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ヒトの本能の項はen:Instinct 08:20, 24 November 2008を参考にした
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'''本能'''(ほんのう)とは、[[動物]]([[人間]]を含む)が生まれつき持っていると想定されている、ある行動へと駆り立てる'''性質'''のことを指す。
 
== 定義 ==
日常的には[[母性本能]]、[[闘争本能]]などのように性質を現す語を伴い、○○本能という形式で使うことも多い。あるいは生得的であることを本能的という表現もある。
本能という用語は歴史的に非常に多くの意味で用いられてきてた。現在でもしばしば全く異なる意味で用いられる。従って本能という語が使われた場合、それがどのような意味で用いられているのかを確認する必要がある。[[動物行動学者]][[パトリック・ベイトソン]]は代表的な意味として次の九つをあげた<ref name=bateson>http://www.science.org.au/sats2007/bateson.htm Cognition and instinct
by Professor Sir Patrick Bateson</ref>。
 
#生まれたとき、あるいは発達の特定の段階で存在する性質。
ただし、それらがどのような形で、どこに存在するものであるかは定かではない。むしろ、現在では本能が存在するかのように論ずる場面は、これに関わる専門分野([[動物行動学]]や[[心理学]]など)以外のものである場合が多数を占める。
#学習なしでも存在する性質。おそらくもっとも一般的な用法。
たとえば「戦争がなくならないのは人間に闘争本能があるためだ」と発言するなど、ある事象に対する[[説明]]を'''放棄'''し、言い訳的に理由づけを行う場合などが代表的である。
#遺伝的である性質。高い確率で世代を超えてみられる性質。
#[[進化]]の過程で形成された性質。
#役に立つようになる前にすでに発達している性質。
#種、性、年齢などを同じくするグループに共通する性質。
#動物の行動の一部。例えば狩猟、体を綺麗にするなど。
#専門化された神経構造を持つ性質。現代[[神経科学]]、認知科学ではこの意味で用いられる。例えば顔を認識する[[心のモジュール性|モジュール]]、感情、表情など。
#発生的に強靱で、経験からの影響を受けない性質。[[発生生物学]]で用いられる。
 
[[精神分析]]では本能を性や[[攻撃行動]]に関連する[[情動]]として説明する。時にはエロスや[[デストルドー]]と呼ばれた。
[[動物行動学]]、[[心理学]]などの分野では、本能が説明概念として使われた時代が過去にあったが、現在では実際の行動に対して'''[[本能行動]]'''という表現を適用するだけである。
== 概要 ==
通俗的には[[母性本能]]、[[闘争本能]]などのように性質を現す語を伴い○○本能という形式で使うことも多い。生得的、先天的と言い換えられることもある。またたとえば「戦争がなくならないのは人間に闘争本能があるためだ」と発言するなど、ある事象に対する[[説明]]を'''放棄'''し、言い訳的に理由づけを行う場合などが代表的であに用いられことも多い
 
古典的[[動物行動学]]の他、[[心理学]]、[[神経行動学]]、[[神経生理学]]などの分野では、本能が説明概念として使われた時代が過去にあったが、現在では実際の行動に対して'''[[本能行動]]'''という表現をだけ。このばあい対概念は[[学習行動]]である。
 
しばしば行動は「本能的なもの」と「非本能的なもの」というように二種類に分けて論じられる。また経験は行動の獲得に、[[遺伝子]]は本能に影響を与えると言及される。しかし例えば[[ハキリアリ]]は分業化が非常に進んでいるが、分業は与えられた食物によって決まる。同じ[[遺伝子型]]が全く異なる行動の[[表現型]]を生み出す。また望むだけ食事をした母ラットの子は体が大きくなる。少ない量の食事を与えられた母ラットの子は体が小さい。後者の子ラットは豊富な食事を与えられれば食べ続け肥満となる。しかし前者の子はそうしない。子ラットの行動(本能)は母胎の状態の影響を受ける。[[カッコウ]]のオスは幼鳥の時代に遠くで鳴く同種のオスの鳴き声を聞いて求愛のさえずりを学習する。しかし他種のオスのさえずりを学習することはない。このように行動は発達過程で遺伝子、母胎の状況、環境と経験など様々な要因の影響を受け形作られる。したがって、ベイトソンの視点では、行動を学習と本能という二つに分ける事は非現実的であり、そのような視点は行動の理解の役に立たない<ref name=bateson />。学習か生まれつきかで区別しない立場は現在の動物行動学や[[進化生物学]]では標準的である。
 
== ヒトの本能 ==
人間に本能があるかどうかはながらく議論の対象であった。しかし前述の通り人間に本能があるかどうかは「本能」の定義次第である。一般的に人間に本能行動はほとんど無いかわずかであると見なされている。また[[社会学]]、[[哲学]]、心理学の一部では本能を「ある種の全ての個体に見られる複雑な行動パターンで、生まれつき持っており、変更がきかない」と定義する<ref> Sociology: An Introduction - Robertson, Ian; Worth Publishers, 1989</ref>。この定義の元では性欲や餓えも変更がきくために、本能とは言えないと主張される。極端な[[行動主義]]や[[タブラ・ラサ|環境決定論]]においてはあらゆる種類の「本能」が否定され、行動はすべて学習の結果として説明される。
 
一方で[[認知科学]]、人間生物学(特に[[社会生物学]]や[[人間行動生態学]]、[[行動遺伝学]])などの分野では人間に本能を認める(ただし本能という語の使用は通常は避けられる)。本能の代わりに先天的、生得的、遺伝的基盤がある、などといいかえられることも多いが、これらの用語もしばしば意味が曖昧である。これらの分野で用いられる「本能」は3,4,8の意味のいずれかであることが多い。これらの分野で本能と見なされることが多い性質には次のような物がある:[[言語]]の獲得、[[利他主義]]や[[嫌悪]]などの感情、[[ウェスターマーク効果]]、[[学習バイアス]](例えば甘い物はすみやかに好むようになるが、苦みや渋みは好みとなるのに時間がかかる)など。また[[類人猿]]と人間では[[公正]]さの感覚も本能的であると考えられている。
 
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==出典==
* {{reflist}}
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*[[ボールドウィン効果]]
*[[生得論]]
*[[生まれと育ち]]
 
[[Category{{DEFAULTSORT:心|ほんのう]]}}
[[Category:心理学|ほんのう]]
[[Category:心理学]]
[[Category:社会学]]
[[Category:人間行動学]]
[[Category:動物行動学]]
 
[[bg:Инстинкт]]