「信義誠実の原則」の版間の差分

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'''信義誠実の原則'''(しんぎせいじつのげんそく)とは、当該具体的事情のもので、相互に相手方の信頼を裏切らないよう行動すべきであるという[[法原則]]をいう。'''信義則'''(しんぎそく)と略されることが多い。[[民法]]1条2項、[[民事訴訟法]]2条参照
 
== 概説==
本来、私法の領域において発達した法原則であるが、公法の分野においても、その適用は認められている。
信義誠実の原則は、法律行為を解釈するための基準となるほか、具体的な条文がない場合に補充する機能を有する。
 
本来、[[私法]]の領域、特[[契約法]]の契約当事者間について発達した法原則であるが、社会的接触のある者の間の私法関係に、さらには、公法の分野においても、その適用は認められている。
 
明文上は、[[民法]]1条2項に規定されている。[[民事訴訟法]]においても、平成8年成立の現行法において、第2条に訴訟上の信義則についても規定されるようになった。
 
== 派生原則 ==
この原則から派生する代表的な原則として次の4つの原則が挙げられる
 
* [[禁反言の法則]](エストッペルの原則
*:自己の行為に矛盾した態度をとることは許されない。例えば、(1)自ら所有する建物に[[抵当権]]を設定しておきながら、建物の立つ土地の[[賃借権]]を放棄しても、抵当権者に対抗することはできない、(2)債務者が、債務について[[消滅時効]]が完成した後に[[債務の承認]]をした場合は、その後に時効消滅を主張することはできない、というものである。民法398条(抵当権の目的である[[地上権]]等の放棄)参照。
*:自己の行為に矛盾した態度をとることは許されない。
* [[クリーンハンズ]]の原則]]
*:自ら法を尊重するものだけが、法の救済を受けるという原則で、自ら不法に関与した者には[[裁判所]]の救済を与えないという意味である。具体的条文への表れとしては、民法130条([[条件]]成就の妨害)、民法708条([[不法原因給付]])がある
* [[事情変更の原則]](法則
*:契約時の社会的事情や契約の基礎のなった事情に、その後、著しい変化があればり、契約の内容を維持し強制することが不当となった場合それに応じて変更されなければならない。具体的条文への表れとしては、[[借地借家法]]11条(地代等増減請求権)、借地借家法32条(借賃増減請求権)がある
* [[権利失効]]の原則]]
*:権利者が信義に反して権利を長い間行使しないでいると、権利の行使が阻止されるという原則。
*:この原則により、[[消滅時効]]、[[除斥期間]]よりも前に権利が行使できなくなる場合がある。
 
== 訴訟上の信義則 ==
*訴訟状態の不当形成の排除
*:訴訟法上の要件を具備するように故意に事実状態を作出したり、逆に具備しないように故意に事実状態を妨害したりすることは許されない。
*訴訟法上の禁反言(先行行為に矛盾する挙動の禁止)
*:当事者が取ってきた態度を、相手方が信頼して訴訟上の地位を築いた後に、従前とは矛盾する態度をとり、相手方の地位を不当に揺るがすことは許されない。
*訴訟上の権能の失効
*:当事者が訴訟上の権能を長期に行使せず、相手方が行使しないとの正当な期待を有し、それを前提とした行為をとるようになった場合に、訴訟上の権能を行使することはできない。
*訴訟上の権能の濫用の禁止
*:訴えを提起する権利や訴訟手続き中の取効的訴訟行為を、濫用することは許されない。
 
==参考条文==
[[b:民法第1条|民法第1条]] (基本原則)
# [[私権]]は、[[公共の福祉]]に適合しなければならない。
# 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
# [[濫用|権利の濫用]]は、これを許さない。
 
[[b:民事訴訟法第2条|民事訴訟法2条]](裁判所及び当事者の責務)
:裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。
 
==関連項目==