「ハウスドルフ空間」の版間の差分

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en:Hausdorff space 13:11, 22 March 2008 (UTC) 版を部分的に訳
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[[数学]]における'''ハウスドルフ空間'''(- くうかん、Hausdorff space)とは、異なる点がそれらの[[位相空間|近傍]]によって分離できるような[[位相空間]]のことである。''T''<sub>2</sub> 空間とも呼ばれる。位相空間についてのさまざまな[[分離公理]]の中で、このハウスドルフ空間に関する条件はもっともよく仮定されるものの一つである。ハウスドルフ空間においては点列(あるいはより一般に、[[フィルター (数学)|フィルター]]や[[有向点族|ネット]])の[[極限]]の一意性が成り立つ。位相空間の理論の創始者の一人である[[フェリックス・ハウスドルフ]]にちなんでこの名前がついている。ハウスドルフによって与えられた位相空間の公理系にはこのハウスドルフ空間の公理も含まれていた。
'''ハウスドルフ空間(Hausdorff space)'''(または ''T''<sub>2</sub> 空間)とは、
 
== 定義 ==
〈ハウスドルフの[[分離公理]]〉
[[Image:Hausdorff_space.svg|thumb|right|相異なる2点を分離するそれぞれの開近傍]]
:''X''を位相空間とする。''X''の任意の相違なる2点 ''x, y'' を任意選ぶとき対して、''U'' &cap; ''V'' = &Oslash; であるような ''x'' の[[開近傍]] ''U'' および ''y'' の[[開近傍]] ''V'' が必ず存在するとき、''X''はハウスドルフ空間であるといわれる。
 
上の定義と同値な以下のような条件のいずれかによってもハウスドルフ空間の特徴付けられるが知られている:
を満たすような[[位相空間]]のことである。
* ''X''における任意のフィルター(または有向点族)の収束先が高々一つである。
* ''X''の任意の一点からなる集合はその近傍たちの共通分になっている。
* 直積集合 ''X'' &times; ''X'' の対角部分集合 &Delta; = { (''x'', ''x'') | ''x'' &isin; ''X'' } が直積位相に関して閉集合になっている。
 
== 例 ==
[[実数]]の集合は、その上に通常定義される位相構造によってハウスドルフ空間になっている。さらに、[[幾何学]]などで扱われる[[位相多様体]]や[[距離空間]]、あるいは[[解析学]]などで扱われる[[ノルム空間]]やその上で[[弱位相]]を考えた空間など様々な空間がハウスドルフ空間になる。
 
一方で、[[代数学]]における[[ザリスキ位相]]を考えた[[代数多様体]]や、[[可換環]]の[[概型#環のスペクトル|スペクトル]]などの位相空間はしばしばハウスドルフ空間にならない。
 
==性質==
ハウスドルフ空間の[[部分空間]]や[[直積空間]]は、ハウスドルフ空間になる。他方、ハウスドルフ空間上で[[同値関係]]を考えたときに得られる[[商空間]]はハウスドルフになるとは限らない。実際のところ、任意の位相空間はハウスドルフ空間の商として実現できる。
*ハウスドルフ空間の[[コンパクト (数学)|コンパクト]][[部分集合]]は[[閉集合]]である。
 
*ハウスドルフ空間の部分空間は、ハウスドルフ空間である。
ハウスドルフ空間は[[分離公理|T<sub>1</sub>空間]]であり、その中で一点集合は閉集合になっている。さらに、ハウスドルフ空間の[[コンパクト (数学)|コンパクト]][[部分集合]]は[[閉集合]]である。ハウスドルフ空間における2つの交わらないコンパクト部分集合はそれらの近傍によって分離できる。
 
ハウスドルフ空間上で定義された、あるいハウスドルフ空間を値域とするような連続写像に関して以下のような性質がしられている。
* ''f'': ''X'' &rarr; ''Y''をハウスドルフ空間への連続写像とするとき、そのグラフ { (''x'', ''f''(''x'')) | ''x'' &isin; ''X''} は直積空間 ''X'' &times; ''Y'' の閉集合である。
* ''f'': ''X'' &rarr; ''Y'' を写像、''X'' &times; ''X'' の部分集合 ker(''f'') = {(''x'', ''x''&prime;) | ''f''(''x'') = ''f''(''x''&prime;) } をその核とするとき、
** ''f'' が連続で''Y''がハウスドルフならば ker(''f'') は閉集合
** ''f'' が全射開写像でker(''f'')が閉集合ならば Y はハウスドルフ
** ''f''が全射連続開写像のとき、''Y''がハウスドルフであることと ker(''f'') が閉であることは同値になる
* ''f'', ''g'': ''X'' &rarr; ''Y'' が連続写像で''Y'' がハウスドルフ空間のとき、それらの等化域 eq(''f'', ''g'') = { ''x'' |''f''(''x'') = ''g''(''x'') } は ''X''の中で閉じている。とくに、''f'' と''g''が稠密な集合上一致していたらそれらは全空間上で一致していることになる。
* ''f'': ''X'' &rarr; ''Y'' が全射閉写像でかつ任意の ''y'' &isin; ''Y'' について ''f''<sup>-1</sup>(''y'')がコンパクトであるとする。このとき ''X''がハウスドルフならば''Y''もハウスドルフになる
* ''f'': ''X'' &rarr; ''Y'' が全射開連続写像で ''X''がコンパクトハウスドルフ空間のとき、以下は同値である
** ''Y''はハウスドルフ
** ''f'' は閉写像
** ker(''f'') は閉集合
 
==関連事項==
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==参考文献==
* {{Cite book|和書|last=[[ブルバキ]]|first=ニコラ|translator=森毅、清水達雄|year=1968|title=位相|publisher=東京図書|location=東京|id=ISBN 4489001126}}
*[[クゼ・コスニオフスキ]]著、[[加藤十吉]]訳編 『トポロジー入門』 [[東京大学出版会]]、1983年。
* {{Cite book|last=Hausdorff|first=Felix|title=Grundzüge der Mengenlehre|year=1914|publisher=Veit|location=Leipzig|id=NCID BA08121126}}
*[[クゼ・ {{Cite book|和書|last=コスニオフスキ]]著、[[|first=クゼ|translator=加藤十吉]]訳編 『|title=トポロジー入門』 [[|publisher=東京大学出版会]]、|year=1983年。|location=東京|id=ISBN 4-13-062059-2}}
 
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