「水溶液」の版間の差分

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== 溶解の仕組み ==
[[溶解]]は[[熱力学]]的な[[平衡]]反応であり、物質の溶解過程と再結晶過程とは常に同時に進行している。つまり平衡がどちらに偏るかは結晶エネルギーと水和エネルギーの差による。(記事[[溶解]]に詳しい)
水への溶解は、溶質同士の[[結合]]よりも溶質と水分子との[[相互作用]]([[水和]])のほうが強い場合に起こる。溶質が水中に入ると水分子の衝突を受けて溶質同士の結合がはずされるが、このときに水分子との相互作用が溶質同士の結合よりも弱ければ、すぐに溶質同士が再び結合してしまうので溶解は起きない。逆に水分子との相互作用が溶質同士の結合よりも強ければ、水分子が溶質をとらえて溶解が起こる。
 
=== イオン結晶の溶解 ===
イオン結晶は明確な電荷が存在する為、結晶エネルギーは大きな値を取る。それはイオン結晶の融点が高いという性質にも表れている。イオンに対する水和の度合と水和エネルギーはイオンの種類や電荷量によりそれぞれ異なり、正・負両イオンそれぞれの水和エネルギーの和となる。
イオン結晶は[[イオン結合]]によって陽[[イオン]]と陰イオンが固く結び付けられているが、水中に入ると水分子の衝突を受けてこの結合が崩され、個々の陽イオンと陰イオンに解離する。水分子(H<sub>2</sub>O)のうち酸素原子は負に、水素原子は正に電荷が偏っているのでイオン結晶の分割された陽イオンは水分子の酸素原子に、陰イオンは水素原子に引き付けられ水中に遊離する。これにより溶解が起こる。
 
例えば[[塩化銀]]の[[融点]]は455℃、[[塩化ナトリウム]]は801℃であり結晶エネルギーの点からは塩化銀の方が結晶からイオン対が遊離しやすい。しかし、[[銀]]イオンと[[ナトリウム]]イオンとでは後者の水和エネルギーが圧倒的に大きいため、溶解平衡への寄与に違いがあらわれ、塩化銀は水にほとんど溶けないのに対して塩化ナトリウムよく水に溶ける。
=== 極性分子結晶の溶解 ===
[[分子結晶]]は[[分子間力]]によってそれぞれの分子が結び付けられているが、水中に入ると水分子の衝突を受けて分子間の結合がはずされ、分子同士が解離する。このときこの分子に極性があると、正に電荷が偏った部分が水分子の酸素原子に、負に電荷が偏った部分が水素原子に引き付けられ水中に遊離する。
 
===極性分子結晶の溶解 ===
分子結晶の結晶エネルギーは[[分子間力]]のうち、[[ファンデルワールス力]]、[[双極子相互作用]]および[[水素結合]]に起因する。これらの結晶の結合力はイオン結晶に比べると格段に弱いものの、分子量が増大するほど結晶エネルギーは(すなわち融点も)大きくなる。極性分子結晶のうち分子量の小さいもの、あるいは多数の水素結合を有するものは水に溶けやすい。分子量の小さいものは水和する表面が相対的に広い場合に水に溶解する。[[酢酸エチル]]は[[アセトン]]よりも極性の絶対値は大きいが分子量が大きく水和しない領域が大である。そのため水和の寄与がほとんど無なく、水に溶解しない。[[糖]]などある程度の分子量以上では、極性分子結晶は水素結合の存在が多い場合に水に溶解する。
[[酸]]は分子性物質であるが、極性が極端に大きいため水中では個々の分子に解離するだけでなく、そこからさらに[[水素イオン]]([[ヒドロン]]、H<sup>+</sup>)と陰イオンに解離するものも存在する。このとき陰イオンは水分子の水素原子に引き付けられ水中に遊離するが、水素イオンは水分子と[[配位結合]]して[[オキソニウムイオン]](H<sub>3</sub>O)となる。
 
=== 分子性=酸・塩基の溶解 ====
プロトン酸、塩基は水中では容易に水素結合を形成するので水溶性が大きい。水中で電離したイオンはさらに水和しやすいので酸・塩基は相対的に水に溶解性が大きい。
[[アミン]]のような分子性塩基の溶解では、水分子が水素イオン(H<sup>+</sup>)と[[水酸化物イオン]](OH<sup>-</sup>)に電離し、その水素イオンが分子性塩基と配位結合した陽イオンができる。
 
==例==