「緑色蛍光タンパク質」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
外部リンク追加(1件)
lk
1行目:
'''緑色蛍光タンパク質'''(りょくしょくけいこうタンパクしつ、Green Fluorescent Protein; GFP)は[[オワンクラゲ]](''Aequorea victoria'')がもつ[[分子量]]約27 k[[ドルトン (単位)|Da]]の[[蛍光]][[タンパク質]]。1960年代に[[下村脩]]によって[[イクオリン]]とともに発見・分離精製された<ref>{{cite journal | author=Shimomura O; JOHNSON FH;SAIGA Y. | title=Extraction, purification and properties of aequorin, a bioluminescent protein from the luminous hydromedusan, Aequorea | journal=J Cell Comp Physiol | pages=223-39 | volume=59 | year=1962| id=PMID 13911999}}</ref>。下村はこの発見で、[[2008年]]に[[ノーベル賞|ノーベル化学賞]]を受賞した。
[[Image:GFP 1EMA.jpg|right|250px|thumb|緑色蛍光タンパク質の構造(結晶のリボン・ダイアグラム)]]
オワンクラゲの生体内では[[イクオリン]]と複合体を形成している。細胞内カルシウムを感知して発光するイクオリンは、単体では最大蛍光波長460 nmの青色であるが、オワンクラゲの発色細胞内では、GFPがイクオリンから[[励起]]エネルギーを受け、最大蛍光波長508 nmの緑色の[[蛍光]]を発する([[蛍光共鳴エネルギー移動|フォルスター型エネルギー転移]])。GFPの緑色蛍光の発色に関しては、下村の一連の研究により提唱された発色団の分子構造モデルをもとに、10数年を経て1990年代になって発色団の分子構造が確認された。GFP分子内での発色団の形成には自己脱水結合のみで充分であり、[[酵素]]など他分子の助けを必要としない。
 
GFPは励起光を当てると単体でも[[発光]]する。下村によるその発見から30余年を経た1990年代、WardらのグループがGFP遺伝子の同定・[[クローニング]]に成功<ref>{{cite journal | author= Prasher DC; Eckenrode VK; Ward WW; Prendergast FG; Cormier MJ | title=Primary structure of the Aequorea victoria green-fluorescent protein | journal=Gene | pages=229-33 | volume=111| issue=2 | year=1992| id=PMID 1347277}}</ref>、[[マーティン・チャルフィー|Chalfieチャルフィー]]、[[ロジャー・Y・チエン|Tsienチエン]]らのグループが[[トランスジーン]]として異種細胞へのGFP導入・発現に成功した(Chalfie (チャルフィーおよび Tsien チエンもまた、下村と同時にノーベル化学賞を受賞している)。GFPの発色は[[基質]]がいらを必要としないことや単量体で機能するなどの特徴から、また、発色団形成に酵素反応が必要でないこと、異種細胞への発現方法が確立したことなどから[[1990年代]]に[[レポーター遺伝子]]として広く普及した。
 
野生型[[タンパク質]]をもとに[[遺伝子工学]]によって、蛍光強度や波長特性、至適温度、発色団形成速度など様々に異なる改変型GFPが作られている。GFPおよび、改変型GFPは、[[細胞生物学]]・[[発生生物学]]・神経細胞生物学などをはじめとして最も広く使われる[[レポーター遺伝子]]となっている。
 
GFPは[[リアルタイム]]、かつ、その場で([[in situ]]:細胞破壊の必要がない)検出でき、他のタンパク質との[[融合タンパク質]]としても機能を発揮することから、特に細胞内の[[シグナル伝達]]などに関与するタンパク質の細胞内局在を明らかにするツールとして、なくてはならぬものとなっている。ただし実験対象のタンパク質の機能に影響を与えるおそれが皆無ではないので、結果の解釈は慎重にすべきである(現在これに代わる低分子の試薬も開発されつつある)。