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[[Image:Unschooling.jpg|thumb|right|アンスクーリングの一例。樹皮を掘って虫のフンを探す子どもたち]]
'''アンスクーリング'''({{lang-en-short|Unschooling}} 反学校、非学校教育の意)アンスクーリングは、教育を受けていないという意味ではなく、学校に通っていない、あるいは堅苦しい学校に似た環境で教育されていないことを指す。
 
==定義==
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まず急速に浸透しているのは、[[ホームスクーリング]]と同様学校に通わず、特に[[教科書]]への高い依存や机に向かう時間がない教育手法という意味である。
 
もう一つは、[[教育者]]、[[作家]]、ホームスクーリングの主唱者であり、アンスクーリングという新語を作った<sub><ref>[http://www.holtgws.com/johnholtpage.html HoltGWS "John Holt and Growing Without Schoolling"] (英語)</ref></sub>[[ジョン・ホルト]]などが本来意味したもので、保護者が子どもに何を勉強するのかを命令するのではなく、子ども自身が興味を持つことを深く探求していく手助けをするという、子どもの興味に基づいて行う教育である。
 
またアンスクーリングは、[[脱学校論|デスクーリング]]とは別物である。デスクーリングは学校組織などに対する反体制思想を持つことや、以前に学校へ通学したことのある子どもやその保護者の「[[洗脳]]解除」(デプログラミング)を行うことである。
 
==概要==
[[ジョン・ホルト]]は、子どもというものは生活経験から物事を学んでいくのだと考え、両親に子どもと共に生活することを勧めた。「興味に基づく」、あるいは「子ども主導」教育として知られるアンスクーリングでは、実際に生活する中で機会があればそれを利用し子ども強制されずに学ぶことである。教科書を用いたり教室のような環境で行うアンスクーリングもあるが、教科書や教室は教育の中心であるとはみなされない。ホルトは子どもにとって必要な知識体験は存在しないし、必要ではないと主張した。
 
アンスクーリングに賛する者は、子どもは実際に行うことによって最も多くを学ぶと信じている。たとえば歴史や他の文化に対する興味を深めるために読むことを覚え、簡単なビジネスや家計のやりくりに参加することで算数を身に着ける、乳をとるためのヤギや肉にするためのウサギを飼育することで酪農について学ぶ、庭の畑で食材を育てることで植物について学ぶ、[[火器]]や[[内燃機関]]がどのように働くかを理解するために化学を学ぶ、町のゾーニング(区画調整)や歴史遺産の論争を通じて政治や郷土史について学ぶ、といったことである。これらの手法はどのようなホームスクーリング形態でも用いることがあるが、アンスクーリングの場合は子ども自身が始めるという点で異なる。
 
==在宅学習==
一般的に、アンスクーリングは学校のかわりに家庭で子どもを教育するという在宅学習の一種である。在宅学習は[[ホームスクーリング]]と同義語のように扱われがちだが、ホームスクーリングは家庭という状況の中に学校を再現するという意味であり、アンスクーリングの考えとは相容れないという意見がある。
 
アンスクーリングが他の在宅学習と異なる点は、子どもがカリキュラムや教師(ホームスクーリングで教える立場の保護者も含む)の指図を受けないことである。子どもはカリキュラムを利用したり先生を求めることはできるが、教育のコントロール権は子ども自身が持っている<sub><ref name=Handbook>『The Teenage Liberation Handbook: How to Quit School and Get a Real Life and Education』(ティーンエイジの解放ハンドブック: どうやって学校を辞め本物の生き方と教育を手に入れるか)グレース・レウェリン著 (Grace Llewellyn) ISBN 978-0962959172 (英語)</ref></sub>。子どもはいつ、何を、なぜ、どのように知識を求めるかを選ぶ。保護者は「後援者」(ファシリテーター)となって幅広いリソース(資料・手段など)を提供し、子どもがリソースにアクセスし、上手く扱い、世界を理解するための手助けをし、また短期および長期的な目標と計画を考えて導入する際の手助けをする。アンスクーリング手法は、子どもの興味・関心・ニーズ・目標・計画の延長として、子どもの中で自然に芽生えた好奇心を拡張させるものである。
 
==アンスクーリングの哲学==
===慣習的な教育法===
一般的にアンスクーリング主義者は、好奇心は生まれつきのもので、子どもは有能な大人になるために必要なことを学びたがるものだと信じている。一般的な学校反対者達の言葉を借りれば「フリーサイズ学校」や「大量生産工場学校」に子どもを収容することは、子どもの時間を無駄にしているという。なぜなら一般的な学校教育においては、子ども一人一人が将来必要とすること、興味や目標、内容について予め知っている知識とは関係なしに、どの子もみんな決まった科目の単元を決まった方法で決まったペースで決まった時間に学習しなければいけないからである。
 
また多くのアンスクーリング主義者は、慣習的な教育法では学習の機会が学校という建物の中で物理的に可能なことに限られており、有益で、[[ハンズオン]]で、地域に基づいた、自発的な実生活体験に欠けると考えている。
 
それに加え、アンスクーリング主義者はジョン・ホルトの次の記述にも同意している。「常にテストを受けることで不安になっている子どもたちは、失敗・罰・恥の恐れがあるため、理解また記憶する力が大変に弱まり、学習内容よりも、実際は本当に知らないことを先生にむかって知っているふりをすることに神経が費やされてしまう。」
 
アンスクーリング支持者は、子ども主導の学習スタイルは子どもの時間を尊重して有効に使い、子どもの興味を利用し、慣習的な教育よりも課題を深く探求することが可能となると述べている。
 
===必須の知識体系===
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===保護者の役割===
子ども主導のアンスクーリングであるが、保護者子どもに指導やアドバイスを与えない、保護者自身が興味深い事や謎解きのヒントをみつけても子どもに教えない、という意味ではない。一般的にアンスクーリングを行っている保護者は、成人である自分は子どもよりも実社会の経験が豊富であり、世の事物にアクセスしやすい立場にあると考えている。またその立場を使って、子どもが世の中にアクセスし、上手く扱い、理解するための手助けをすることが大切だと信じている。保護者の役割としては、おもしろそうな本や新聞雑誌記事を紹介する、子どもの活動に参加する、子どもが興味のある分野を探求するために関連知識を持っている様々な人物(物理学教授から自動車整備工まで)を探し出す、子どもが目標を立てることや、どうすればその目標に到達できるか考える際に手助けする、などといったことがある。
 
また興味主体といわれるアンスクーリングであっても、教育に無干渉という意味ではなく、保護者はかなり熱心に関わっている。とくに小さい子どもの場合はそうである。大きい子どもは、アンスクーリングを始めたばかりでない限り、リソースをみつけたり、計画を立てて実行することに親の助けあまり必要としていない。
 
==集団生活への適応性==
アンスクールを選ぶかどうかの決定項目として、社会性が欠如した人間になるのではないかという不安がしばしば挙げられる。アンスクール主義者の多くは、伝統的な学校環境は、年齢ごとに子どもを分離する、子どもに対する大人の割合が低い、地域とのつながりに欠ける、教員と学校経営者以外の職業を持つ人間が存在しないなど、有害な社会環境を作り上げていると考えている<sub><ref name=freedom>[http://learninfreedom.org/socialization.html Learn in Freedom "Socialization: A Great Reason Not to Go to School"] (英語)</ref></sub>。彼らは、アンスクーリングにおいて様々な年齢や経歴を持つ人間と様々な状況で接する機会があることは、子ども達に有益であると考えている。また、どのような状況下でどのような人に会うかを子ども自身がコントロールできるのも有益であると感じている。アンスクール主義者は、在宅教育を受けた子どもは学校に通う同年代の子どもよりも精神的に大人である傾向があるという研究結果<sub><ref name=freedom /> <ref>"Home School Researcher", 8(3), 1-8:"Comparison of Social Adjustment Between Home and Traditionally Schooled Students" by Larry Edward Shyers(英語)</ref> <ref name=atlas>[http://www.educationatlas.com/home-schooling-information.html Education Atlas :“Home"Home Schooling: Back to The Future?"] (英語)</ref></sub>を引用し、一部の者は、その要因として子ども達が様々な人間に接する機会があるためだと信じている<sub><ref>[http://learninfreedom.org/age_grading_bad.html Learn in Freedom: Age Segregation in School] (英語)</ref></sub>。
 
一方、アンスクーリングに対する批判として、多種多様な子ども達を集めたちょうど良い仲間集団を子どもから取り上げることで、社会性の発育を抑制してしまっているのではないかという意見がある<sub><ref name=objectionsopinions>[http://www.msnbc.msn.com/id/15148804/ msnbc: Readers share heated opinions on ‘unschooling’'unschooling'] (英語)</ref><ref name=Objections>[http://www.naturalchild.org/common_objections/ The Natural Child Project: Common Objections to Homeschooling by John Holt] (英語)</ref></sub>。
 
==大学受験==
アンスクーリングを受けた者は、[[アメリカ合衆国]]の場合、[[アイビーリーグ]]を含む大部分の大学に合格している <sub><ref>[http://learninfreedom.org/colleges_4_hmsc.html Learn in Freedom: Colleges That Admit Homeschoolers] (英語)</ref><ref>[http://www.stanfordalumni.org/news/magazine/2000/novdec/articles/homeschooling.html Stanford Magazine Nov/Dec 2000: In a Class by Themselves] (英語)</ref></sub>。『ホームスクーリング・バックトゥーザフューチャー』<sub><ref name=atlas /></sub>という記事によれば、「高等学校の成績や卒業証明がなくとも、受験生は今までに学習してきた内容のサンプルやポトフォリオ、推薦状、[[SAT (大学進学適性試験)|SAT]]やCLEP(大学単位取得認定試験)のスコアを提出することができる」と述べられている。アンスクーリング教育を受けた者学ぶことを愛し、自分の意思で積極的に学んでい、大学生活で何を得たいかがわかっている者が多いことから、一部の大学では彼らを大学にとって貴重な人材であるとみなしている。[[スタンフォード大学]]の入学選考部長は一般的な在宅学習者について次のように述べている<sub><ref>[http://www.stanfordalumni.org/news/magazine/2000/novdec/articles/homeschooling.html Stanford Magazine Nov/Dec 2000: In a Class by Themselves] (英語)</ref></sub>。「合否の分かれ目となる要素は、持続的な知的活力である。この子ども達(在宅学習者)はその力を持っており、彼らの行うことすべてに現れている。」
 
==批判==
アンスクーリングに批判的な者は、一般的に以下のような意見や問題点を持っている。
 
* 大部分の子どもは、成人後の人生で必要とされることを今学ぶという将来的な見通しを持っていない<sub><ref name=objectionsObjections /><ref name=Erbe>[http://www.usnews.com/blogs/erbe/2006/11/27/unspooling-unschooling.html U.S.News & World Report Nov.27, 2006:"Unspooling 'Unschooling'"by Bonnie Erbe] (英語)</ref></sub>。
* どの教材をカバーするかを教育専門家が管理しないと、子どもの学習内容にギャップができてしまうことがある<sub><ref name=Clayton>[http://www.msnbc.msn.com/id/15029646/ msnbc Oct. 6, 2006:A new chapter in education: unschooling “Controversial"Controversial home-taught approach lets kids take the lead in learning”learning" by Victoria Clayton] (英語)</ref></sub>。
* 一般の学校は子どもが仲間をみつけるのにちょうど良い場所である。学校に通わない子どもは、学校に通う同年代の子どもに比べて、友達を作ったり[[社会技能|ソーシャルスキル]]を磨いたりするのが更に難しくなるだろう<sub><ref name=objectionsObjections /><ref name=Reaction>[http://www.msnbc.msn.com/id/15148804/ msnbc Oct. 31, 2006: Readers share heated opinions on ‘unschooling’ ”Reaction was clearly for - or against - the unconventional learning trend”] (英語)</ref></sub>
* 一般的な学校では大人も子どもも多様な人間がいるだろうが、学校に通わない子どもは異なる文化を持つ人間、社会的・経済的に異なる人間や、異なる世界観に直接触れることはより難しいだろう<sub><ref name=objectionsObjections /></sub>。
* 子どもによっては何も学ぶ気がなく、もし矯正されなければ、教育とは関係のない努力にすべての時間を費やしてしまうことになるだろう<sub><ref>[http://www.homeschoolnewslink.com/homeschool/columnists/mckee/vol7iss2_UnschoolingLeads.shtml The Link “Unschooling"Unschooling Leads to Self-Motivated Learning”Learning"] (英語)</ref></sub>。(これはアンスクーリング主義者が直接否定している状態である。)
* すべての保護者が知的な刺激を与える環境を用意したり、子どもの好奇心を煽るのに必要なスキルと忍耐力を兼ねそろえているわけではない<sub><ref name=Erbe /><ref name=Clayton /></sub>。
* 認可された学校の卒業証書を持っていないことが多いため、アンスクーリングの子どもが大学に入学したり、就職することがより難しいかもしれない<sub><ref name=Clayton /></sub>。
* 自分自身の教育を管理してきた子ども達は、他人からの指示に従う能力を身に着けないかもしれない<sub><ref name=Reactionopinions /></sub>。
 
==団体==
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* [[オルタナティブ教育]]
* [[ホームスクーリング]]
* [[学校]]
* [[脱学校論]]
* [[ジョン・ホルト]]
83 ⟶ 85行目:
* [[特別支援教育]]
* [[インディゴ・チャイルド]]
 
 
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