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'''ワイドクリアビジョン'''とは日本における第2世代 '''EDTV''' (Enhanced Definition Television)方式 (EDTV-II) の愛称で、前の世代の[[クリアビジョン]]と同様、標準解像度のテレビ方式(SDTV、すなわち日本ではNTSC方式)と上位互換性を持たせて画質を改善した日本独自方式である。1995年に答申が行われ、放送が開始した。
 
== 概要 ==
通常のNTSC規格の画面の上下に無画部という黒映像部分を挿入して有効縦横比を16:9とし、無画部に垂直時間と垂直画質、有効部分に水平画質のそれぞれを補強する信号を追加することにより、ワイド化、高画質化を図った。
 
受信装置については、これら高画質化のどれか、もしくは縦横比の判定装置が実装されていれば対応機器とみなされた。
 
== 技術 ==
=== アップコンバーター・ダウンコンバーター ===
既存の機器が使えなくなることを避けるため、EDTV-IIでは飛び越し走査のHD画像(1080i)や飛び越し走査のSD画像(480i)なども全て順次走査のSD画像(480p)に変換してから処理を行うこととした。480i→480pの変換はアップコンバートにたり、1080i→480pの変換はダウンコンバートにあたる。
 
=== ワイド化 ===
=== アップコンバーター・ダウンコンバーター ===
EDTV-IIでは16:9のワイド画像を送受信することを目標とした。NTSCとの互換性を保つため、縦方向に3/4の縮小を行った画像(レターボックス)で送信し、非対応機種でも上下に無画部の入った画像として見られるようにした。しかし、このままでは垂直方向の情報が元の3/4に失われるので、縮小の際に失われる情報を'''垂直解像度補強信号'''として無画部に重畳し、受信機の側で合わせて補完することで垂直解像度が480本程度となるよう図った。
 
既存の機器が使えなくなることを避けるため、EDTV-IIでは、飛び越し走査のHD画像(1080i)や飛び越し走査のSD画像(480i)なども、全て順次走査のSD画像(480p)に変換してから処理を行うこととした。480i→480pの変換はアップコンバートにあたり、1080i→480pの変換はダウンコンバートにあたる。
 
=== ワイド化 ===
 
EDTV-IIでは、16:9のワイド画像を送受信することを目標とした。NTSCとの互換性を保つため、縦方向に3/4の縮小を行った画像(レターボックス)で送信し、非対応機種でも上下に無画部の入った画像として見られるようにした。しかし、このままでは垂直方向の情報が元の3/4に失われるので、縮小の際に失われる情報を'''垂直解像度補強信号'''として無画部に重畳し、受信機の側で合わせて補完することで垂直解像度が480本程度となるよう図った。
 
また、この画像を同じ縦幅で比較すると、水平方向の信号は4:3画像に比べ横に広がったことから情報はNTSC画像の3/4となる。これを防ぐため、主画部のうち有効に使われていなかったホール(吹抜ホール)部分を用いて、'''水平解像度補強信号'''を重畳し、水平解像度の補強を図った。
 
=== 順次走査方式(プログレッシブスキャン) ===
 
[[NTSC]]は、飛び越し走査(インタレーススキャン)による表示方式を採用していた。飛び越し走査の場合、1フィールドあたりの走査線の本数は1フレームの半分となる。これに対し、EDTV-IIでは順次走査方式を採用している。NTSCとの互換性を保つ観点から1フィールドあたりの走査線の本数は変更できないため、順次走査な素材を飛び越し走査に変換する際に失われる情報を'''垂直時間解像度補強信号'''として無画部に重畳し、受信機の側で合わせて補完することで実現した。
 
※なお、[[高精細度テレビ放送]]でも、アナログハイビジョンは飛び越し走査となる。また、BSデジタルや地上デジタル放送でも高精細度放送は飛び越し走査を採用していることが多い。
 
=== EDTV-II識別信号 ===
EDTV-IIであることを示す信号は22H(および285H)に重畳されている。NTSCの場合、通常の4:3テレビでもこの場所は画面表示されるが、1~21Hのほとんどが既に他の用途に使われていること、これら[[垂直帰線区間]](VBI)は機器によっては保存される保証がいこと、最上部であれば大きな妨害とは見なされにくいことからこの場所に重畳することとなった。
 
=== その他の技術・用語 ===
EDTV-IIであることを示す信号は、22H(および285H)に重畳されている。NTSCの場合、通常の4:3テレビでもこの場所は画面表示されるが、1~21Hのほとんどが既に他の用途に使われていること、これら[[垂直帰線区間]](VBI)は機器によっては保存される保証がないこと、最上部であれば大きな妨害とは見なされにくいことからこの場所に重畳することとなった。
 
=== その他の技術・用語 ===
<stub>
* 補強信号(解像度向上のための補助信号)
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** [[日本テレビ放送網|日本テレビ]]が提案
 
== 現状 ==
ワイドクリアビジョンは日本テレビが提唱し民放の地上アナログ放送でもハイビジョン並の高画質16:9ワイドプログレッシブ走査式放送を行いたいという機運が高まったものである(現在のデジタルハイビジョン放送は飛び越し走査)
 
この放送が始まった1995年頃はCSアナログ放送やアナログハイビジョン放送(MUSE方式)が行われていた時期であった。たとえば、BS1チャンネル分を用いてNHKと民放数社が共同でハイビジョンの試験放送を行っていた。
 
当初の考えでは、[[ハイビジョン|アナログハイビジョン]](MUSE方式)の持つ高音質や高画質のイメージが16:9比率のワイド型テレビ受像機に対して想起されるとされ、そのため買い替え需要などの経済効果も期待された。
 
民放の各放送局はワイドクリアビジョンを送出できるようにエンコーダ、識別装置、報道用テロップ挿入移動装置等を配備した。ある程度は既存の機器との互換性も考えられており、一度エンコードと記録を行えば業界標準の[[D2-VTR|D2コンポジットVTR]]で再生すれば放送を行うことが可能だった。
しかし、放送局側で持つほとんどの素材は4:3通常画質のものであり、ワイドクリアビジョンに対応できるものはほとんどなかった。この結果、民放キー局で送出したワイドクリアビジョン番組は映画など年間数本の放送に過ぎず、このため視聴者側にも16:9対応の受像器を買う必然性があまく、対応受像機やワイドクリアビジョンを録画可能なビデオデッキも普及しなかった。
 
また、[[クリアビジョン]]対応受信装置があまりにも高価で普及しなかった教訓から、ワイドクリアビジョンについては補強信号のいずれかもしくは画郭判定の任意の1つ以上の機能に対応できれば対応機器とみなすことにしていた。このため、ワイドクリアビジョン対応機器の品質について大きなばらつきが生じることになった。結果、ワイドクリアビジョン対応機器について品質向上をアピールする[[テレビコマーシャル|CM]]等のPRが行いにくく、普及に足かせがかかったという側面もある。
 
そのほか、この当時のNHKは[[ハイビジョン|アナログハイビジョン]]を推進しており、ワイドクリアビジョンはアナログハイビジョンを本放送するすべを持たない民放側の対抗規格に過ぎなかったという見方もあるし、アナログハイビジョンが百数十万台しか普及しなかったことを考えると、視聴者側に高解像度を求める需要が少なかったとも考えられる。
 
その後、[[1990年代]]後半から[[2000年]]にかけて[[地上デジタルテレビジョン放送]]やBS放送のデジタル化が検討され、その後普及しはじめた。通常画質の16:9受像器とS端子に画郭情報を加えたS1/S2端子などを残し、ワイドクリアビジョンは消滅に向かった。たとえば、[[1995年]]に開局した[[東京メトロポリタンテレビジョン]]は常時ワイドクリアビジョン放送を前提にしたシステムで番組を送出していたが、数年で競馬中継などごくわずかな放送を除き、現状の4:3画像送出となっている。
 
== 関連項目 ==
*[[PALplus]]
*[[ATV (EDTV)|ATV]]
 
[[category:テレビ]]