、自然数全体の成す集合 '''N''' の ''R''-係数[[半群環]] ''R'''''N'''、両側無限列は '''Z''' 上の[[群環]] ''R'''''Z''' とかんがえられる。このような空間はしばしば[[函数空間]]とみなされる。
有限列のなかには、何の項も含まない'''空の列''' (''null sequence'') ( ) も含める。
 
また、一つの数列が与えられたとき、項同士の演算が定義できるから、その数列から部分和や積をつくることによって、別の数列を作り出すこともできる。
== 列の種類と性質 ==
ある与えられた列の'''部分列'''(ぶぶんれつ、<em lang="en">subsequence</em>)とは、残った要素がもとの数列における相対的な序列を保つようにして、与えられた列からいくつかの要素を取り去ることによって得られる列のことである。
 
=== 順序構造と単調性 ===
{{see also|単調関数}}
列の項全体が、ある[[順序集合]]の部分集合であるとき、その列が'''単調増加列'''または'''単調増大列''' {{lang|en|(''monotonically increasing'' sequence)}} であるとは、どの項も直前の項以上となっていることを言う。また、どの項も直前の項より真に大きいときには、その列は'''真の'''(あるいは'''狭義の''')'''増大列''' {{lang|en|(''strictly monotonically increasing'')}} という。同様にして'''単調減少列''' {{lang|en|(''monotonically decreasing sequence'')}} も定義される。このような単調性をもつ列は、総じて'''単調である'''または'''単調列'''(たんちょうれつ、<em lang="en">monotone sequence</em>)と呼ばれる。これはより一般な単調写像の概念における特別の場合になっている。
 
また、混乱を避けるため、真に増大・真に減少というのに対して、単調増加や単調減少のかわりに、'''非減少''' {{lang|en|(''non-decreasing'')}} とか'''非増加''' {{lang|en|(''non-increasing'')}} という用語をもちいて区別することがある。
 
=== 位相構造と極限 ===
== 解析学における列 ==
{{main|極限}}{{see also|数列|級数 (数学)|フィルター (数学)}}
もし項が値をとる集合 ''S'' に[[位相空間|位相]]が定められているなら、無限列の ''S'' における'''収束'''について言及することができる。このことの詳細は[[極限]]の項を参照されたい。[[解析学]]において列を語るとき、普通は次の
:<math>(x_1, x_2, x_3, \dots)</math> or <math>(x_0, x_1, x_2, \dots)</math>
の形、すなわち、自然数全体で添字付けられた無限列のことを指していると理解する。
 
都合によっては列が 0 や 1 以外からはじめることもある。例えば、 ''x<sub>n</sub>'' = 1/[[対数|log]](''n'') で定義される列は ''n'' &ge; 2 に対してのみ定義される。このような列を扱うとき、十分大きな(つまり与えられたある ''N'' より大きなところの)添字に対して列の要素が与えられていれば、通常は十分であるし、多くの問題についてその結論が変わることは無い。
 
== 一般化 ==
最も基本的な列の種類は[[数列]]、つまり[[実数]]あるいは[[複素数]]の列である。この種の列はあるベクトル空間の元の列に一般化できる。解析学では、ベクトル空間はしばしば[[関数空間]]とみなされる。もっと一般に、抽象的あるいは具体的な[[位相空間]]の点に関する点列を調べることができる。
{{see also|有向点族|族 (数学)}}
[[整列集合]]である自然数全体やその切片を[[順序数]]と考えるならば、通常の列は有限順序数 ''n'' または最小の超限順序数 &omega; で[[添字記法|添字付け]]られている考えることができる。このことから一般に、ある集合 ''X'' の元の集まりで、整列集合あるいは順序数によって添字付けられるものを広い意味で ''X'' の元の列と呼ぶことがある。特に極限数 &alpha; をとれば、&alpha; によって添字付けられる列を考えることができる。この語法では通常の(無限)列は &omega; で添字付けられた列ということになる。
 
列の概念は、添字集合となる整列集合を有向集合に取り替えて[[有向点族]](あるいはネット)、一般の集合にとりかえて[[族 (数学)|元の族]]の概念に一般化される。
== 級数 ==
列の和を[[級数]]という。もう少し正確に、(''x''<sub>1</sub>, ''x''<sub>2</sub>, ''x''<sub>3</sub>, ...) が列であるとき、部分和の列 (''S''<sub>1</sub>, ''S''<sub>2</sub>, ''S''<sub>3</sub>, ...) が
:<math>S_n=x_1+x_2+\dots + x_n=\sum\limits_{i=1}^{n}x_i.</math>
とおくことによって考えられる。この新しい列は ''x''<sub>1</sub>, ''x''<sub>2</sub>, ''x''<sub>3</sub>, ... を項とする'''級数'''と呼ばれ、
:<math>\sum\limits_{i=1}^{\infty}x_i</math>
と記される。この無限和の記法は部分和の列が収束するとき、その極限を表すためにも用いられる。詳しくは[[総和]]の項を参照されたい。
 
== 関連項目 ==
*[[ネット (数学)]]
*[[数列空間]]
*[[リスト (抽象データ型)]]