「ペプチドグリカン」の版間の差分

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'''ペプチドグリカン(Peptidoglycan)'''は'''ムレイン(murein)'''としても知られ、[[真正細菌]]の[[細胞膜]]の外側に層を形成する[[細胞壁]]の主要物質である。構造上の重要な役割を果たし、[[細胞質]]の[[浸透圧]]に対する耐久性を与え細胞の形態、強度を保持させる。また、増殖時の細胞分裂にも関わる。
==構造==
ペプチドグリカンの構造は菌種によって異なるが代表的な例としてグラム陽性の[[黄色ブドウ球菌]](''Staphylococcus aureus'')ではN-アセチル[[グルコサミン]](GlcNAc)と[[N-アセチルムラミン酸|''N''-アセチルムラミン酸]](MurNAc)という2種の[[アミノ糖]]の交互の繰り返しを単位とし、ペンタ[[グリシン]]を架橋としたL-アラニン(Ala)-γ-D-グルタミン(Gln)-L-リシン(Lys)-D-Alaのテトラ[[ペプチド]]がLysに結合している。大腸菌では、Lysのかわりに''meso''-ジアミノピメリン酸がついている。ペプチドのアミノ酸配列と全体の構造は細菌種間で多様であるが多くは各々のMurNAcには短いペプチド鎖(4-5 残基)が結合している。ペプチドグリカン層の厚さは[[グラム陽性菌]]で20-80 nm、[[グラム陰性菌]]で7-8 nmで陽性菌の方がはるかに厚く,、陰性菌では乾燥重量の10%でしかないのに対し、陽性菌では90%に達する。
陰性菌では乾燥重量の10%でしかないのに対し陽性菌では90%に達する。
 
==[[生合成]]==
ペプチドグリカンの生合成では[[糖タンパク質]]の生合成で[[糖鎖]]のキャリアーとして働く[[ドリコール]]リン酸の代わりにC55ポリイソプレノールがキャリヤーとして働いている。まず細胞質中で短いペプチド末端のD-Alaにもう1分子のD-Alaが結合した[[糖ヌクレオチド|UDP-GlcNAc]]と[[糖ヌクレオチド|UDP-MurNAc]]が合成される。続いて細胞膜の[[酵素]]系によって疎水性の中間体(N-アセチルグルコサミニル-N-アセチルムラミル-ペンタペプチド-二リン酸-C55ポリイソプレノール)が合成される。ここで糖鎖が重合し、グリシル-[[tRNA]]からグリシンが5個結合しペプチド部分が架橋してD-アラニン1分子が遊離する。このペプチド伸長反応は[[mRNA]]非依存的なペプチドシンターゼにより触媒される。架橋構造が作られることで結果として強固な3次元構造の層を形成する。
==抗生物質==
[[ペニシリン]]に代表されるβ‐ラクタム系[[抗生物質]]は架橋反応の酵素を阻害する。ペンタトリグリシンペプチドが転移する反応の基質のD-Ala-D-Ala部分と構造が類似しており、酵素の活性中心の[[セリン]]残基と、結合が開いて生じる[[カルボキシル基]]が共有結合を生成する。しかし正常基質と違って酵素の脱[[アシル]]化が起こらず、不可逆阻害をきたす。ペニシリンは、哺乳類が持たない細胞壁の合成を阻害するので選択性が高く、かつアレルギー誘導性を除けば、毒性がないきわめて好ましいタイプの抗菌剤である。しかし、細胞壁を弱め溶菌させる作用があるため病原性大腸菌による感染症の患者に使用すると溶菌時に[[ベロ毒素]]が体内に広がってしまうため使用する事ができず、他の抗生物質が使用される。