「ピアノ協奏曲第1番 (ブラームス)」の版間の差分

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元々は1854年3月に3楽章構成の『[[ピアノ二重奏|2台のピアノ]]のための[[ソナタ]]』として書き上げられたものが原型である。しかしブラームスは[[クララ・シューマン]]と何度か試奏してピアノという形に不満を抱きはじめ、1854年の7月には[[交響曲]]に書き直そうと考えて[[管弦楽法|オーケストレーション]]に取りかかった。しかしこの作業に行き詰まってしまう。
 
しかし1855年の2月に本人自身が協奏曲にしたらとひらめいたことで<ref>当時クララ・シューマンへ「行き詰まった交響曲を、『恐ろしく重い協奏曲』に直して自分で弾いている夢を見ました。我ながら感動してしまいました」という趣旨の手紙も書いている</ref>現在のスタイルの外形が出来上がった。ただしこの時点では第2楽章は今のものとは別([[スケルツォ]])だった。
 
さらに、[[クララ・シューマン]]や親友の[[ヨーゼフ・ヨアヒム]]の助言を受け、彼らが納得いくまでブラームスは改訂を加えている。クララによれば第1楽章は1856年10月1日に完成、そしてブラームスの私信によればフィナーレは12月、そして新たに書き出した第2楽章は1857年1月に完成している。
 
== 特徴 ==
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また初演当時まだ25歳という若さもあってか、冒険的な要素も多い。例えば伝統的な協奏ソナタの主題提示と異なり、第1楽章の第2主題はピアノにより提示されることや、[[19世紀]]の[[ヴィルトゥオーゾ]]による協奏曲のように、[[オーケストラ]]を独奏楽器の単なる伴奏として扱うのではなく、独奏楽器と効果的に対話させてシンフォニックな融合を目指したことなどが挙げられる。ただしブラームスの努力は本作では完全には実現されず、かなり後の《[[ヴァイオリン協奏曲 (ブラームス)|ヴァイオリン協奏曲]]》や《[[ピアノ協奏曲第2番 (ブラームス)|ピアノ協奏曲 第2番]]》において具現化された。
 
古典的な3楽章構成を取ってはいるものの、全体の長さ、特に第1楽章が協奏曲の一般的な概念から考えてもいささか長大であったり(<ref>指揮者にもよるが、第1楽章は一般的に長いと言われている[[ピョートル・チャイコフスキー|チャイコフスキー]][[ピアノ協奏曲第1番 (チャイコフスキー)|ピアノ協奏曲第1番]]の第1楽章よりも更に長い)。</ref>、当初から「ピアノ助奏つきの交響曲だ」という指摘が多かったように、これだけ同時代の同ジャンルの曲に比べて内容が重くピアノが目立たないというのも異例だった(もっとも、ブラームス自身最初は交響曲として作曲していた時期もあったようであり、この指摘もあながち的外れとはいえない)。また、成熟期の作品に比べるとまだ[[管弦楽法]]が未熟で、とりわけ楽器間のバランスに問題があるなどの欠点を抱えた作品である。しかし先述のようなブラームスの初期作品ならではの情熱的な表現をはじめとする、管弦楽法の未熟度などの欠点を補って余りある魅力に加え、作曲様式においては(クララ・シューマンなどのアドバイスも相俟って)非常に練れた作品であり、時が経つにつれて作品の評価も高まっていった
 
しかし先述のようなブラームスの初期作品ならではの情熱的な表現をはじめとする、管弦楽法の未熟度などの欠点を補って余りある魅力に加え、作曲様式においては(クララ・シューマンなどのアドバイスも相俟って)非常に練れた作品であり、時が経つにつれて作品の評価も高まっていった。現在ではその壮大な[[古典派音楽|古典主義]]的な構想や、見栄えのするピアノの超絶技巧、初期作品ならではの情熱的で気魄に富んだ表現などから、ブラームスの初期の代表作として認知されている。
 
== 楽器法 ==
「ピアノ助奏つきの交響曲」との評価はあるものの、後年の協奏曲2番に比べれば、ピアニストの腕を見せる技巧的なパッセージも少なくないため、レパートリーにしているピアニスト多いが、ブラームス自身がかなり卓越したピアニストであったため、技術的には難しい部類に入る。特に第1楽章の『ブラームスのトリル』と呼ばれる、右手の親指と薬指で[[オクターヴ]]、小指で一つ上の音を続けて演奏する[[トリル]]が有名。この部分は特に薬指と小指を酷使するため、左右の手で交互にオクターヴを弾くピアニストもいる。
 
オーケストラについては、ブラームスの楽器の好み、とりわけ[[ホルン]]や[[ティンパニ]]への興味が早くも現われているが、どちらのパートも演奏が難しいために悪名高い(レパートリーの多い[[ヘルベルト・フォン・カラヤン|カラヤン]]でさえ録音を残していない)。
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*'''第2楽章 Adagio''' [[ニ長調]] 4分の6拍子
*:3部形式。[[弦楽器]]と[[ファゴット]]による、下降音形の主部に対して、中間部はピアノによる強奏がコントラストをなす。曲の最後に短いカデンツァがある。なお、[[ラテン語]]で祈祷文の一節『[[ミサ曲#Benedictus|ベネディクトゥス]]』が引用されており、これはシューマンの死後の平安を祈ったものとも、夫を喪ったクララ・シューマンの悲しみを慰めようとしたものとも伝えられる。
*:なお、ブラームスはクララへの手紙の中でこの楽章を新たに書き起こしたことについて、彼女「あなたの穏やかな肖像画を描きたいと思って書いたと述べている。
*'''第3楽章 ロンド: Allegro non troppo''' ニ短調 2分の2拍子
*:バロック風のピアノによるロンド主題を中心とした[[ロンド形式]]。2つの副主題はロンド主題が派生したものと考えられる。中間部では副主題による[[フーガ|フゲッタ]]が展開される。ロンド主題の三現後、2つのカデンツァがあり、最初のカデンツァでニ長調になり、ロンド主題がテンポを緩めて再現した後、第2カデンツァを経てPiu animatoとなり、華麗に曲を結ぶ。
== 注 ==
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