「海と毒薬」の版間の差分

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一方で遠藤の問題意識からこの作品を解放し、より普遍的次元で捉えるべきとする意見もある。即ち遠藤の日本人/クリスチャンの二項対立を退けながらも、平凡な人間とは薄弱な倫理的規範よりも集団心理(空気)に流されて残虐な行為をしてしまうものだということを鮮やかに描き出したという点で作品は評価されるべきという意見である。
 
「海と毒薬」発表後、遠藤は、この作品の第2部を執筆することを随所で示唆していたが、結局それは果たされなかった。小説発表後、事件の関係者の中には、遠藤が作品によって彼らの行為を断罪しようとしたのだと考え、そのことに対して遠藤に抗議の手紙を送った者もいた。こうした抗議に対して、遠藤は大変なショックを受け、その心中を実際に随筆等で吐露している。第2部を断念したのは、こうした抗議とは無関係ではないだろうと考えられている。<ref>「海と毒薬」新潮文庫版・[[佐伯彰一]]による「解説」 [[1971年]][[10月]]</ref>作品中に登場する勝呂医師は同氏の作品「[[悲しみの歌]]」において新宿の開業医として再登場している。
 
また、[[右翼]]・保守系の人間は、そもそも日本による戦争犯罪を取り上げること自体が国賊的行為であるとして、遠藤の作品を厳しく批判した。