「サイエンス・フィクション」の版間の差分

 
=== SFの浸透と拡散 ===
[[1970年代]]には[[日本万国博覧会]]が[[大阪]]で開かれたこともあって、SFに対する世間の関心一挙に高まった。更に、[[小松左京]]の『[[日本沈没]]』が[[ベストセラー]]になり、それまでのSFアニメに比べて本格的な設定の『[[宇宙戦艦ヤマト]]』がTV放映される。1970年代後半には、映画『[[スター・ウォーズ]]』の日本公開などもあり、日本においてSFが世間から注目を集めた。一方でSF作家が他分野へ進出するようになり、筒井康隆が「SFの浸透と拡散」と表現した日本SFの変質の始まりでもあった<ref>『SFの時代』1996年 p.308-316</ref>
 
半村良の[[伝奇SF]]や[[平井和正]]の「[[ウルフガイ]]・シリーズ」は、[[菊地秀行]]や[[夢枕獏]]や[[高千穂遙]]の諸作品を経て、[[ライトノベル]]へと連なる流れの源流の一つとなった。SF雑誌も、『[[奇想天外 (SF雑誌)|奇想天外]]』、『[[SFアドベンチャー]]』、『[[SF宝石]]』などが相次いで創刊され、それぞれ新人賞を設けるなどして新人の発掘にあたったため、『SFマガジン』とあわせて、[[堀晃]]、[[横田順彌]]、[[田中光二]]、[[山田正紀]]、[[かんべむさし]]、[[野阿梓]]、[[神林長平]]、[[大原まり子]]、[[火浦功]]、[[草上仁]]、[[新井素子]]、[[夢枕獏]]、[[田中芳樹]]、[[菅浩江]]などが続々とデビューした。
 
[[1980年代]]になると、引き続きビジュアル面でのSFは繁栄を示し、『[[風の谷のナウシカ]]』や『[[うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー]]』が公開され、[[サンライズ (アニメ制作会社)|サンライズ]]が『[[機動戦士ガンダム]]』を経て『[[装甲騎兵ボトムズ]]』というハードSFを打ち立てる一方、SFイラスト集団の[[スタジオぬえ]]も『[[超時空要塞マクロス]]』でSFアニメに参加する。日本SF大会'''DAICON III'''、'''DAICON IV'''での優れたオープニングアニメでファンの注目を集めた集団が[[ガイナックス]]を設立し、商業アニメに進出する。[[日本SF作家クラブ]]はメディアにとらわれない[[日本SF大賞]]を設けた。
 
==== SFマインド ====
この1970年代の後半から80年代にかけては、日本のSFファンの間において「'''[[SFマインド]]'''」という概念が多用された時期でもある。
 
この概念はやや抽象的なもので人によって解釈が少しずつ異なり、SFファンが10人いれば10通りの解釈が出てくるほどのものであるが、概ね共通しているのは、正確な科学理論や物理法則に基づいたストーリーや映像描写が徹底される事を歓迎し、ドラマ上の演出や撮影技術的な都合などによる[[科学理論]]や[[物理法則]]の無視、あるいは勘違いな描写<ref>これらの例としては、宇宙空間を泳ぐ、必要な装備を持たないロボットが大気圏に突入して無事に着陸する、など。</ref>がある作品を徹底的に嫌忌・否定する姿勢である。
 
これはそれまではかなり曖昧で、それまでは現在でいう異世界ファンタジーなどすら含む事も見られたSFというジャンルの固定化・細分化には役に立った一方で、多くのSF作品が「SFマインドにあふれているか否か」という事で議論の俎上に上げられ、SFファンの間で大まじめに議論がなされ、「SFマインドが足りない」という抽象的な理由で作品や作者が誹謗[[中傷]]を受けるという事態も少なからず発生した。また、SFマインドという言葉自体も抽象的なものであり、やがては概念自体が一人歩きする様になり、この概念自体を巡っての肯定否定の議論も多く発生した。また、SF作品でデビューした作家の中にも、この様な議論に巻き込まれる事を嫌って、徐々にSFから距離を置いていった者が見られる。
 
だが、SFマインド肯定派にとっては皮肉なことに、その代表格の1人であった高千穂遥が「SFであること」を[[アニメ雑誌]][[月刊OUT]]の誌上<ref>『ガンダム雑記』月刊OUT 1980年4月号</ref>などで徹底的に否定・批難した『[[機動戦士ガンダム]]』が日本アニメ史に残る商業的な大成功を収め、アニメ産業には[[リアルロボット]]アニメというSFマインド肯定派にとってはSFと似て非なるジャンルが確立されてゆく事になる。その一方で、SFマインド肯定派の者たちが薦める「SFマインドにあふれた作品」には『ガンダム』ほどの作品が出なかった上、SF雑誌の読者欄などでの激しい議論ばかりが目立った事で、やがてはSF自体が一般大衆にとって敷居の高いものになってしまい、後にSFジャンル全体が停滞、後述の転換期に突入してゆく一因にもなった。
 
なお、この当時の議論を知らぬ現在の若いSFファンの間には、SFマインドという言葉を知らない者も珍しくはない。
 
=== SFの転換期 ===
匿名利用者