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'''流体継手'''(りゅうたいつぎて)とは流体を介して回転運動の伝達を行う[[クラッチ]]の一種である。
[[ドイツ]]のフルカン造船所で開発された方式が普及したことから'''フルカン継手'''とも呼ばれる。
また、[[トルクコンバータ]]は流体の[[運動エネルギー]]を回生して[[トルク]]を増幅する機構を持った流体継手の発展型である。
 
== 仕組・特徴 ==
==原理==
[[画像:Fluidcoupling basicFluidcoupling_real.png|thumb|200px|流体継手の概念図(実際は入力側と出力側はほとんど接している)。入力側ディスク(緑)の回転が液体の摩擦流動を介して出力側(赤)に伝達される。]]
[[油|オイル]]で満たされた容器の中に二つの[[タービン|羽根車]]が対向して設置されており、それぞれが入力軸と出力軸に連結されている。入力側羽根車をポンプ、出力側羽根車をタービンと呼んで区別することもある。オイルが循環できるような流路を備えており、入力側の回転がオイルの流動を生み、それが出力側を回転させることでトルクの伝達を行う。[[摩擦]]がない理想的な場合を考えると入力側と出力側のトルクは等しくなる。一方、動力伝達のために出力側回転数は入力側回転数より減少する(入力側回転数を<math>n_{1}</math>、出力側回転数を<math>n_{2}</math>としたとき<math>s=1-n_{2}/n_{1}</math>で定義されるsを滑りと呼んで効率の指標とする)。
最も原初的な流体継手は、[[クラッチ #湿式・乾式クラッチ|湿式クラッチ]]の[[潤滑油]](オイル)の量が多くなり、2枚のディスク間がオイルで満たされているようなものである。この場合、入力側のディスクが回転すると[[摩擦]]によってオイルに流れ(回転)が生じる。この回転流はオイルの[[粘性]](内部摩擦)を介することで次々に進行して最終的に出力ディスク側に到達し、それを摩擦力により回転させる。この作用を利用してクラッチを作れば、液体を媒介しているため出力ディスク回転数は可変となり、入力されたエネルギーは負荷に応じてトルクと回転数に分配される(エネルギーはトルク×回転数([[角速度]])で表される)。
[[画像:Fluidcoupling_real.png|thumb|200px|入力側タービン(緑)の回転が液体の摩擦と流動を介して出力側(赤)に伝達される。]]
しかし、上の方式はベーシックなものの回転の伝達を摩擦のみに頼っているためエネルギー損失が大きく、クラッチとしては実用性を欠く。そこで実際の多くの流体継手ではディスクを[[タービン]]化して液体を循環させる流路を設け、それにより回転方向と直交する方向への流動も生み出している。このようにすると[[流体力学]]的にタービンを回転させることができ、摩擦のみによってディスクを回転させる場合に比べて[[エネルギー効率]]はよくなる。(ただしこの場合でも摩擦により発生するトルクは大きな役割をする。)
 
[[油圧モーター]]と同様にオイルの圧力・流量を制御することでトルク・回転数を調節することが可能であり、[[無段変速機]]の一種として用いられることが多い。
==一般的な利点と欠点==
 
*'''利点'''
== 応用 ==
流体を介さない一般的なクラッチの場合では基本的に出力されるトルクと回転数が固定されてしまうため、負荷が出力トルクに対して小さい場合は過剰となったエネルギーが[[熱]]となってロスされる。また、負荷が大きすぎると回転が停止してしまうので出力したいトルクと回転数の組み合わせに応じて[[トランスミッション|変速機]]を用意しなければならない。一方、流体継手の場合は負荷に応じて出力トルクが適宜変化し、残りのエネルギーは回転数として分配されるので出力エネルギーのロスが少なく、複数の変速機を用いなくてもある程度広い角速度域に対応できる。また、回転が液体を介して伝えられるので始動や停止時の衝撃が少ない。
流体継手はトルク・回転数を連続的に調節することが可能なため有段の変速機に比べると動力を無駄なく使用でき、さらに液体を介して動力伝達が行われるため始動時や急停止時に衝撃が緩和されるという利点があり、主に[[自動車]]や[[航空機]]などで無段変速機構を兼ねたクラッチとして利用されてきた。ただし、オイルの内部摩擦や温度上昇によりエネルギー効率はあまり良くないという欠点もある。最近の自動車では出力側羽根車の後段にステータと呼ばれるオイルの整流とエネルギーの回生を兼ねた羽根車を設置したトルクコンバータの方がよく用いられている。トルクコンバータではステータによって出力トルクの増幅が可能になっている。
*'''欠点'''
一般的なクラッチに比べるとクラッチ内部でのエネルギー損失が大きい。これは流体の内部摩擦によるものと、原理的に入力側タービンで液体に与えられた運動エネルギーを出力側で回収しきれないことによる(仮にそのようなことができたら液体の循環がなくなってしまう。なお、出力側タービンの後段にさらにステータと呼ばれるタービンを設置して流体の運動エネルギーの一部をリサイクルする仕組みを備えたのがトルクコンバータである)。
また、回転がダイレクトに伝わらないため始動や停止時の応答速度は遅い。
 
==関連項目==
*[[クラッチ]]
*[[トルクコンバータ]]
*[[無段変速機]] - 流体継手以外の一般的な無段変速機についての説明がある。
*[[無段変速機]]
*[[国鉄キハ44500形気動車]] &nbsp; - 鉄道車両用液体式変速機の開発について詳しく記述されている。 
 
== 参考文献 ==
*安達勤・村上芳則 共著 『システムとしてとらえた流体機械』 培風館 (1998) ISBN 4-563-03527-0
 
[[Category{{DEFAULTSORT:機械要素|りゆうたいつきて]]}}
[[Category:流体機械|りゆうたいつきて要素]]
[[Category:エンジン|りゆうたいつきて流体機械]]
[[Category:エンジン]]
 
[[en:Fluid coupling]]
[[es:Acoplador hidráulico]]
[[zh:液力耦合器]]
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