「数理経済学」の版間の差分

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一方で新古典派[[マクロ経済学]]が、[[ケインジアン]]に対抗しつつ[[新しい古典派]]の研究として結実する過程において、[[経済動学]]を扱うモデリングを必要とすることが次第に明らかになってきた。すなわち動学的最適化の手法がマクロ経済学にとって必要不可欠となったわけである。現在の経済動学における数理経済学は、[[差分方程式]]を用いつつ離散型[[力学系]]のモデルを援用した動学的計画法における多期間最適化を議論することになる。例としては[[最適成長モデル]]や[[世代重複モデル]]などの議論があるが、世代間の個人消費や異時点間でどのように資源を配分して個人が消費を決定するかなどを想起すると分かりやすい。有名な[[デイヴィッド・リカード|リカード]]の[[リカードの等価定理|等価定理]]や等価定理を拡張した[[ロバート・バロー]]の中立命題は動学的なモデリングによってもたらされたインプリケーションの好例である。また、[[確率過程]]を導入した合理的期待や条件付行動などその応用は、[[ランダムウォーク]]解釈や[[マンデルフレミングモデル]]における[[財政政策]]および[[金融政策]]の有効性・無効性など、その応用や拡張は現実の経済にも影響を及ぼしている。また、従来は忌避される傾向にあった[[計量経済学]]といった分野との並立も、その可能性を広げている。特に、新しい古典派モデルにおける確率過程の援用やカリブレーションと呼ばれるモデルから予想される予測値と実際のデータとの比較によって、こうした議論が良く陶冶されている。
 
また現代の数理経済学において[[ゲーム理論]]の占める位置は非常に大きいといえる。その影響の大きさはゲーム理論が経済学の方法論を革新したとしばしば評価されることもあるほどである。<ref>例えば神取道宏 1994「ゲーム理論による経済学の静かな革命」岩井克人・伊藤元重編『現代の経済理論』東京大学出版会を参照のこと</ref>ところでフォン・ノイマンと[[オスカー・モルゲンシュテルン]]により確立された当初から経済学への応用が念頭に置かれていたゲーム理論<ref>ゲーム理論はフォン・ノイマンとモルゲンシュテルンの共著をもって嚆矢とするが、彼らの著作のタイトルは''Theory of Games and Economic Behavior'' つまり『ゲームの理論と'''経済行動'''』である。</ref> ではあるが、ゲーム理論を用いた分析は[[コア (ゲーム理論)|コア]]など協力ゲーム理論など一部の応用を除き長らく低調であった。しかし1980年代になると経済学における非協力ゲーム理論の有用性が広く認められるようになり、本格的なゲーム理論を利用した研究がスタートした。現在では経済学における[[均衡]]概念として[[ナッシュ均衡]]とその精緻化が広く受け入れられ、いわゆるワルラス的な均衡概念に取って代わりつつある。ここで両者の違いについて少し触れておきたい。市場均衡を想起すれば明らかだが、ワルラス均衡では個人が合理的な行動をとっていることに加え[[需要]]量と[[供給]]量の一致が必要とされる。対してナッシュ均衡はゲームの各プレイヤーが相手の戦略に対して最適反応を取り合っている戦略の組として定義されているため、個人が合理的であることのみを必要としている。すなわちナッシュ均衡はワルラス均衡よりも広い均衡概念である。<ref>明らかにワルラス均衡であるならばナッシュ均衡である。またこちらも明白なことだが、その逆は成り立たない</ref>
 
==経済動学==