「芳香族ポリエーテルケトン」の版間の差分

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===求核置換反応法===
PEKは、[[フッ素]]と[[水酸基]]を置換体として各端に結合させた[[ベンゾフェノン]]を[[求核置換反応]]で結合させて製造する。
: n HO−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−F → [−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−]<sub>n</sub> + n HF
 
PEEKは、[[ヒドロキノン]]と、フッ素を置換体として両端に結合させたベンゾフェノンを求核置換反応で結合させて製造する。[[触媒]]には[[炭酸カリウム]]などを使用する。
: n HO−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−OH + n F−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−F → [−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−]<sub>n</sub> + 2n HF
フッ素は置換体としては高価なため、[[塩素]]などの利用も研究されている。
 
===求電子置換反応法===
PEKは、片方にケトン基を介して[[求電子剤]]として塩素を結合させた、すなわち[[カルボン酸|アシル基]] −C(=O)Cl としたベンゾフェノンを[[フリーデル・クラフツ反応]]([[親電子置換反応|求電子置換反応]]の一種)で結合させる。触媒には[[塩化アルミニウム]]などを使用する。
: n C<sub>6</sub>H<sub>5</sub>−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−Cl → [−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−]<sub>n</sub> + n HCl
 
PEKKは、[[ベンゾフェノン]]と、両端に求電子剤として塩素を結合させたケトン基を持つベンゼン環を、塩化アルミニウムなどを触媒として、フリーデル・クラフツ反応で結合させて製造する。
: n Cl−C(=O)−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−Cl + n C<sub>6</sub>H<sub>5</sub>−C(=O)−C<sub>6</sub>H<sub>5</sub> → [−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−]<sub>n</sub> + 2n HCl
 
この製法では[[分枝 (化学)|分岐]]構造や異種結合が起こりやすく、反応のコントロールが難しい。
31行目:
===ルイス酸/強酸触媒下、求核性芳香族化合物とチオカルボン酸誘導体との反応===
PEEKの製造法。工業化はされていない。
: n C<sub>6</sub>H<sub>5</sub>−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−O−C<sub>6</sub>H<sub>5</sub> + n C<sub>2</sub>H<sub>5</sub>−S−C(=O)−Cl → [−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−]<sub>n</sub> + n C<sub>2</sub>H<sub>5</sub>SH + n HCl
 
[[タイコインターナショナル]]が特許を所有している。出願はレイケム (Raychem Co.) だが、1999年の同社買収によって所有権が移転した。
37行目:
===フルオロアルカンスルホン酸、あるいは五酸化二リン/メタンスルホン酸存在下での反応===
PEEKおよびPEKKの製造法。工業化はされていない。
: n C<sub>6</sub>H<sub>5</sub>−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−OH → [−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−]<sub>n</sub> + n HCl
: n C<sub>6</sub>H<sub>5</sub>−O−C<sub>6</sub>H<sub>5</sub> + HO−C(=O)−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−OH → [−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−O−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−C<sub>6</sub>H<sub>4</sub>−C(=O)−]<sub>n</sub> + 2n H<sub>2</sub>O
[[インペリアル・ケミカル・インダストリーズ]](ICI)が特許を所有。
 
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==特徴==
* 熱可塑性樹脂としては非常に高い[[耐熱性]]を有する。非強化状態でPEKの[[荷重たわみ温度]]は約186℃、PEEKは約140℃。[[ガラス繊維]]などフィラーによる強化グレードでは300℃を超える。
* 耐疲労性に優れる。PEEKは耐磨耗性や寸法安定性も良好。
* 耐薬品性に優れる。
* 改質しない状態で[[アメリカ保険業者安全試験所|UL94]]V-0の[[耐燃性|難燃性]]を有する。
* 絶縁性や耐放射線性に優れる。
* PEEKは加工性に優れ、通常の射出成型機での加工や[[フィルム]]化・[[不織布]]化も可能。
* 非常に高価である。
 
==改質==
; フィラー強化
: ガラス繊維や[[カーボンファイバー炭素繊維]]などを充填し、機械的強度とともに耐熱性を高める。高耐熱用途ではガラス繊維30%強化グレードが多用されている。
; PEEK-HT
: ICI子会社のVictrex plcが開発した耐熱性向上グレード。通常のPEEK比[[融点]]が約34℃、[[ガラス転移点]]が約14℃それぞれ上昇する。高温環境下での機械的特性保持力に優れ、また耐磨耗性はPEEKの3倍程度にまで向上している。
; 耐衝撃性改良
: Victrex plcが開発したグレード。[[氷点]]下から100℃を越える使用環境にて通常のPEEK比2倍以上の耐衝撃性を有する。[[ポリマーアロイ]]と推測されるが、詳細は明らかにされていない。
 
==用途==
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==参考文献==
* 井上俊英他 著 『エンジニアリングプラスチック』 高分子学会編、共立出版、2004年。ISBN 4-320-04370-7
* 大井秀三郎・広田愃 著『プラスチック活用ノート』 伊保内賢編、工業調査会、1998年。ISBN 4-7693-4123-7
 
==関連項目==
* [[高分子]]
 
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