「グローエンジン」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
編集の要約なし
1行目:
'''グローエンジン'''とは、圧縮と、燃焼室にある[[グロープラグ]]の熱とによって、燃料の着火を行う[[内燃機関]]の一種。'''焼玉エンジン'''、'''焼玉機関'''とも言われる。英語では "Hot bulb engine" と呼ばれる。また、その点火方法の特徴から'''セミ・デーゼル'''と呼称する文献もある。
 
1886年に[[イギリス]]のハーバート・アクロイド・スチュアート(Herbert Akroyd-Stuart 1864-1927)が考案した。主として[[石油]]系燃料を使用する点は他の多くの内燃機関と同じであるが、[[ガソリンエンジン]]のごとき複雑精巧な点火機構を持たないことを特徴とする。
 
== 構造・性質 ==
基本的なレイアウトは、ガソリンエンジン等の一般的な[[レシプロエンジン|レシプロ]]式内燃機関と同じで、吸気→圧縮→点火→排気のサイクルで作動し、[[2ストローク機関]]と[[4ストローク機関]]のいずれも存在する。
 
特徴は点火機構である。始動時、初期のものはヘッド部分の蓄熱部品である鋳造の「焼玉」を外部から[[バーナー]]で加熱することで<ref>焼玉を容易に脱着できる構造とし、焚き火などで焼いて予熱できるようなタイプもあった。低圧縮比・低精度ならではの構造である。</ref>、また改良が進んだ後のものはヘッドに取りつけられ燃焼室内部に露出した[[グロープラグ]]に[[電気]]を通し加熱することで、混合気ないし噴射される燃料に初爆を起こす。以降は焼玉またはプラグが燃料の爆発により熱を維持することで、繰り返しての点火を継続する。起動したのちはプラグへの通電を必要としない。
 
原始的だが、[[石油発動機]]より効率良くガソリンの様な高価な燃料を必要としない。また噴射ポジンやプもディーゼルエンジンのように何らかの手段で点火タイミング調整を図る必要程精巧さないため、構造が単純化できる。さほど高度な部品精度も要求されないため製造も容易で、機械知識に乏しい者でも取り扱いを習得しやすいことから、世界各国で小型の簡易なエンジンとして普及した。
 
しかしこの機関は、低圧縮比と自然着火方式ゆえに燃費が悪く、高回転・高出力を得にくかった。また出力の低さの割に容積・重量が大きいという弱点もあった。
 
このため、軽量な小型[[ガソリンエンジン]]や経済性に優れた高速小型[[ディーゼルエンジン]]の発達に伴って、1950年代以降、産業用や民生用の一般的動力としては世界的に廃れた。現在は、模型用としてのみ多用されている
 
現在は、類似した構造のエンジンが模型用としてのみ多用されている(但し、模型用はキャブレターを持ち、噴射ポンプを用いない)。
舶用や産業用や民生用の一般的動力に使用されていたものは、気化器を使用せず、2ストロークで燃焼室内に燃料を噴射する、ディーゼルエンジンに近い作動原理が一般的であった。燃料噴射装置はディーゼルエンジンほどの高い精度を必要とせず、簡易な構造で済んだ。模型用のものは、気化器によりアルコール系燃料と空気との混合気を吸入する、ガソリンエンジンに近い作動原理となっている。
 
舶用や産業用や民生用の一般的動力に使用されていたものは、気化器を使用せず、2ストロークで燃焼室内に燃料を噴射する、ディーゼルエンジンに近い作動原理が一般的であった。燃料噴射装置はディーゼルエンジンほどの高い精度を必要とせず、簡易な構造で済んだ。模型用のものは、気化器によりアルコール系燃料と空気との混合気を吸入する点火は電熱を用いたグロープラグが用いられ点火時期は殆ど自然に決定され(調整不能である)ガソリンエンジンに近いとディーゼルエンジンの折衷的な作動原理となっている。
 
== 日本でのグローエンジン(焼玉エンジン) ==
H.A.スチュアートのグローエンジンは、日本にも19世紀末期に移入されたが、構造の簡易さから、ほどなく20世紀に入ると日本でも国産化された。高い工作精度を必要とせず、小規模な鉄工所でも[[蒸気機関]]を扱える程度の技術力があれば製造できるため、多くの中小メーカーが(スチュアートの特許有効期間中からこれを公然と侵害して)製造するようになった。
 
これらは、ボイラーなどの大がかりな設備を要する蒸気機関を用いるまでに至らない、小規模な定置動力や小型船舶等の需要に好適で、高度な取り扱い知識技術も要さなかったため、第二次世界大戦以前の日本では広く普及していた。
 
=== 焼玉船(ポンポン船) ===