「苦 (仏教)」の版間の差分

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Anton21 (会話 | 投稿記録)
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{{Buddhism}}
{{Buddhism}}[[仏教]]における'''苦'''('''''''''duHkha'''、दुःख)とは、[[サンスクリット語]]の「ドウクハ」に由来する。「ドウクハ」は「豆法」と音写され、'''苦'''と訳された。
 
「ドウクハ」の「ドウ」(duH = dus)は、「悪い」という意味、「クハ」(kha) は「[[運命]]」「[[状態]]」の意味であるから、苦とは、もともと悪い状態、悪い運命というような意味をもっていたが、一般に身心を[[逼悩]]することをいうとされる。すなわち、[[精神]]と[[肉体]]とが[[悩み]]に逼迫されている状態である。このうち、精神の苦について、[[憂]]・[[愁]]・[[嫉妬]]などをあげている。また、肉体的な苦は種々の[[病]]などであるという。
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== 苦諦 ==
{{See also|四諦}}
このように一切は苦なりという仏教の根本的立場が確立され、'''苦諦'''(くたい)とよばれる。苦諦とは「苦が諦である」ということで、それは苦であることが[[真理]](サトヤ、satya)であり、人間の生存そのものが苦であるという。その意味では、苦とは[[哲学]]的意味をもった苦である。
 
このように一切は苦なりという仏教の根本的立場が確立され、'''苦諦'''(くたい)とよばれる。苦諦とは「苦が諦である」ということで、それは苦であることが[[真理]](サトヤ、satya)であり、人間の生存そのものが苦であるという。その意味では、苦とは[[哲学]]的意味をもった苦である。
 
しかし、'''四苦'''といわれる[[生]]・[[老化|老]]・[[病気|病]]・[[死]]、加えて'''八苦'''といわれる[[愛別離苦]]・[[怨憎会苦]]・[[求不得苦]]・[[五陰盛苦]]をみても、実際には具体的な現実苦を示すことは注意すべきである。
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=== 苦苦 ===
'''苦苦:くく''' ((くく、duHkha-duHkhataa) とは、「苦痛を苦とする状態」を意味する。「苦事の成るによって成立する苦」などと説明され、「[[寒]][[熱]][[飢]][[渇]]によって生ずる苦」といわれるから、外的な、感覚的な苦である。このような苦が人間にとって第一段階の苦で、自然的、基礎的なものである。
 
=== 壊苦 ===
'''壊苦:えく''' ((えく、vipariNaama-duHkhataa) とは「壊滅の苦の状態」である。「ヴィパリナーマ」とは「悪い方へ変化する」という意味であるから、好もしくない状態をあらわすのである。「[[楽事]]の去るによって成ずる苦」とも説明される。「壊滅」とは、その点で「[[楽境壊滅]]」(らくきょうえめつ)の意味であるという。すなわち、人間にとって好もしいと感ずる対象が、次々とこわされてゆく時に感ずる苦である。この第二の苦の中に、人間が一般に感ずる苦は含まれる。
 
:vi+pariNaamaのpariNaamaは、[[唯識]]でいう「識の転変(vijJaana-pariNaama)」とほぼ同じ意味で使われていることからも、この'''壊苦'''は「心の変化に応じて生ずる苦しみ」の事を指している、と考えられる。
 
=== 行苦 ===
'''行苦'''(ぎょうく''' (saMskaara-duHkhataa) とは「生起の苦の状態」といわれる。「行」の意味は、「作られたもの」ということで、生存していること自体を指しているから、一切の存在が無常であることによって遷り流れてゆくところに感じとられる苦である。とくに、人間生存の無常という事実の中に感ずる苦であるから、生存苦、生きること自身が苦であることを示した。
 
したがって、苦苦も壊苦も、この行苦を根本として起ってくるといえる。その意味で、行苦や五陰盛苦は、人間の根本的な苦を示す。仏教は、根本的には生きていること自体が苦であるという[[形而上学]]的な考え方をもととして、人間の「自分が」という[[我執]]こそ苦の根本であると言う。
 
== 哲学的意味の苦 ==
「仏教では、この世は""であると説く」と聞くと、日本語の"苦"を思い浮かべてしまうのが普通である。しかし釈迦の説く""は、現代語の""とは別物であることに注意が必要である。具体的には、肉体的な苦痛と、精神的な苦痛とがあるが、仏教で説く""とは「思うようにならない苦しみ」という程の意である。ここでは、その精神的な苦痛を哲学的意味の苦と表現している。したがって、覚りを得たからといって、病気や肉体的な苦痛が無くなる訳ではない。古い仏典には、肉体的な苦痛に耐える釈が描かれているし、釈が病死したことは間違いないとされている。
 
== 関連項目 ==
*[[四諦]]
*[[四苦八苦]]
* [[苦しみ]]
* [[痛み]](苦痛のリダイレクト)